満ちた月、フルムーン #6
真っ白な霧もやはおかしなくらい異世界な空間で、すっぽりと切り抜かれた写真みたいな感覚がして。ぼんやりと浮かぶ街の灯りが、なお、一層ぼんやりと色濃くかたどられていく。はっきりとしないことが霧であるための唯一の証明とでも言ってるみたいに。
忘れようと、諦めようと、うっすら気配を消して。
何事もなかったように迎えられる朝を待つ。
昨日の夕霧みたいに。
あの人の背中ばかり追っていた自分が惨めに思えて、もうやめようといつも思うんだけど、また探してしまっていた、SNSという闇の中を。
闇なんだから全部ブラックホールに引き込まれて。気持ちなんて無視して、ただただ、刹那にリズムに裏打ちされて吹っ飛ぶみたいに消えてしまえばいいのに。
きらいだと言いながらも頼ってしまった自分もいた、SNS。
年始というのはいい口実だったから、ボタンを押してしまった事実。
やめとけばとも思ったけど、後戻りできないし。過ぎた事なのでしょうがない。
承認はしてくれた。
けれども、それだけだった。
それが答えだと言わんばかりに。虚しくなるよね。歯痒いよね。わかってはいるけど。文句も山ほど出てくるけど。
負けなの。わたしの。
足跡遡っても、追っかけても、いくら祈ってみても、来ないものは来ないんだよね。諦めの境地、悟りたいわ。
言いたいことは山ほどあって、次あったら聞いてみたいこともたくさんあって。ほんとは一つの答えは出てたんだけど、それすら聞いてみなかったら本当かはわからない気がして。
結果と原因なんて、わたしの考え出したものでしかないから、それが本当だという確証が欲しくて。ただ、話がしたくて。
でも、どうでもいいんだとも思えてきてる自分もいる。
自ら終止符を打とうとしている自分も。
終わりは怖くない。
また始まっていくだけだから。
終わったら、また始めればいいって知ってる。いつだってそうやって乗り越えてきた自分もいるよね。今回は不意打ちにやられただけだったから、傷は浅そうだし、すぐに笑い話に出来そうな気もしてる。
これ以上も以下もない。ただの友達。
友達以上恋人未満ではなかったのかな。疑問は残るけど、それがあの人の出した答えなら、尊重するしかない。わたしには、意見をいう隙さえ与えてくれなかった。
いや、わたしから拒んだのか。あの人を責めてしまったからか?っていうか、友達だったっけ?あれ?いつ、友達になったんだっけ?
考えてもしょうがない疑問ばかり浮かんでは消えていく。腹割って話したい衝動に駆られるけど、それすら必要はないと何かが言う。きっと、わたしの中の理性か何かが。
終わっていく事だから。
すべては過去として葬り去る。
そしたら、新しい何かはやってくるから。
生まれ変わるの。好きも嫌いも全部ひっくるめて、新しい自分に。
ボタンを押したのは失敗だったと言いそうになったけど、やっぱり、そんな事はなかった。ちゃんと答えは出たんだもの。送ってみて良かったんだ。なるようになって、落ち着き放ってるよね。
月がキレイですね
って言い合える人はあの人だったらよかったのに。と、ちょっとだけ、残念に思う満月の夜。
雲に隠れていく月は、形を変えて光り輝く。
ハッキリとした光、見えないって事実ははっきりと見えている。
いつか見返すよ。泣いて悔しがるくらいになってあなたの前に現れて。突然の朝靄みたいに。驚きと美しさしか無い世界に、呆然と立ち尽くすあの人をみたい。
頑張らなくちゃ。
何でもいいから。誇れる何かを手に入れて、あの人に笑顔でお見舞いするの。
最大限の皮肉と裏返しの「ありがとう」って。
そのために、今日も前を向いて生きていくだけ。
どんな朝だろうとも。どんなに泣きたい満月だろうとも。
ただ前を向いて。
あのまるい月みたいに凛として。
おわり。
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