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gaku-wata
2020年6月8日 00:40
「カキーーン!!」「カキーーン!!」「カキーーン!!」バットくんは初回から連打を浴び、4失点を喫した。そのウラ、相手チームのピッチャーがマウンドに立つ。彼はこの決勝戦まで1失点も許すことなく、ここまでの4試合を勝ち上がってきている。「ふうっ。今目の前の一球一球に集中しよう」そう心に誓ってピッチャーはワインドアップポジションに入る。このピッチャー、小学生のころは結果が出るとすぐに
2020年5月29日 01:45
バットくん中学3年生の最後の大会。今年もチームは順調に勝ち上がり、全国大会出場まであと1勝のところまできた。今日勝てば、昨年のリベンジが果たせるというわけだ。しかし、神様の様子はいつもと違う。なんとなく冷淡な視線で、試合5分前のグラウンドの様子を眺めている。前の日に、野球の神様の分身たちとの話し合いが行われていた。「ここまで勝ち上がってきている明日のチームのピッチャーはええピッ
2020年5月22日 23:31
バットくんの第2打席目が回ってきた。「ここまで俺以外に対しては9割ストレートしか投げていない。俺以外に、カーブが初球カウントをとるために2回、フォークが勝負球で1回、それだけだ」頭の中でここまでの配球の展開をめぐらせながら、打席へと向かう。ネクストバッターサークルにいるとき、ピッチャーの視線をなんとなく感じていた。それに気づいた瞬間、バットくんはピッチャーがバッターに投じた真っ直ぐのボ
2020年5月17日 19:25
バットくんがケガから復帰して初めての練習試合の日だ。ここまで3ヶ月間、かつてないほどに野球の思考を学んだと思うからのぉ。今日は一つ楽しみじゃな。神様もバットくんのケガからの復帰を喜んでいた。無論ここまでバットくんを苦しめたのは神様の仕業ではあるのだけれど、ちゃんとバットくんが立派に成長して戻ってくることを神様は心からずっと待っていたのである。バットくんは4番ライトで先発出場。さすがにこ
2020年5月16日 03:02
今日はチームが練習試合の日。バットくんはバックネット裏から試合の様子をみている。野球の神様もバットくんのそばについて試合の戦況を見守っている。無論、野球の神様は神様としての仕事をするためにグラウンドに来ているのだが、反面でバットくんの成長を間近でみたいという思いから、わざわざこの試合を選んで足を運んだということもある。ほぼバットくんの専属神様みたいなもんでもあるから。今日は両チーム
2020年5月13日 15:58
今日のグラウンドの土はいつになく光を吸収した鮮やかな茶色で映え渡り、見上げれば少し浮かぶ2、3切れの雲の先に広大な青が広がっている。バットくんがバックネット裏で監督の横にノートとボールペンを持って座っていること以外には、いつもと変わらぬ練習風景が広がっている。チームは守備練習中。ノッカーが放った打球は地に3、4回触れてショートの正面に。彼は難なくこれをさばき、綺麗にスローイングを決
2020年5月11日 19:26
もう一回気合入れ直すぞ!という気持ちの中での「全治3ヶ月」はさすがのバットくんにもこたえたみたいだ。冴えない顔を浮かべ、日々焦りと不安の感情に苛まれている様子が見てとれる。かなり落ち込んでるようじゃなぁ。ちっとばかし悪いことをしてしまっかのぉ。このまま立ち直れないバットくんではないとは思うが、ここは一つ希望の恵みを与えてやるかのぉ。チームの練習が終わったのは夕方の17:00。この日の練
2020年4月20日 23:03
ある平日の夕方、8歳の少年は彼の住んでいる家と思われるところの前にあるガレージでバットを振っていた。おぉ、偉いのぉ。ちゃんと一球一球真剣にバットを振っておる。野球の神様は、バット・ボール・グローブその他野球に関係する匂いを嗅ぎつけると、匂いのするところをまるで蜜を探す蜂のようにグルグルグルグルと駆け巡る習性を持っている。どうやら今日は8歳の少年のバットの匂いを嗅ぎつけたらしい。いい
2020年4月21日 22:06
おぉ、ここにも努力家少年がおるじゃないか。一人で壁あてか、偉いのぉ。きっとうまくなるぞ。さっきの素振り少年と彼の対決が楽しみじゃのぉ。野球の神様はこうやってあちこちを駆け回りながら、だれとだれが対戦したらおもしろいかとか、だれとだれを戦わせてどんな展開にしようかとか、そんなことをいつも考えている。野球人口が減っているとはいえ、こうやって真摯に努力をしている子どもたちがいるのはうれしいも
2020年4月22日 19:19
日曜日の朝。今日は清々しい天気だ。神様が目を覚ます。あぁ、おはよう!って誰もおらんか独り言でおはようをいうのが毎朝の日課だ。さて、朝の散歩じゃ。神様に朝の支度などない。顔を洗ったり歯を磨いたり、そんなものは煩悩だと神様は考えている。神様は何気なく、昨日出会った2人の少年の様子を観察しにいった。今日は2人が一岡グラウンドで野球の対決する日。何気なくとはいいながら、神様はこ
2020年4月23日 13:17
バットくんとウォールくんの戦いの火蓋が切られました。おぉおぉ、はじまったのぉ。野球の神様は人間界でいうコーヒーのようなものを飲みながら戦況を穏やかに平和の象徴のような表情で見守っている。というか神様にできる表情は実はこの表情しかないから、たまたま周りからはそういう表情にみえるというだけなのだが。例えるなら七福神の恵比寿様のような表情か。神様を神様でたとえて申し訳ない。。バットくんは9番
2020年4月24日 19:47
バットくんはベンチに戻ってもしょんぼり。今にも涙がこぼれそうな表情でうつむきながら、ライトの守備に向かっていく。気の毒じゃのぉ。みている感じだと今のが彼の生涯の初打席だったんじゃろう。だいぶ実践のボールにビビっておったのぉ。一方ベンチに颯爽と戻ったウォールくんは、メンバーを全員集めて円陣の真ん中にいる。「気合入れろよ!この回たたみかけるぞ!いいか、みんなでつないでつないで1点取るからな
2020年4月25日 23:54
試合は最終回。5-0でウォールくんのチームが勝っている。ツーアウトランナーなし。ピッチャーのウォールくんは完封勝利まであと1人の状況になり、打席にはバットくんが立った。今日のここまでの打席は2打数2三振。バットくんの表情は相変わらず自信なさげだ。今日はいいとこなしじゃなぁ。もう結果は決まったようじゃな。ピッチャーのウォールくん。迷うことなく全力の真っ直ぐをストライクゾーンに3球連続
2020年4月26日 10:46
「いやー今日の試合はすごかったんだよ!俺の大活躍でさぁ!今日一点も取られてないんだよ!ねっママ!」「そうよ。お母さんもびっくりして感動しちゃった」「そうかぁ、お前はすごいなぁ。お父さんも惚れ惚れするぞ」試合後、ウォールくん家の夜の家族団欒。話題はウォールくんの初完封勝利で持ち越しだ。「ほんとすごいわねぇ。また来週の試合も楽しみだわ」次の日の放課後、先週までのウォールくんなら壁あ