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「金融財政政策雑感」no.26

 これまで、「金融財政政策雑感」というタイトルをつけなから、ごく一部を除いて、短期マクロ財政政策の問題については、分析してこなかったように思う(「日本の経済成長率」「成長と分配」などの連載論考についてはは、マクロ財政政策の分析を行っている。それらはいずれも中長期的な問題を取り扱っている。参照)。それは、時間軸が同じでも、マクロ財政政策の問題は、実は、多面的であり複雑な問題であり、然るにクリアカットに理論的に分析するには、リアリティのある単純化を仮定し、論点を絞り込む必要性があるからである。特に今日重要性が増している問題は赤字国債の激増という金融関連性のある問題であろう。やむをえなかった問題もあるであろが、私見では、2020年以降は、基礎的収支目標を中心とした財政再建計画は破綻したと言ってさしつかえない。この背景には、財政政策をめぐる問題があらゆる新しい経済政策に結び付けられて展開されていることがあり(財源だから止むを得ないという言い訳もあるが、民間活力など多様であったはずである)、対症療法的であり、本質がどこにあるのか定かではない、ことがある。生産性上昇の停滞という問題が日本経済の(低)成長の淵源にあるとするならば、機動的短期財政政策の有効性もこの点から分析されなければならない。ディープテックによる資本効率の改善と雇用流動性の低さの克服等の改革の重要性がよく指摘される。ともかく、財政政策については、2020年から23年中断を経て、それ以前と今日では「平衡断絶状態」にあると言っても過言ではない。総需要政策としての財政政策だけでは、時代の要請に応えられない。筆者も、数回の連載で、基礎的な財政政策の議論から始めて、今日的問題の処方箋としての財政政策の有効性の本質的分析に挑戦することにしたい。その第1回目。

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