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「途中で読むのをやめた本」は失敗なのか?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
読書好きあるあるの1つに、読んでみたけれどおもしろくなかった。つまらなかったから途中でやめてしまった……。そんな、残念な本に出合った人は少なからずいるのではないでしょうか?
 
これまでに4800冊超を読破し、Instagramでも人気の読書案内人として知られ、Voicyのパーソナリティもしている、人気の読書系インフルエンサーの「名もなき読書家」さんも例に漏れず、読むのを途中でやめてしまった本はある程度あるようです。
 
ただ、そのときの考え方、捉え方が違うといいます。失敗ではなく、経験である、と。
 
名もなき読書家さんは、新刊『失敗しない読書術』の中で、残念な本から学んだことについて解説しています。今回は、同書の該当箇所を一部編集して全文公開します。


 私のInstagramを見たフォロワーの方から、「紹介されている本が全部おもしろい」とか「読みたくなる本ばかりです」と言われることがあるのですが、これは私の選書のセンスが良いのではなく、おもしろいと思った本しか載せないようにしているからです。この裏では、つまらない本もたくさん読んできましたし、途中で読むのをやめた本も実はたくさんあります。
 読んでみたけれどおもしろくなかった。つまらなかったから途中でやめた……。
 これを漢字2文字で言い換えると、失敗……ではなく〝経験〞になります。
 そういう意味で、読書に関してはたくさんの経験を積んできた私が、これまでに「途中で読むのをやめた本」から学んだことを、3つ紹介します。

①登場人物が多すぎて名前を覚えられない小説は、「ネットに相関図が出ているかもしれない」と考える

 私が読むのを途中でやめるパターンとして、小説で「登場人物が多すぎて名前を覚えられない」というものがあります。
 ロシア文学で有名な、トルストイの『アンナ・カレーニナ』はこれで挫折しました。
 それでなくても、ロシア人のカタカナの名前は覚えにくいのに、〝ヴロンスキー〞と〝オブロンスキー〞というよく似た名前の2人が出てきたりして(日本人の名前で言うと、山田と小山田みたいな感じでしょうか)、頭の中が大混乱。途中で心が折れて、読み進めることができなくなってしまいました。
 もう1冊、こちらはなんとか読み切った本ですが、伊坂幸太郎さんの『アイネクライネナハトムジーク』は群像劇で、かなり登場人物が多く、これまた頭の中が大混乱。でも、伊坂さんの小説は「何ページかに1回は、必ずハッとするフレーズがある」という信頼があったので、途中でやめると素敵なフレーズを見逃してしまうと思い、我慢に我慢を重ねて読了しました。
 私がこの2冊から学んだことは、ネットに人物相関図を載せてくれている親切な人がいる、ということです。
「アンナカレーニナ×相関図」「アイネクライネナハトムジーク×相関図」で画像検索をすると、〝ひと目でわかる人物相関図〞を発見。クリックすると、めちゃめちゃわかりやすくまとめられているではありませんか! 名前だけでなく、矢印で関係性も書いてありました。
 最初からこれを見ながら読めば良かったのです。読み終えてから気づいたことが悔しくてならないのですが、同じ思いをする人を少しでも減らせたら……という思いで、今これを書いています。
 今後、小説を読んでいて、「登場人物多いなぁ」「ちょっと覚えられないかも」と読み進める手が止まりそうになったときは、あきらめる前にネットで「本のタイトル×相関図」で検索してみてください。もし便利な画像が出てきたら、ありがたく利用させてもらいましょう。名前を覚えるのが得意な方は、〝まとめる側〞に回るのもいいと思います。

②「読んではいけない著者の名前を知ることができた」と考える

 ビジネス書や自己啓発書で「同じことを何度も繰り返して言っている本」は、途中で見切りをつけて読むのをやめることがあります。
 以前、ある著者の方が、「ビジネス書を書くときは、デパートを意識している」と語っていました。
 デパートは1階に足を踏み入れたときに、いつもと違う世界に入る、まあ本の世界に入るということですね。そこから2階、3階と上の階に行くにつれてちょっとずつ内容の難易度を高めていくと、最後に屋上に出たときには、スカッとした爽快感がある。こういう構造にすると「読んで良かった」と思ってもらえる確率が高いらしく、本書もデパートを意識しながら書いています。
 それで言うと、「同じことを何度も繰り返して言っている本」は、ずっとデパートの1階をグルグル回っているだけで、まったく上に行かない状態なわけです。「化粧品売り場に何時間滞在しているんだ!」とツッコミを入れたくもなりますよね。どれだけ読んでも、この先、上の階に行けそうな予感がしない。
 そういう本を読んでしまったときは、私は必ず著者の名前を覚えて、二度と読まないようにします。
 スティーブ・ジョブズが「何をしないのかを決めるのは、何をするのかを決めるのと同じぐらい大事だ」と言っていましたが、読書でも〝読まない本〞を決めておくことは大事です。
 同じことを何度も繰り返して文字数を稼いでいるのは、1冊の本を書き切るだけのネタがないということ。それを見抜くことができたのだから、その読書は決して失敗ではありません。「この著者の本は読んではいけないという、フィードバックを受け取ったのだ」と思うようにしましょう。

③「今はこの本を読むタイミングではなかった」と考える

「途中で読むのをやめた本」と言うと、書籍のクオリティに問題があると考えがちですが、実はすごく素敵な本なのに、たまたまそのときの自分とタイミングが合わなかっただけ、ということもあります。同じ本でも、それを読んだときの自分の年齢や社会的な立場によって、「共感できる・できない」は変わってくるものです。
 たとえば、朝井リョウさんの直木賞受賞作の『何者』。これは就職活動の話ですが、中学生や高校生が読んでも、あまりピンとこないのではないでしょうか。シニア世代の方が読んだ場合も、もはや遠い昔の出来事でよく思い出せないかもしれません。
 でも、リアルタイムで就活をしている大学3年生や4年生が読むと、まるで自分ごとのように登場人物に感情移入するでしょうし、社会人2、3年目の人が読むと、「就活でこういうことあったなぁ」「自分もお祈りメールをいっぱいもらったなぁ」と、ちょっと懐かしく思えたりします。
 一度しかない人生の、然るべきときに然るべき本に出会えるかという〝引きの強さ〞も、読書の成功確率を上げるための重要な要素になってきます。
 また、タイミングが合わないのは自分自身だけでなく、「世の中の流行」と合わなかったパターンもあります。
〝コロナ禍の予言の書〞と話題になった、高嶋哲夫さんの『首都感染』。あらすじをサラッと紹介しますと、「中国で致死率60%の強毒性新型インフルエンザが出現。恐怖のウイルスが世界に、そして日本へと向かった。パンデミック阻止のため、空港での検疫が徹底されたが、ついに都内にも患者が発生――」。
 このシチュエーション、あまりにもコロナ禍の日本と似ていると思いませんか?
 でもこの小説が発表されたのは、2010年。発売直後に読んだ人は現実味を感じられなかったと思いますが、10年後に読むとあまりにもリアルで、ノンフィクションのように思えたはずです。
 このように、一度読んでイマイチだなと思った本も、数年後に再読したらすごく内容に共感できることがあります。自宅に所蔵するスペースがあるなら、手元に置いておくと、いつか〝宝物〞になる日がくるかもしれません。

【著者プロフィール】
名もなき読書家(なもなきどくしょか)
情報クリッピングマスター。京都市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。2005年から現在まで、クリッピング業務(=新聞・雑誌から必要な記事を見つけて切り抜くこと)に従事。「文章を読むプロ」として17年間、毎日朝から晩まで「アンテナを立てて、情報を漏らさず、大量の活字を読みまくる生活」を送り、クライアントに25万点以上の記事を提供してきた実績を持つ。プライベートでも“無類の本好き”で、これまでに4,800冊を読破。読んできた文字数の合計は、公私を合わせると「35億字」を超えている。これまでの経験・知識・知恵から導き出したノウハウを「キーワード読書術」として完全体系化。
◎Instagram:「名もなき読書家」(@no_name_booklover)
◎Voicy:「名もなき読書家のホントーク!」(https://voicy.jp/channel/2972

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