ふうかん

何やってるかわからない人ほど何かを知っている

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[短編小説]百合③

         3  彼は早朝、花園を廻ることが日課となっていた。 快活な千の風の音や、天使のように笑う太陽を浴び、淋しげに土竜のように居座り、呆然とした目で…

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2日前

[短編小説]百合②

       2  少年は暗闇の只中、詩を書き続けていた。 サラサラと、次から次へと頁は捲られていった。  格調高く紅色に染め上げられたカアテン越しに観える鈴蘭…

ふうかん
2週間前
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[短編小説]百合①

 「これも過去のこととはなった。  僕は、今や、美をば崇めるわざくれも知る」   (ランボー 堀口大學訳『地獄の一季』)         1  物心ついた時、既に少…

ふうかん
3週間前
3

言葉③

今、時間は午後9時54分である。 けれどこの時間感覚は馬鹿らしい。 ––––現在の時間は9時55分。 時間は記述速度を守らない。 時間は記述に対して、美しさの溶解に…

ふうかん
1か月前
4

言葉②

電車に乗っていると、多くのサラリーマンが視界に入る。 鞄を持って、出勤する人。でも彼はなにやら貧血症のようだ。暗そうな顔をしている。皆、病んでいる。何かを皮肉り…

ふうかん
1か月前

言葉

軽い言葉。 炭酸みたいにすぐ消える 体重のない言葉。 そんな言葉を、想像してみることがよくある。 文章を書こうとすると、どうしても何か硬い殻や枠のようなものにハマ…

ふうかん
1か月前
3

芭蕉についての駄文

「芭蕉はいかなる社会体制とも自己を同一視せず、 『現世』一般の中での自己疎外を芸術家の運命と考えていた」 (加藤周一『日本文学史序説』)  松尾芭蕉は実に稀有な俳人…

ふうかん
1か月前
4

論理的であることのキツさ

少し、高校で嫌なことがあったので、論理的であることのキツさを書こうと思います。自分のためです。支離滅裂です。なぜこんなものを書くのか、私にもよくわかりません。 …

ふうかん
1か月前
3
[短編小説]百合③

[短編小説]百合③

         3

 彼は早朝、花園を廻ることが日課となっていた。 快活な千の風の音や、天使のように笑う太陽を浴び、淋しげに土竜のように居座り、呆然とした目で朝を観るのであった。

 少年の父母が所有する庭園は酷く美しいものだった。

 彼は初めて此処を訪れた時、その広大さと造形美に目が眩み、一気に幼年期の夢想癖へと、少年を退行させた。

 大量の花壇に集められた薔薇の群・・・・・・壁のように

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[短編小説]百合②

[短編小説]百合②

       2

 少年は暗闇の只中、詩を書き続けていた。
サラサラと、次から次へと頁は捲られていった。

 格調高く紅色に染め上げられたカアテン越しに観える鈴蘭・・施錠された木箱と酷く静かに佇む無音…彼はサワードウのように、遠い記憶鉱を取戻すべく奮闘していたのだ。
但し、少年の詩には季節感が哭かった。厭らしく独りよがりで、何より面白みに欠けた。

 彼は英才教育に育った。
小動物のような無邪気

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[短編小説]百合①

[短編小説]百合①

 「これも過去のこととはなった。
 僕は、今や、美をば崇めるわざくれも知る」

  (ランボー 堀口大學訳『地獄の一季』)

        1

 物心ついた時、既に少年は玩具に囲まれていた。なぜあんなにも人形や遊具が置いてあったのか、その多くは少年の父と母が毎週毎に褒美として与えるもので、一部少年が子供心為すままに掻き集めたものもあった。

 彼の父と母は少年の周囲を玩具で敷き詰めようと画策し

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言葉③

言葉③

今、時間は午後9時54分である。
けれどこの時間感覚は馬鹿らしい。
––––現在の時間は9時55分。
時間は記述速度を守らない。
時間は記述に対して、美しさの溶解に対して
とても鈍感だ。

そう、風化することを書いてみよう。

そうだ、僕は小学生の頃、人は死んだら風になるとばかり思っていた。

あぁ、これじゃ詩みたいだろう。
たまに鉤括弧の形を不快に思うことがある。

「黒歴史」という言葉に苛立つ

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言葉②

言葉②

電車に乗っていると、多くのサラリーマンが視界に入る。
鞄を持って、出勤する人。でも彼はなにやら貧血症のようだ。暗そうな顔をしている。皆、病んでいる。何かを皮肉りながら、同時に諦めている。

乗客全員、スマホに顔が吸い寄せられている。
異様な光景?いや、恐怖感なんてない。ちょっと面白いなと思う。でも何か違う。

何を皆見ているのだろう。Tiktokだろうか。僕は高校生だけど、もうZ世代にはついていけ

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言葉

言葉

軽い言葉。

炭酸みたいにすぐ消える
体重のない言葉。

そんな言葉を、想像してみることがよくある。
文章を書こうとすると、どうしても何か硬い殻や枠のようなものにハマってしまう。この透明な膜の正体は一体なんだろう?

試しに文章をわかりやすくしてみる。
日常の出来事から入り、中身がありそうでない、いい感じの内容。「昨日は」から始めてみよう。具体的な場面も書いて、把握しやすいように。
でもまだ何か硬

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芭蕉についての駄文

芭蕉についての駄文

「芭蕉はいかなる社会体制とも自己を同一視せず、 『現世』一般の中での自己疎外を芸術家の運命と考えていた」
(加藤周一『日本文学史序説』)

 松尾芭蕉は実に稀有な俳人である。
 彼は江戸時代の新人気鋭の「点者(俳諧の批評家)」 として、多くの大名・愛好者と活発に意見を交え、多くの芸術的路線を開拓した。
 しかしそれはある意味で「俳諧の限界」 を展望できる立場としても存在した。彼は農民の生まれであっ

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論理的であることのキツさ

論理的であることのキツさ

少し、高校で嫌なことがあったので、論理的であることのキツさを書こうと思います。自分のためです。支離滅裂です。なぜこんなものを書くのか、私にもよくわかりません。

 最近、「論理的能力」の有無がよく生徒に向けて問われるようになりました。私が所属する科でも行なわれているとおり、「命題を客観的に証明する試み」です。論理的に物事を把握することで、リテラシーを兼ね備えた柔軟な思考をつくることが、第一の目的と

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