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エッセイ

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#小説

風をいっぱいに集めたら

風をいっぱいに集めたら

電車待ちのホーム。

今日は、晴天なれど思いのほか風が強い。
着ているシャツが、パタパタとはためく。
バタバタといってもいいくらいだ。

電車到着までは、まだ時間があるようだ。
そこでおれは、目をつむり思考を飛ばしてみる。

目の前に広がるのは、広大な海だ。
ここは日本海か。
海風が容赦なくおれを洗う。
あいにくの曇空。
じきに一雨くるだろう。
人影も無く、猫の子一匹見当たらない。
ただただ、白浪

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タクシードライバーのブルース

タクシードライバーのブルース

「どちらになりますか」

「ありがとうございます」

「いや〜、ありがたいですよ。今日は人出も少なくて」

同業者でごった返した道路を、車は慎重に動き出した。

「車内の温度はいかがですか」

いや〜今日も暑かったですよね〜
こんな日は、みんな早目に帰っちゃうのか、ススキノはガラガラですよ。

そうなんですね… 実はね、私、こう見えて昔、会社をやってましてね。
えっ、そうそう、会社を経営してたんで

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コーヒーの湯気と雨

コーヒーの湯気と雨

「雨が降ってるのか…」
目覚めた時、なんとなくすぐに分かった。
だってかすかに、アスファルトが濡れている音が遠くで聞こえているから。

「朝から雨か」

今日が休日で良かった。
これが平日、これから仕事といった朝なら、きっとげんなりしたはずだ。
雨の日は、煩わしいことがやたら増える。
着て行く服になやみ。
履いて行く靴を気にかけ。
なにより、傘というまあまあの荷物が一つ増えるから。

「けっこう降

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見つめる前に跳ぶかどうか

見つめる前に跳ぶかどうか

彼は空を飛ぶことを夢見ている。

でも現実には、履き潰したスニーカーは地面にへばり付いたままだ。

彼は、空を飛べはしないだろう、とも思っている。

だから、その場でジャンプをしてみることさえしたことがない。ジャンプしたところで、空を飛べることなど決してないと思うからだ。
事実、夢を語る時、誰もが空を見上げるばかりなのだから。
あの人も。あの人も。あんな人でさえ。

ある日、懐かしい顔を見かけた。

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音なき音と優しさと

音なき音と優しさと

生産性なんてな無いと思ってた。あの頃は…

北の街の二月には、晴れ渡る青空よりも、少し寒さが和らいだ雪時々曇り、そんな朝がいい。

湿った雪がしんしんと降り続く音無き音。
湿度が窓を曇らせて、この部屋は打ち捨てられた様に静かだ。
彼女と足を絡めながら、狭いベッドで天井を見上げて過ごす。
時折、その髪の匂いを嗅ぐ。
少しだけタバコの香りがする。
彼女はタバコを吸わない。
それだけ、この部屋で長い時間

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