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エネルギー資源という武器にやられるのは誰なのか?

露外務省直近の動き

露のラブロフ外相が相変わらず大多忙。直近の面会電話会談履歴を見るとそれは良く分かる。並の国家ではないので当たり前だが、この活動の中から次のコミュニケーション案件を強調したい:3月14日カタール外相との面会、15日イラン外相との面会(この人とは先月の14日、25日に電話会談もしていた)、17日アラブ首長国連邦(UAE)外相との面会(この人とは先月の22日、28日に電話会談もしていた)、21日サウジアラビア外相(この人とは4日にも電話会談していた)そしてアゼルバイジャン外相(この人とは先月の16日にも電話会談していた)との電話会談。少し遡ると、2月の24日に中国外相との電話会談、17日にトルクメニスタン外相との電話会談も実施している。ちなみに、上述のコミュニケーションは相手国家の依頼に基づいて実施されたとのこと。既にお気づきかと思うが、これらは全て天然ガス輸出国家の代表となっている。もっと言うと、OPECの試算によると2020年天然ガス埋蔵量でいずれも上位20に入る国家となっている。更に言うと、ラブロフ外相が直近会話したこれらの国が露と合わせて全世界の天然ガス埋蔵量の69%を所持している。 

出典:OPEC World proven natural gas reserves by country

少し余談になるが、3月22日ラブロフ外相がBRICS諸国の駐露大使を全員招いて会談している。外務副大臣の動きも面白いが、長くなりそうなので、ここでは割愛する。

脱ドルの動き

脱ドルの動きは目新しいものではないが、ここへきてレトリックが活発かし始めたのは確かだ。以前も紹介した、ユーラシア経済連合が既に同連合域内に限らず、二国間取引を該当国家の通貨に切り替えるべく検討を進めている。中国とサウジアラビアも米ドルから人民元への切替を考えていると示唆する報道も出始めている(米の他、米ドルを最も多く所持している国の中国にとっての副作用もあるのではないかと思うが)。またもや余談だが、今月の9日、サウジアラビアとUAE側が米バイデン大統領からの電話会談の打診を断ったとの報道も記憶に新しい筈。話しを戻すと、露印間取引も部分的に(というより段階的に)米ドルから両国の通貨に切り替える方向で合意された。何ならイラン辺りがかれこれ40年間米を中心とする西側の制裁下で暮らしているので、米ドルから脱却できるものならすぐにでも飛びつくのではないかと思う。そういえば、一昔前、韓国も米ドルを減らすと言い出していた。通常だと無理はあるが、今の様な状況でどさくさに紛れて何かを仕掛けてくる可能性もあるのか?
西側の対露制裁に参加しなかった中東のアラブ諸国印、ブラジル、インドネシア、トルコ、アルゼンチン等を含む世界の大半の国が参加していないことを鑑みると、露の動きが上手くいけば米の立場がなくなる(はっきり言って、崩壊する)だろう。

米の動き

米が露からの原油輸入に制裁を科したことを知らない人は最早いないだろう。ただし、そもそも米がなぜ露から原油および石油商品を輸入しているのかと疑問に思っている人も多い筈。これは、ものすごく簡単に言うと、原油の種類が、即ち用途が異なるからなのだ。イランとベネズエラに制裁を科して、カナダからのKeystone XLパイプライン建設を中止させた米からすると、露から買っている原油を容易に置き換える術がない
原油の話しも痛いけど、もっと痛いのは核燃料用ウラン。2020年に米露が露からのウラン供給期間を2040年まで延長する契約を結んでいる。なぜ露のウランがいいかというと、これも単純な話し、他より安いからだ。
緑色のエネルギーへの切替が主要なネタの一つだったバイデン政権だが、これが上手く進んでいない中、化石燃料も核燃料も絞められては都合が悪いだろう。ウクライナ民主主義のためにというものの、そこまで痛みを分かち合うつもりはなさそう。エネルギー商品の他に、ロケット用エンジンの輸出を露に止められてしまうこともかなりの危険を伴う筈。
諸々、米も冷静に状況を判断して、露と上手く付き合う方法を探っているのではないかとみられる。そして序に、欧の破壊も虎視眈々と進めている。

欧が対露制裁に耐えられるのか?

欧のエネルギー事情について以前も紹介しているように、露(特に天然ガス)への依存度がかなり高い。EUに入っていない英まで、エネルギーコスト高騰を、身をもって感じ始めている。独のショルツ首相を始め、EUの最高級指導者間でも対露制裁はEU経済・消費者にも悪影響を与えかねないと囁かれ始めている。露の『ウクライナ侵攻』と言われても、欧の一般市民だって急激な物価上昇と日用品・食料品の枯渇を引き起こしたのは当の欧の対露制裁だと理解しているに違いない。
この行方はというと、米の金融システムが崩れない様に少し前の稿にも触れた様に、どこかの厖大な消費市場か、安価な資源か、融資を見つけ、それをしばらく食いつぶさないといけない訳だ。中・露と戦っているかのように見せかけて、実は財力比率が高い欧を先に倒すのではないかと思っている。実に、ユーロ圏の消費者インフレ率が2月に史上最高値を記録したと思いきや3月に早くもこの記録が更新されると言われている。高齢化も進んでいる、自給率も低いという点を加えると、かなり悲しい現状が見えてくるのではないか。すると、冨が欧から米に移るのだろう。すると、欧が更に苦しくなるのだろう。表面的な横並主義(本当は米英の指示に従っているだけなのかもしれない)より、自国の利益を優先してもらいたいところだ。

今日はここまで。

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