言葉③
今、時間は午後9時54分である。
けれどこの時間感覚は馬鹿らしい。
––––現在の時間は9時55分。
時間は記述速度を守らない。
時間は記述に対して、美しさの溶解に対して
とても鈍感だ。
そう、風化することを書いてみよう。
そうだ、僕は小学生の頃、人は死んだら風になるとばかり思っていた。
あぁ、これじゃ詩みたいだろう。
たまに鉤括弧の形を不快に思うことがある。
「黒歴史」という言葉に苛立つことがある。
他人の自分の人生に干渉するはずのない言葉。
それを誰かが「歴史」と称している。
何回、人は憂さ晴らしのため「歴史」をつくらなくてはいけないのだろう。
いやそれを言えば、全ては不透明になり得る。
やはり時は鈍感だ。
風化させるし、下手な新入りが残り香を残したりする。
不器用な絶望。この言葉をギターで掻き鳴らすバンドはいないだろうか。絶望の手触りを再現できたら、どんなに良いだろうと思う。ただし、彼らは直ぐに消えて無くならなくてはいけない。
「アフォリズムほど退屈なものはない」。
じゃあこの発言は一種の格言か。こういう時は棚に置くのが一番良い。戯言が重要なのであれば、人々の言葉は全て格言になるのだろう。
どんどん黒歴史が溜まっていく。自分の黒歴史に恋をすることだってあるのかもしれない。
黒歴史をつくるのは並大抵の努力じゃできない。滑稽さの見極めが必要だ。自分で「黒歴史」と騒いでも人は取り合わない。ピエロの顔みたいに笑いながらネタにしなければ。
そういえば、僕は考えている。
どうやってこの文章を解体しようかと考えている。
昨日、肉は削いでやったから、次は骨組みだろう。でも誰もが骨は好きじゃない。頭蓋なんて難しくて読めない。
駄作はある種、一つの作品であるかもしれない。同じ言葉でできているのに、何故優劣がつくのだろう?やっぱりセンスだろうか。
昔、書いた小説の台詞を思い出す。
博士は彼女に質問する。
「紙に二つの点を書く。そして、線で結ぶ。さてこの二つの点の心は繋がっただろうか」
彼女は言う。
「いいえ、彼らの恋は成立しません」
因みにこのシーンに特に意味はない。
泡が弾けるみたいに、僕の頭も弾ける。
その様子を形容してくれる人がいたら嬉しい。
バスが来た。賽銭を握り締め、足を動かす。
どうにも、気取ったことを書きたい気分であったらしい。
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