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読書感想文

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2022年5月の記事一覧

読書感想 芥川龍之介 点鬼簿

芥川龍之介晩期の自叙伝的小説です。
晩年、相当神経を病んでいるなか書かれたようですね。

 「点鬼簿」とは、死者の姓名を書き記した帳面のことをいうようです。
この作品には、芥川龍之介の実母、実父、姉のことが記されています。

断片的な記憶とその時に感じたことがありのまま書かれている印象です。
子供の頃の記憶で、前後のことは全然覚えていないのに、何故かその場面だけ妙にはっきり覚えていることってありま

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読書感想 菊池寛 恩讐の彼方に

読書感想 菊池寛 恩讐の彼方に

菊池寛の代表作ですね。

仕えていた主人の妾と密通していた主人公が、主人ともめた末に斬り殺してしまいます。
主人公は妾とともに逃亡し、生活のため、悪事を働くようになります。
二人は昼間は峠の茶屋を営むかたわら、旅人を殺して金品を奪って生活します。

主人公はある日、若い夫婦を殺したことをきっかけに、女(主人の妾)との荒んだ生活に激しい嫌悪感を抱きます。

主人公は女のもとから逃げ出し、
出家し、罪

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読書感想 君たちはどう生きるか

読書感想 君たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」。
この作品は戦前の1937年に刊行されたものです。
数年前に漫画化され、話題になりましたね。
わたしは小説と漫画を両方とも読みました。
どちらも賛否両論あるようですが、わたしは漫画のほうがダイレクトに心に響きましたね。

なんていうか、少年漫画のような
友情!!勇気!!仲間!!
みたいなことが、男子中学生コペルくんとその叔父さんの交換日記を通して色濃く描かれています。

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読書感想 赤毛のアン

読書感想 赤毛のアン

KindleUnlimitedで「赤毛のアン」を読みました。
もう、涙なしには読めないですわ。
子供の頃に読んだときはなんとも思わなかったんですよ。でも大人になってから読んでみたら、
なんて素晴らしい物語なのだろう……!!
と感動しました。

赤毛のアンは出版社によって翻訳者が異なります。
今回は「花子とアン」で有名な村岡花子さんではなくて、掛川恭子さんという方が翻訳されたものを読みました。
比較

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読書感想 梶井基次郎 Kの昇天

読書感想 梶井基次郎 Kの昇天

不思議な、神秘的なお話です。
月明かりで出来る自分の影をずっと見ていると、だんだん影に自分の姿が現れてきて、しだいに影が意思をもって動くようになり、
しまいには自分自身の意識が遠のいて、月に昇天してしまう、とKは「私」に言うのです。
Kは満月の晩、海で溺死します。
それは自殺なのか、過失なのか…誰にもわかりませんが、「私」はKの魂は月に昇天したのだと思うのです。

ある程度市街地に住んでいると、月

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GWに読んだ本②

GWに読んだ本②

そういえば私はあまり女性作家の小説は読まないかもしれません。
それは戦前に関しては女性作家が男性作家に比べて少ないせいかもしれないですが。

湊かなえさんはイヤミスの女王と称されているだけあって、ほんっと〜にいやぁ~な読後感を与えるミステリー小説を書く作家さんです。
確かに、読んでいて結構辛い場面があります。女性ならば誰でも備わっている、特有の陰湿さをとても上手に演出している気がします。
でもねー

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GWに読んだ本

GWに読んだ本

GWは皆さんいかがお過ごしでしょうか?
私は色々とやることがあって、結局どこにも行きませんでしたね。

すきま時間にちょこちょこ本を読みました。
KindleUnlimitedで読み放題になっていたものをいくつか読みました。

殺戮に至る病(我孫子武丸)
礼賛(木嶋佳苗)
俺か、俺以外か。(ローランド)
あ、あと図書館で湊かなえさんの
「Nのために」を見つけたので再読しました。
(この作品、はじめ

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読書感想 谷崎潤一郎 蓼食う虫

読書感想 谷崎潤一郎 蓼食う虫

谷崎潤一郎の作品のなかで一番すきかもしれないです。
流れるように美しい文章です。
瞳に映るもの、心で感じたことをこんな風に流麗な文章で的確に表現されたら、そりぁーあ平伏するしかないですよ。
「あっぱれです!!」と。(?)

 
さて、こちらの作品ですが、
夜の営みがなくなった夫婦のお話です。
夫が妻に女性としての魅力を感じなくなってしまいます。
やがて夫は妻が他の男性のところに通う事を黙認するよう

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