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ものかきのおかしみと哀しみ

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すれ違った人たち
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2018年12月の記事一覧

写真徒然 2018.12.30

写真徒然 2018.12.30

お墓の空は広い。12月は余計に広く感じる。
もちろんお墓のそうじ、お参りという目的があるのだけれど
半分は広い空の下に佇むため。

いまはもういない人のことを考えていると、
その人の何でもない言葉が
空からの便りのように、僕のポストに届く。

僕は、返信をこころの中でしたため枯葉の切手を貼る。

鳩のための入試問題

鳩のための入試問題

『公園内のハトはご自分でお持ち帰りください。』

公園の出口に立てられた看板の前で思わず鳩と目が合う。

「持って帰られちゃうんですか僕?」 鳩が言う。

困ったね。僕は答える。僕も鳩を持ち帰ったってしかたない。
だけど、と僕は言う。
何か言おうとした僕を、鳩が咽を鳴らしながら遮る。

そんなことより、これ手伝ってもらえませんか? 鳩が言う。
鳩の首には、鳩のための入試問題集。

お前、受験なの?

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100%の自分を探しに

100%の自分を探しに

年末になるとなぜか写真が観たくなる。
そんなの知らんと言われそうだけど。

まあ現実逃避なのかもしれない。やることがありすぎて。摂取しないといけないテキストがあれもこれもあるので、つい写真のほうに惹かれるというのもある。文字から少し離れたい。

あ、noteは別です。noteは読むというより「感じる」「空気に触れる」に近いから。

以前に読んだ、誰かのnoteの写真だけを流し読むみたいなこともして

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2018年、今年の僕のワーストnote 5選

2018年、今年の僕のワーストnote 5選

気がついたら、仕事納めも華麗に年を越えそうなフリーランスな年の瀬。
毎年そんなこと言ってる気もするけど。

だけど、今年はちょっとだけ違う。1年ぐらい旅に出たかのように、ほとんど書いてなかったnoteを8月ぐらいからまた戻ってきて書いている。ええ、年明け早々締め切りの原稿を横目に。

2018年の暮れはnoteと一緒に見送るのだ。

そんなわけで、ちょうど #今年のベストnote というお題も出て

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なぜ人はトイレの鏡で全身自撮りするのか

なぜ人はトイレの鏡で全身自撮りするのか

ずっと不思議だった。

たまにSNSで流れてくる「全身自撮り」の画像。タレントさんとかモデルさんとかだけじゃない。職業的なのとは関係なくても見かける。あれはなんだろう。

いや、そんなの不思議でもなんでもないじゃん。と言われるかもしれないんですが、僕もべつにそれを否定的に見てるわけではなくて、場所。不思議なのは。

家の中で自撮りしてる画像は僕もとくに何も思わなくて、外出先で自撮りしてる画像。それ

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自然の中で見つけるプロ論

自然の中で見つけるプロ論

いつからだろう。「いかにプロになるか」の話をあまり聞かなくなった気がする。どうすればうまくいくか、どう評価されるか、どうお金になるかの話はよく聞くけれど。

この人プロだなと感じさせてくれる人の話よりも、「この人、めっちゃ注目されてる」「この人、有名で影響力あるよな」の人の話がたくさん流れてくる。

もちろんプロでありつつ、成功者で有名で影響力のある人もいます。いろんな分野で。それはそれですごい。

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クリスマスピザの修理は

クリスマスピザの修理は

「ねえ、まだ直らないの?」

バイクのコネクタを外して、端子の接触具合を確かめているとクーコがやってきて言った。

「どれが原因かわかれば、スグなんだけどな」
ケンタローはクーコの顔を見ずに答える。
「原因なんて、ろううせわかんないよ。他の方法考えたほうが、 はらいんじゃない」

クーコは限定チーズ味キャラメルコーンを口のなかでもぐもぐ言わせながら、ケンタローの顔を覗き込む。

「だめだ

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写真徒然 2018.12.23

写真徒然 2018.12.23

※日曜日はさらに僕のnoteの前を行き交う人も少なくなるので
1枚の写真と語る日

冬の公園が好きだ。誰もいない公園。光と北風だけの祝祭。

なぜラブホの名前はそうなるのか

なぜラブホの名前はそうなるのか

小さい頃からラブホテルの名前が好きだった。

いや、変態の子の話ではない。真面目な話。

親が運転する車に乗せられて移動していると、高速道路のインター近くになぜか密集しているラブホテルのネオン看板が気になってくる。

どう考えても子供にとっては、あの、秩序があるようでない光はショッピングモール的なイルミネーションとの区別がつかない。

なかでも、漢字のラブホ名がお気に入りだった。これもすごく誤解を

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プロでもうれしいこと

プロでもうれしいこと

ずっと仕事の原稿に埋もれてると息してない気がしてくる。

書籍の場合7万字とか10万字のテキストを掘り起こすように書く。なんていうか一人でヘッドランプを頼りにほの暗い坑道に入り、テキストの鉱山の奥深くに潜って、鉱脈を見つけてはコツコツと掘っていく感じ。

そうして採掘されたテキストをトロッコに積んで運び出し、構成して編集して本になり誰かの心の火を灯すことだけを考えて黙々と書く。

それなりに長くこ

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フライパンで靴が焼ける

フライパンで靴が焼ける

謎の一言メモが発掘された。

年末になるとそういった事案が多発する。本人も意味がわからない。本当に自分が書いたメモなのか疑惑すら湧く。

《フライパンで靴が焼ける》

そりゃ、フライパンで靴を焼こうと思えば焼けるだろう。良い子はまねしないほうがいいけど。いや、そういうことじゃないのか。

いくらなんでもフライパンで靴を焼いたりはしないし、その必要性もメリットもない。だとしたら何かのメタファーとして

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南青山の児童相談所騒動に決定的に足りないもの

南青山の児童相談所騒動に決定的に足りないもの

小さいころ、児童相談所に連れて行かれたことがある。妻以外の誰かにはじめて打ち明ける話だけど。

例の南青山の騒動で、利用者(と言っていいのかわからないけど便宜上)の子供の側からの声がほとんどないのが気になった。

もちろん当事者の子供が声を上げることなんて難しいし、自分がそうだったときのことを思い返しても、周りの子も大人たちも多くの人は児童相談所とは無縁に生きていて、その空気感は誰もわからないのが

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朝に光る歯

朝に光る歯

歯のピーク、早くね?
だよね、おかしいよね。

朝の電車の中で、高校生の女の子たちが歯を磨きながら話している。
ちりちりした朝の光が、白い歯にも反射してきれいだなと僕は思う。

だけど歯に何のピークがあるのだろう。盛り上がってるってことなのか。今日、歯のノリ悪くてさぁ、とか言うのだろうか。

いや、違う。歯の年齢のことかもしれない。

たしかに、歯だって身体のパーツのひとつなのだから、お肌なんかと

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写真徒然

写真徒然

日曜日の夜なので短めの徒然を。

知り合いが出展している写真展に行った。みんなそれぞれ写真が好きで撮っているんだなというのがわかる。

写真には(文章もそうかもしれないけど)その人が写る。なんていうか、カメラを向けたものとの関係性とか、そこで生まれてしまう空気とか、そのときの心の温度とか、いろんなものが写っているのを見るのが好きなのだ。

そういう意味では作品そのものを鑑賞するって、あまりしてない

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