2020年12月の記事一覧
ほんとうは故郷なんてどこにもないんだとわかっているのに、どこかへ強烈に曳いていく、わびしさもない、つらさも息苦しさもない、透きとおった感情だけがあるような音色。
大河ドラマ清盛の第1回、子どもの歌が流れたときの、あの、頭をなぐられたような感覚は忘れられない。
遊びをせんとや生れけむ
戯れせんとや生れけん
画面のこちらで、目をむいた。
梁塵秘抄だ!音色があったんだ!
音階がひとつかふたつ、少ない気もする。
7音に慣らされているのか、元来、ひとの心のうちはそういうものなのか、この音の落ちぐあいは、どうも不穏な気持ちにさせられる。
この2行だけを、延々とルー
Groria In excelsis Deo
小学校のころよく読んでいた作家は、いま思えば、尋常でなく旅好きだった。
3か月くらいに1冊、新刊がでた。
新刊の物理的魅力は、とほうもなかった。
このなかに、あたらしい物語がつまっている。
ためいきがでる。
ななめにして、つやつやと光る、キズひとつない表紙を愛でる。
カバーをもどして、本編をごっそりめくる。
まず、あとがきを読んだ。
はやる心をおさえる。
いきなり滑るところぶので、まずは準備動作
へこんだときにおすすめの本。スパダリにしか見えない空海のイケメンっぷり。夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。
大学のころに作った、「おちこんだときに読む本リスト」が、発掘された。
しかも、せっせとコピーをとっていた。
殊勝なことに、コピー用紙をまとめて、手とじ本にしてあった。
失敗したホチキスの穴があいている。
手折りしたところに、手あかがにじんでいる。
いじましい。
しんみりきて、思わず手にとった。
会話文からはじまっている。
空海と、橘逸勢が話している。
ときは、平安時代、ところは、唐。
当時、世界
新時代にいきる女性たちへ。智恵子抄、高村智恵子の悲劇のあとにも残り続けるもの。
みどりの黒板いっぱいに、まるっこい字で、先生が書いている。
その日が、4月のはじめての授業だった。
中学2年生相手に、先生は好きなことばを書いている。
20代後半くらいにみえた。
よく通る声の、華奢な国語教師だった。
黒いショートカットに、くっきり二重の眼は、くろぐろとしていた。
文豪のことを、略して呼んだ。
鴎外、太宰、漱石、賢治。
中学2年生には衝撃だった。
ともだちのように、見知らぬ人を呼