何処までもやせたくて(21)続・モデルと骸骨の境界


「そのひとことっていうのはね、
僕達が求めてるのは、美しいモデルであって、醜い骸骨じゃない、
って言葉だったらしいけど。
キミだって、モデルみたいになりたいわけで、骸骨を目指してるんじゃないよね?」

なんか、Gさんの言うことがひとつひとつナイフみたいに刺さって、心が痛い。
言葉を返せば、涙声になりそうで、黙り込むしかなかった。

聞きたいことはいっぱい山ほどあったのに・・・

特に、教えてもらいたいのは、
「それなら、モデルと骸骨の境界って、どこなんですか?」
ということだけど、
自分にとって、嬉しい答えは返ってきそうにない気がした。

黙ったままの私に、
「ごめん、ちょっと言い過ぎたね。
ただ、このあいだ、水着姿を見たときもちょっとやせすぎだと思ったし、
もう少し太ったほうが魅力的な気がしたから、
あれ以上やせたって聞いて、それはまずいんじゃないかって。
とにかく、もう、ダイエットは中止したほうがいいよ」

その言葉も、意外すぎる。
撮影のとき、スタイルをほめてくれたのは、嘘だったの、って。

もう、他人のいうことはアテにできない。
自分の感覚だけを信じよう。
私はまだやせてない、だから、もっとやせなきゃダメ。

Gさんの気分をこれ以上、刺激したくなかったから、
「わかりました。いろいろありがとうございます」
と、お礼を言って、電話を切ったものの、気持ちは釈然としなかった。

ダイエットのこと、手放しでほめてくれないにしても、
「頑張ってるね、でも、無理しちゃダメだよ」
ぐらいのことは言ってくれると期待してたのに。

最近、みんなして、私のダイエットをやめさせようとしてるみたいだ。
別に骸骨を目指してるわけじゃないし、まだモデル体型にすら程遠いのに。

時計を見たら、11時すぎ。
ちょっと、眠い。

そろそろシャワーを浴びて、寝る準備しようと思って、
ケータイを確認したら、メールが来てる。
彼・・・S先輩からだ。

「今夜、そっちに泊めてもらえないかな」

「えーっ!?」

思わず、声をあげてしまったほど狼狽して、眠気も吹っ飛んだ。


#小説 #痩せ姫 #拒食 #ダイエット



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