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#10 「あなたのため」には裏がある

私を一瞬で狂犬に変えるNGワードがある。
その一つが
「あなたのため」「子どものため」
という言葉。

二十代半ばまでは、
このNGワードに出くわそうものなら、
ワナワナと手が震えた。
言葉を発した人に対する態度が変わることを止められなかった。
ただよう偽善臭。
くせーんだよっ!ガルルルーっと人間の皮を被った狂犬爆誕。

当時の職場には、そんな狂犬と化す私をうまく扱ってくれる先輩大先輩が何人かいた。
いわゆる「団塊の世代」の方々だった。
セクハラ
パワハラ
モラハラ
とは一線を画しつつ、リベラル。

そういう方々は、皆「嘘がない」人達だった。
何か難題が起きても投げ出さない。解決策や落とし所を皆んなで考えるべく奔走する。若手が苦しんでたら、とことん付き合う。頭ごなしに否定しない。酒の席で説教しない。そんな先輩大先輩に出会えたことは、地元で散々大人不信の上塗りを繰り返して来た私には「こんな大人がいるのか」
という目から鱗の経験だった。

この出会いは今の自分に繋がる。
マトモな大人と仕事をすることで少し大人不信のリハビリが促された。
生物学的・年齢的には自分も大人だったのにね。THE若輩者。

これがいわゆるインナーチャイルドってやつだ。
インナーチャイルドを認めるか、どう扱うか、向き合うかによって、人生の舵は驚くほど方向が変わる。

他方
あなたのためと口癖のように語り、
自分に都合よくモノコトを運びたい、
賞賛は欲するが労は惜しむ、
面倒なことは誰かにやってほしい、
美味しいトコ獲りしたい
…という人も一定数存在した。
そういう大人は大概耳障りの良いお美しい言葉をお使いになられる。
そして、褒める。(1000%上っ面)
自分の「利」の追求のためなら、キレイな言葉はナンボでも言える人。
偽善臭ぷんぷん。

奇跡的にも。リベラルな先輩大先輩のお陰で
偽善チームとも上手に付き合えるようになった。

今は流石にいい年齢なので
聞いても受け流すくらいの社会性は身につけた。
しかし、狂犬魂は死なず。
未だに
「あなたのため」「子どものため」
という言い回しを聞いた瞬間に、スーっと血の気がひくというか、その人に対する信頼度が急降下する。
若い頃は自動反応みたいなところもあったが、今は冷静だ。
残念ながら、この言い回しを用いる時に、本気で相手や子どものことを考えている大人はいるのだろうか?
言葉の扱いが軽いから、すぐセンサーが反応する。

裏が必ずある。

子どもたちのために離婚できない…。
母は言った。
いやいやおかーさん。
頼んでませんて。
私らきょうだい3人、誰も言ったことないし。
なんなら早く別れてくれと思ってたよ。
貴女が決断できないだけでしょう?
私たちのせいにしないでほしい。

貴女が決断できない理由は私たちじゃないよね。
ずーっと思ってた。

しかし
4歳下の弟は、母のその言葉を
今も純粋に信じている模様。

今更蒸し返しても仕方ない。
20年以上前に母も亡くなったし。
 
私が35の時に母が亡くなり
きょうだいで遺品整理をしていた時
白紙の離婚届が出て来た。
それも2通(下書き用と本番用?)

もう怒るエネルギーはなかった。
くしゃっと丸めて町指定のゴミ袋に捨てた。



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