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読書感想 君たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」。
この作品は戦前の1937年に刊行されたものです。
数年前に漫画化され、話題になりましたね。
わたしは小説と漫画を両方とも読みました。
どちらも賛否両論あるようですが、わたしは漫画のほうがダイレクトに心に響きましたね。


なんていうか、少年漫画のような
友情!!勇気!!仲間!!
みたいなことが、男子中学生コペルくんとその叔父さんの交換日記を通して色濃く描かれています。

漫画のなかで印象に残っているシーンがあります。
クラスメイトに対して陰湿ないじめをする山口くんが許せない熱血漢少年北見くん。
ある日、北見くんが「もう許せん!弱いものいじめをしてひきょうだぞ!」と山口くんに殴りかかり喧嘩になります。
周りの生徒も「北見くんに加勢しよう!」みたいな感じで、みんなの敵意が全て山口くんに向かいます。
その時、何故かいじめられっ子当事者の浦川くんが
「やめて!」というのです。
続けて浦川くんは「頼むからもう許してやっておくれよ」と言います。

浦川くんは、大きな怪物のようなものがその手で山口くんを叩きつぶそうとするのが見えて(感じて?)「やめてくれ」と叫ぶのです。
多分、原作にはこんな描写(大きな怪物)はなかったと思います。

この怪物はなんだろう?と思ったんですね。
(そこ?笑)
誰かを「こらしめてやろう!!」って思うときって、凄まじい負のエネルギーがその人から相手に向かって放出されると思うんですよ。ましてや相手を殴ろうとするときなんて特に。

そのエネルギーの塊が、心優しい浦川くんの目には怪物として見えて(感じて)しまったのかな、と思いました。

これを描写出来るってすごいなと思ったんですね。漫画家さんの感性ですよねえ。

そういう負のオーラやエネルギーが、苦手な人っていると思うんです。
そういう人は、本心を押し殺して、我慢してでもその場の平和を守ろうとするんですよね。
負のエネルギーにさらされるより、自分が我慢するほうが楽だったりするのかもしれません。
反面、まわりにどう思われようと、自分の意見をはっきりと発言する人もいます。
自分の正義を貫きたい人もいます。
どちらが正しいとか間違っているとかの問題じゃなくて、その方の特性だと思います。

自分の特性は一生涯付き合っていかなきゃならないマブダチなので、
上手く飼いならしていくのが大切みたいですね……。

本書は、情報過多にあり価値観の多様化した現代では「物足りない、薄っぺらい、当たり前のことしか書かれていない」という意見があるのも仕方がないのかなと思います。
ですが、この当たり前のことを当たり前に出来る大人が一体どれだけいるのでしょうか。

匿名となったとたん、人間性を疑うような言葉を平気で相手に浴びせる人間のいかに多いことか。

心で思うことを言葉にすることと、
それを実際に行動に移すことは天と地ほど差がある気がします。
口だけで行動が全く伴っていない大人はたくさんいます。
北見くんのような勇敢な行動を取れる大人が一体どれだけいるのでしょうか。

少年漫画の主人公みたいに、勇気あふれる行動ありきの人間になりたいものです。






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