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体調管理はむずかしい

この週末は遊び倒したおかげで本稿執筆時点(月曜朝)のコンディションはいまいち。マスクをしていたといえど1日中外にいて花粉を浴びすぎたのか、友との会話が楽しくなって酒をあおりすぎたのか、鼻の調子がすこぶる悪い。そんな日に限ってポケットティシュをいつもより少なめにしか持ってきていないので、この枚数であと何時間図書館タイムを過ごさなければならないのかと恐ろしくなり、気持ちよく鼻もかめない。室内に移って30分以上経つのに鼻水はおさまることがない。


そもそも昨夜を思い出すと、いつもより就寝時間も遅くなっているのに『光る君へ』第11話を視聴して、気分がどん底になったまま寝付いてた。これも、重苦しい目覚めの原因だろう。まひろと道長の関係は結婚という形では成就しないことは史実から知っていながらも、当時の婚姻制度の前で葛藤しはじめた彼らの苦しみが、ダイレクトに伝わってくる。昨晩は消化しきれない気持ちを「ぐおお」とか「ゔゔゔ」とか言いながら眠りについた。


体調管理ってむずかしい。友人と遊んだり、好きなドラマを見ることで得られる幸福はあれど、その代償だってあるのだ。遊ぶために削られる体力、増してくる花粉症状、良い展開の後の悪い展開に引き摺られて落ち込む精神。心身が活力に満ちる楽しい時を過ごしたとしても、そのために費やされているエネルギーがある。仕事を休む前にはこういうことを自覚できずにいたので、終業後や休みの日にはただただ楽しさを求めて過ごして(運動とか飲みとか)、いつの間にか社会生活を営んでいくための基礎エネルギーが削られた状態となり、つと機能停止した。


わたしは世間的にいえばまだまだ若い会社員であったので、平日の終業後や土日をいかに自分の時間として充実させるかということばかり考えていたと思う。仕事ばかりに没頭せず、ワークライフバランスが取れている人生。平日の夜が残業だけで潰れることがなく、趣味の時間を持てる人生。休日出勤などせず、休みの日は友人と夜まで遊ぶ、余裕のある人生。働きはじめたら、いつの間にか私の理想はそれになっていた。世の中にはそんな理想をやってのける人もいるが、わたしの場合はそれで疲れてしまうことはわかっていたつもりだった。でもいつの間にか、自分に残されたエネルギーを度外視し、充実感を求めて活動が増え続けるサイクルから抜け出せなくなっていた。


活動的に過ごすことばかりが良いことではないこと、必要なエネルギーを補充する時間が必要なのだと気づいたのは、小川糸の『針と糸』を読んだ時だと思う。1週間の過ごし方について書いている話があった。月曜日から金曜の午前は人に会わず、徒歩で行ける範囲で活動する。金曜の午後から土曜日は人に会う予定を入れる。日曜日は家でゆっくり過ごし、体のメンテナンスをする。ずいぶん省エネだと思った。著者が生活拠点としていたドイツで、平日と週末をきちんと区別して生活する人々の様子をみて、自身の生活に取り入れたというものだった。

かくして私も、ドイツ人を見習い、平日と週末をきっちりと分けて考えるようになった。月曜日から金曜日の午前中までは平日扱いとし、仕事、つまり書くことに専念する。金曜日の午後からは週末となり、友人と会ったり外食したり、楽しく過ごしてエネルギーを吸収する。

そんなふうに暮らすうちに、少しずつ自分だけのルールができた。まず、平日は人に会わない、予定を入れない、自分の足で歩ける範囲でしか行動しない。その分、金曜日の午後は、打ち合わせやインタビューに当てたり、担当編集者と食事をしたりする時間に当てる。土曜日はプライベートな時間とし、映画を見に行ったり、夫と外食したり、友人を招いて一緒にご飯を食べたりする。日曜日は基本的に家で過ごし、次の一週間を心地よく過ごすため、体のメンテナンスに当てるのである。

小川糸『針と糸』(2018)


在宅勤務終了後に電車に乗って街に出て遅くまで飲まなくたっていい。土曜日と日曜日の二日間もジムに行かなくたっていい。土曜日に友達と遊んだら日曜日は夫と出かけようと思わなくていい。小川糸さんの1週間の過ごし方に当てはめて、やらなくていいことを考えてみたら、途端に気持ちが軽くなった。自分の体力を考えたら、やらなくてよかったことが、これまでたくさんあったのではないかと思った。


1週間の過ごし方のルールなどなかったから、誘われるままに遊んだし、カレンダーの予定は増える一方で、なにかをマイナスしてみようと思うこともなかった。ルールを作ることで、自分が体力的にも精神的にもつらくない予定を立てられるようにしていけるときっといい。そう思って、本を読んでから小川糸さんの過ごし方を取り入れたらいいサイクルができていた。楽しい余暇の時間でエネルギーをもらいつつも、その時間に使った体や心のメンテナンスに日曜日をまるまる使うと、気持ちよく次の月曜日を迎えることができる。


と、順調だったが、この週末は友人との予定が合わず日曜に激しく遊ぶこととなり、そのサイクルを保つことができなかった。そしたらてきめん、月曜の朝からBADモードである。なるべく努力しても、こんな週末が避けられないことは、これから何回だって起こるだろう。でもそんな時に、たとえば週の前半にどういう過ごし方をしたら回復できるかを考えて、ルールを作ってみたらいいんじゃないかと思う。小川糸式の1週間の過ごし方を基本として、平日の緊急回復プログラムを作り出せたら、イレギュラーが起きても安心して対処できるだろう。


今週の始まりはあんまりいい感じじゃないけども、いつかまた困ったときになにができるか考える、よい機会になるであろう。買い物をなるべくしないで直帰するとか、香りのいい入浴剤を使うとか、昨日適当にやってしまったスキンケアを丁重にやるとか、お風呂上がりのストレッチを長めにするとか、布団に入ったらスマホではなく本を読んで早めに寝るとか。色々試してみましょうぞ。

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