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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙

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コーイチは、ラムネ星「日本昔話再生支援機構」本部のヘルプデスクから地球上のクローン・キャストを支援している。コーイチは『鶴の恩返し』再生中の沙知が救難信号を出し続けているのに無視…
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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話ヘルプデスクの多忙 1. 当直交代

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話ヘルプデスクの多忙 1. 当直交代

 地球標準時間06:27、私はヘルプグローブの下に立った。ヘルプグローブは、「日本昔話再生支援機構」本部55階ヘルプグローブ・フロアの中空に浮かんでいる直径7メートルの球形の構造物だ。
 3分後、グローブが降下を始めた。着地と同時に、グローブの表面に、人ひとりが出入りできる開口部が現れる。

「おぅ、コーちゃん」」
グローブの中から、M1331、愛称・千太先輩が声をかけてくる。先輩は、まだ、ヘルプ

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 2. 見捨てられた沙知

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 2. 見捨てられた沙知

『第1話 ヘルプデスクの多忙 1.当直交代』からつづく

『第2話 沙知の危機 1. 最悪の状況』 からつづく

 私は『鶴の恩返し』で苦戦中のM1878/沙知の時空超越通信装置に起動シグナルを送り強制起動させた。仙太先輩から釘を刺されたので、かえって彼女のことが気になったのだ。ともかく、状況だけでも早めに把握しておく方が良い。
「M1878です」
力のない声が答える。M1878という登録番号から

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプヘルプデスクの多忙 3. 虎の巻

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプヘルプデスクの多忙 3. 虎の巻

『ヘルプデスクの多忙/2.鶴の巻①』からつづく

 私は泣き出したい気持だったが、現場で沙知が絶望して泣いているのに、ヘルプデスクの私が泣いていてどうすると、気を取り直した。
「沙知さん、私に少し時間をください。なんとか、打開策を考えます。それから、今織っている布は、絹糸だけで織り、これ以上あなたの羽毛を使わないようにしてください」
「そんなことをしたら、明日、あの男が怒ります。どんな目に遭うかわ

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「日本昔話再生機構」 第1話 ヘルプデスクの多忙 4. ハヤトの想定外

「日本昔話再生機構」 第1話 ヘルプデスクの多忙 4. ハヤトの想定外

『ヘルプデスクの多忙/3.虎の巻』からつづく

 私が『鶴の恩返し』の《虎の巻》に取り組んでいると、頭上のモニター画面でピッ、ピッ、ピッと呼び出し音が鳴り出した。『花咲か爺さん』で苦戦しているM2105から緊急連絡だ。

「あぁ、ハヤト君、なに?」
沙知の救出案を立てることに専念したい私は、どうしても対応が荒くなる。
「どうもこうも、こんなです」
ハヤトが泣きそうな声で言い、モニター画面にハヤトの

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 5. 沙知の救出策

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 5. 沙知の救出策

『第1話 ヘルプデスクの多忙 4. ハヤトの想定外』からつづく。

 犬のハヤト君をぞんざいにあしらったのは申し訳なかったが、今の私は、沙知の命を救うことで頭がいっぱいだった。私は、状況をもう一度整理する。

 沙知は毎日のように「緊急避難」を訴えてきた。私もたった今、プロジェクト管理部長に訴えた。しかし、訴えはことごとく却下されている。つまり、プロジェクト管理部長は、沙知を捨て駒にするつもりなの

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 6. 追い詰められるハヤト

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 6. 追い詰められるハヤト

 『第1話 ヘルプデスクの多忙 4. ハヤトの想定外』からつづく

『第2話 沙知の危機 2. 秘策』からつづく

 私は、沙知にとってのリスクも私にとってのリスクも考えぬいた上で、これしかないと確信して打開策を提案したつもりだった。
 しかし、本当に確信が得られたのは、沙知から「やります」と力強い返事をもらったときだった。状況が厳しいことに変わりはないが、私は、自分の肚が座ってくるのを感じていた

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 7. 勝 負

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 7. 勝 負

『第1話 ヘルプクの多忙 6. 追い詰められるハヤト』からつづく

『第2話 沙知の危機 2. 秘 策』からつづく

『第2話 沙知の危機 3.  勝 負』と同時進行

 私がハヤトとの通信を切ると、すぐ、ピピッ、ピピッと受信音が鳴り出した。沙知だ。急いで回線を切り替える。モニター画面に沙知が見ている機織り場の薄暗い障子が映った。
「もうすぐ陽が昇ります。男が帰ってきます」
沙知が緊張した声で言う

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 8. 屁こき嫁

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 8. 屁こき嫁

『第1話 ヘルプデスクの多忙 7. 勝負』からつづく

『小梅のままならない日々/1. とんだありさま、屁こき嫁』からつづく

 私は『鶴の恩返し』の泥沼から沙知を救い出しほっとしたが、それも束の間、新しい着信音が鳴り出した。それも、通常の交信ではなく救難信号だ。 私の全身の神経がさわさわとそよぎ出す。
 救難信号は昔話再生が完全に破綻し直ちにキャストや物資の支援を受けないと収拾がつかない場合に発

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 9. ハヤトの緊急回収

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 9. ハヤトの緊急回収

 『第1話 ヘルプデスクの多忙 8.屁こき嫁』からつづく

 『花咲か爺さん』で苦戦中のハヤトの生命危険度がオレンジ色に変わった。私は急いでハヤトとの回線をつないだ。これまでモニター画面には犬に変身したハヤトの口吻が映っていたが、今回は映っていない。全身の神経が騒ぎ出した。
「ヘルプデスクさん! 変身が、変身が!」
回線の向こうで、ハヤトはテレパシーではなくラムネ語を声にして喚きだした。昔話再生中

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 10. 再び当直交代

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 10. 再び当直交代

『第1話 ヘルプデスクの多忙 9. ハヤトの緊急回収』からつづく

 椅子によりかかりぐったりしていると、当直終了時間を告げるブザーが鳴り出した。助かった。これ以上、トラブル処理をする気力は残っていない。
  ヘルプグローブが下降し、床について止まる。グローブの外殻の1点に穴が開き、それが広がり、人ひとりが通れる大きさになった。
 
 開口部の向こうに、腕組みで仁王立ちしている長身の人物がいた。私

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 11.謝 罪

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 11.謝 罪

 私の当直は終わった。
『鶴の恩返し』は薄氷の勝利だったが、それを呼び寄せたのは私ではなく、沙知だ。飛べないという想定外を乗り切れたのは、細胞再生力を失いかけた身体で迷わず山まで走った彼女の機転と精神力のおかげだ。

 一方、『花咲か爺さん』は、私の完全な失敗だった。ヘルプグローブの中では、私はハヤトの将来を考え「新人用緊急停止措置」を控えたつもりだった。
 だが、グローブから出て乙女先輩に批判さ

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 12.奇妙な依頼

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 12.奇妙な依頼

『第1話 ヘルプデスクの多忙 11. 謝 罪』からつづく

『第3話 産業医の闘い 7. 魔の時間』からつづく

 沙知がスリナリ産業医に答えた。
「先生、もう大丈夫です。それより、こちらの方に御礼を言いたくて。あのぅ、ヘルプデスクの……」
沙知が口ごもった。私の名前を覚えていないのだろう。当たり前だ。あんな状況では、ヘルプスク担当の名前など覚えていられない。

 私は沙知に微笑みかけた。
「ヘル

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「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 13(最終回)とんだクセ者

「日本昔話再生機構」ものがたり 第1話 ヘルプデスクの多忙 13(最終回)とんだクセ者

『第1話 ヘルプデスクの多忙 12. 奇妙な依頼』からつづく

 顔を見合わせている私とスリナリ産業医に向かって、ハヤトが言った。
「ボクだって、命が危ない所だったんだ」
スリナリ産業医がハヤトがいるのを忘れてコピーの件を持ちだしたせいで、厄介なことになり始めていた。
 私は、なだめるようにハヤトに話しかけた。
「ハヤト君、『花咲か爺さん』は不成立になってしまったが、君には何の責任もない。今後、君

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