マガジンのカバー画像

何処までもやせたくて

94
運営しているクリエイター

2019年6月の記事一覧

何処までもやせたくて(21)続・モデルと骸骨の境界

「そのひとことっていうのはね、
僕達が求めてるのは、美しいモデルであって、醜い骸骨じゃない、
って言葉だったらしいけど。
キミだって、モデルみたいになりたいわけで、骸骨を目指してるんじゃないよね?」

なんか、Gさんの言うことがひとつひとつナイフみたいに刺さって、心が痛い。
言葉を返せば、涙声になりそうで、黙り込むしかなかった。

聞きたいことはいっぱい山ほどあったのに・・・

特に、教えてもらい

もっとみる

何処までもやせたくて(22)悪夢・・・のはじまり

「今夜、そっちに泊めてもらえないかな」

夜11時前に届いた、彼・・・S先輩からのメール。
友達と飲んでて、終電を逃しそうだから、
タクシーで行ける私の家に泊めてほしい、
という内容だった。

長く付き合ってる恋人同士なら、珍しいことではないかもしれないけど、
私達の場合は、まだ一ヶ月。
昼間に、家に来てもらったこともない。

だから、嬉しさより、困った気持ちが大きくて。
でも、困ってるのは彼のほ

もっとみる

何処までもやせたくて(23)悪夢・・・のつづき

そして、朝。

ほとんど眠れなかった私は、ぐっすり寝てる彼を置いて、買い出しに出た。
せめてもの償いに、おいしい朝食を作ろう、と思い立って。

最初は、冷蔵庫の中にあるもので、と考えたのだけど、
普通の男の人が満足しそうな食事を作るには、
食材も調味料も、物足りない。
おかげで、かなりの出費になったものの、
ベーコンエッグとフレンチトーストの朝食を、彼は喜んで食べ始めた。

でも、その途中・・・

もっとみる

何処までもやせたくて(24)働いてはいけない体重

バイトの休憩中、店長に呼ばれた。

「最近、やせたみたいだけど、体調、大丈夫?」
またしても、私の体型や体調の話だ。

めんどくさいなー、と思いながらも、
「全然、大丈夫ですよー。体調、どんどんよくなってるし。
あの・・・仕事もそれなりにしてるつもりですけど」

「うん、仕事ぶりには何の問題もないんだけど。
ただ、あまりにも細いから、お客さんとか、いろんな人から、心配する声が出てたりしてね。
キミ

もっとみる

何処までもやせたくて(25)続・働いてはいけない体重

びっくりしたし、かなり不愉快だけど、ある意味、ひと安心。
まだ、そこまで細くないから。

「でね、お友達の体重のこと、勝手に教えるなんて、どうかと思ったけど、
店長さん、本当に心配そうだったから、
そんなに少なくはないはずですよー、
30キロ台はちゃんとあると思います。
って、言っちゃったんだけど、ごめんね」

「ううん、言ってくれて、助かったよー。
私が自分で言っても、なかなか信じてもらえないか

もっとみる

何処までもやせたくて(26)家族・・・その厄介なもの

スープだけの夕食を終えて、簡単な体操をしていたら、電話が鳴った。
イエ電にかかってくるのは珍しいから、セールスか何かかと思ったら、
東京の伯母から。

「なかなか遊びに来てくれないけど、元気?」
と、聞かれ、
「元気ですよー。なんか、毎日忙しくて、そちらに伺えなくてすみません」

そんなありきたりな会話をしたあと、
「元気ならいいんだけどね・・・」
なんとなく、伯母の口調が変わった。

「あなた、

もっとみる

何処までもやせたくて(27)恐怖のバイキング

伯母と会う約束をどうするか、決めかねたまま、別の憂鬱が襲ってきた。

彼との週末デート。
というより、私にとっては無理に食べさせられる苦行の時間。
平日の食事量を減らして調節しているものの、正直いって、うっとおしい。

でも、私がなかなか太らない(むしろ、少しやせた?)ことが、彼には不満みたいで。
「今度、ホテルのバイキングに行ってみない?」
なんて、提案をしてきた。

バイキング=食べ放題、って

もっとみる

何処までもやせたくて(28)続・恐怖のバイキング

会話が、パタッと止まった。

彼が、戻ってきたからだ。
入れ替わりにトイレに行くつもりだったけど、やめることに。
吐きに行ったと思われるのは、シャクだもの。

二人の会話の最後のほうは、彼も聞こえてたみたいで、
お店を出たあと、
「大丈夫? いろいろ言われてたみたいだけど」
優しい言葉をかけてくれた。

「うん、大丈夫。全然気にしてないから」
笑顔で答える私。
でも、彼の口からは、想像もしない言葉

もっとみる

何処までもやせたくて(29)テスト期間の招かざる客

「すっごーい。こんな完璧なノート、初めて見た!
助かるわ~。ありがと、ね」

同級生のわざとらしい言葉に、愛想笑いで答える。
それにしても、わざわざバイト先にまで、ノートを借りに来るなんて、
あつかましいというか、切羽詰ってるというか。
自分には、とても真似できないし、したくもない、って思う。

大学は今、テスト期間。
日頃、講義をサボりがちな人たちが、ノート探しにあせりまくってる。
そこで、目を

もっとみる

何処までもやせたくて(30)邪魔者は消えて!

テスト期間は誰にも邪魔されず、ダイエットに専念できたから、
体重がけっこう落ちた。

31.9キロ。
記録更新。
あと2キロ落とせば、20キロ台!

なのに、彼(=S先輩)とのデートでたくさん食べさせられ、
33.2まで戻ってしまった。

もう、イヤ!
前よりやせたはずの私を見て、そろそろ見放してくれると思ったのに、
「なんか、こないだよりやつれた感じだけど、大丈夫?
テストも終わったことだし、頑

もっとみる

何処までもやせたくて(31)伯母の奇襲

「先生、さっき送ったメール、読んでくれた?」

カテキョの生徒の彩華ちゃんに、いきなり言われた。
えっ、何それ?
そういえば、出かける前にストレッチをしていたりして、時間がなくなり、
ケータイをチェックする間もなかったっけ。

「あ、ごめんね。今、見るよ」
その内容を目にした瞬間、真夏なのに、背筋が凍りつきそうな気がした。

「せんせぃのオバサンが、今日来るみたぃだょ。だぃじょぅぶ??? 彩華ょり

もっとみる

何処までも痩せたくて(32)S先輩の嘘

サークルの合宿から帰ってきて、三日。

いろんなことがありすぎて、まだ整理ができていないのだけど、
整理するためにも、思い出してみる。

まず、行きのバスからして、気分は最悪だった。
バイトの徹夜明けで寝てなかったせいか、
テニスをするための筋力をつけるために、卵の黄身などのたんぱく質ばかりを食べたせいか、
胃の調子がおかしく、車酔いも手伝って、戻しちゃいそうな感じ。

でも、そんなことになったら

もっとみる

何処までもやせたくて(33)続・S先輩の嘘

一瞬、耳を疑った。
お付き合いを断ったのは私からだったはずなのに。
これって、どういうこと?

「あのさ、私の友達がS先輩の友達と付き合ってるじゃない。
で、いろいろ聞いたんだけど、なんか、大変だったみたいだよー」
「大変、って?」
「自分からアタックしてきたくせに、いざ付き合いが始まると、
デートも二の次で、ダイエットにハマリまくりで」
「あれって、もう、ダイエットなんてレベルじゃないでしょ」

もっとみる

何処までもやせたくて(34)ついに・・・・・・

合宿初日の夜。

お風呂には、結局、二時間ぐらいいただろうか。
脱衣場に戻ると、誰もいない。
よしよし、と思いながら、いつもの儀式を行った。

体重測定。
今朝は30.6キロだったけど、夕食を抜いた分、百グラムでも減ってるといいな。
そんな期待を胸に、体重計に乗ってみたら・・・

29.7キロ。
初めての20キロ台!
まさか、こんなところで記録できるなんて!!

飛び上がりたいほど嬉しい気持ちと、

もっとみる