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運動せずプロテイン飲むと?

前回、「医師や薬に頼らない!すべての不調は自分で治せる」という
本の内容を紹介したときに、著者の藤川徳美先生から
「日本人には必要量のタンパク質が摂取できていないから、
プロテインから補給する必要がある」

と指摘がありました。


そこで今回は、筋トレせずにプロテインを飲み続けるとどうなるのか?
科学的根拠に基づいて解説します。
健康のためにプロテインを飲んでいる人や、タンパク質不足が
気になるからプロテインを活用しようと思っている人にとって、
非常に重要な内容です。






筋トレせずプロテインを飲むリスク

・お肌に炎症が起きる

お肌の健康にとって、豊富なタンパク質を摂取することは
非常に重要なことです。
私たちの皮膚は基本的に繊維状のタンパク質から
構成されています。

また、お肌自体のみならず、コラーゲンやヒアルロン酸といった
お肌のハリやみずみずしさを保つために、重要な構成要素も
タンパク質からできています。
厚生労働省の統計によれば、組織を構成するタンパク質のうち
40%が皮膚に存在し、この数字からもお肌の健康にとって、
タンパク質の摂取がいかに重要であるか分かっていただけると
思います。

また、皮膚のみならず、爪や髪の毛といった部位も
タンパク質で出来ていますから、タンパク質というのは見た目の
若々しさを保つために最も重要な栄養素と言っても
過言ではありません。



タンパク質を効率よく摂取するために、昨今は美容業界で
プロテインの摂取が推奨されていて、プロテインの摂取を勧める
医師や研究者もたくさんいます。

プロテインというと、かつては筋トレ後に筋肥大を目的として
飲むイメージでしたが、今や若い女性でも、美容のために
普段からプロテインを飲む人が増えていて、お肌の健康のために
欠かせない健康食の一つとして認識されるように
なってきました。

しかし、結論から申し上げると、タンパク源として
プロテインだけに頼ると、むしろお肌には逆効果になってしまう
可能性があります。

30人を対象にホエイプロテインを摂取してもらった実験によれば、
もともとニキビ体質でなかった女性の被験者が、
肌荒れの症状を訴えるようになったことが分かりました。
この研究によれば、ホエイプロテインの摂取によって
インスリンの分泌量が過剰になり、皮脂が過剰に生成されたり、
皮膚の炎症が引き起こされてしまう可能性が指摘されています。

このようにプロテインには、もともとニキビ肌でない人を
ニキビ体質に変えてお肌をボロボロにしてしまうという
怖いリスクが潜んでいるというわけです。
そのためプロテインは、なるべく筋トレをはじめとする
運動と組み合わせることが推奨されます。

何故ならば、運動によってインスリン分泌がコントロールされる
ことで、皮脂の過剰合成を抑えることが出来ると
考えられるからです。
また、筋トレによって成長ホルモンが分泌されることで
お肌のターンオーバータイムが正常化するため、
お肌の潤いが保たれるとも考えられます。

プロテインには、不足しがちなタンパク質を補うという点で
それなりに効果があるので、全く飲むなとは言いませんが、
ニキビのようなデメリットを避けるためには、
運動と組み合わせて飲むようにしましょう。
どっちにしろ健康のため、美容のためには絶対に運動を欠かすことは
出来ませんから、最大限の効果を得ていただきたいと思います。





・どんどん老化する

一般的に、私たち成人に必要な1日のタンパク質量は、
体重1㎏あたり1gと言われていて、体重60㎏の方であれば
毎日最低60gのタンパク質が必要となります。

とはいえ、この60gの量というのは、食事からだけでは簡単に
摂取することが出来ない数字なのです。
例えば、タンパク源の代表である牛の赤身サーロインは、
100gあたり22gのタンパク質量を誇っていますが、
このステーキだけから60gのタンパク質を摂取しようと
したら、1日300gのステーキを食べることになります。

確かに、質の良い赤身肉は体に良いといえども高価だし、
毎日これだけのステーキを食べていたら、多くの方は消化不良に
よって胃もたれを起こしてしまうでしょう。

もっとも私たちは、大豆食品や卵をはじめとする様々な食材から
タンパク質を摂取することが出来るため、なにもタンパク質を
摂るために肉ばかりを食べる必要はありません。
肉ばかりからタンパク質を摂るのではなく、様々な食材から
タンパク質を摂取することが重要です。

現代の日本の食生活では、タンパク質が不足しがちになっていると
いうこともデータで判っています。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、私たちの
1日当たりのタンパク質の平均摂取量は70gを超えていて、
意外なことに平均体重の推奨摂取量を上回っているということが
分かります。
にも関わらず、私たち日本人の多くがタンパク質不足に陥っているのが、
体重1㎏あたり1gという摂取量が、あくまで病気にならないための
最低摂取量であるからです。




さらにタンパク質というのは、食べ方によって吸収効率に差が出ることが
知られていて、単純に60gのタンパク質を摂取すれば、
それと同じ量が体内に吸収されるわけではないと分かっています。
良好な栄養状態を維持するのに十分なタンパク質摂取の目標値は、
50~64歳のデスクワーク中心の仕事をする男性においても、
91g~130gと言われていて、厚生労働省が推奨する約2倍の量が
必要であることが分かります。

この目標量に対して、私たちのタンパク質摂取量は70g~80g程度で
推移しており、良好な栄養状態を維持し、お肌の健康を保つためには
タンパク質が全然足りていないことがお分かりいただけるでしょう。

炭水化物、脂質、タンパク質という3大栄養素のうち、
最も1g当たりの値段が高いのはタンパク質であると言われていて、
一説には国の経済水準とタンパク質の摂取量は正の相関があるという
意見もあります。

確かに、毎日の食事から100g以上のタンパク質を摂取するのは
困難で、食事で足りなかった分を補うという点で
プロテインの摂取は推奨されるべきと言えるかもしれません。
ですが、プロテインはあくまでも食事を補うサプリメントの
役割でしかなく、必要なタンパク質全てをプロテインに頼ることは
お勧めできません。

何故ならば、皮膚や筋肉などといった組織の合成に必要なのは
タンパク質だけではないからです。
皮膚のターンオーバーは非常に複雑なメカニズムによって起こるため、
タンパク質以外にも、亜鉛を始めとする多種多様な栄養素が
必要となります。


また、皮膚の健康を保つためには各種ビタミンが不可欠ですが、
プロテインだけではビタミンも不足しています。
そのため、プロテインだけを飲んでいたら、皮膚は若返るどころか、
むしろボロボロになってしまう可能性すらあるのです。

ですから、タンパク質はできるだけ食事から摂取したうえで、
足りない部分をプロテインで補うというスタンスを
意識するとよいでしょう。
間違っても、プロテインがメインでタンパク質を
摂取するのはやめましょう。





・腸内細菌バランスが乱れる

プロテインを飲んだ後にお腹が緩くなった経験のある方もいるでしょう。
プロテインによってお腹を壊してしまう理由は、プロテイン自体に
よるものと、プロテインに含まれる添加物によるものという
2つの原因が考えられます。

代表的なプロテインには、
 ・ホエイプロテイン
 ・カゼインプロテイン
 ・ソイプロテイン

の3つがありますが、実はこの3つとも、お腹を壊してしまう原因と
なりうることが知られているのです。


ホエイプロテインは、プロテインの中で最も有名なもので、
市販されているプロテインの多くがこの種類のものになります。
ホエイプロテインは牛乳由来のタンパク質ですから、牛乳を飲んで
お腹を壊してしまいがちの人は、同じくホエイプロテインでも
お腹を壊す恐れがあります。

牛乳を飲んでお腹を壊してしまうのは、乳糖不耐症という
性質によるものです。
乳糖不耐症とは、牛乳をはじめとする乳製品に含まれる乳糖を
上手に吸収することが出来ない体質のことで、うまく吸収されなかった
乳糖が腸内で悪さをすることでお腹を壊してしまうのです。


古くから酪農を行っていた欧米人と違い、日本人が乳製品を摂取する
ようになったのは、つい最近のことだと言われています。
そのため、日本人の多くが乳糖不耐症で、一説には3人に2人が
お腹を壊してしまうとも言われています。

牛乳から作られるホエイプロテインにはたくさんの乳糖が含まれて
いますから、それを飲むことによってお腹を壊し、
下痢をしてしまう人が多いのです。


カゼインプロテインは、ホエイプロテインほど頻度は高くないものの、
お腹を壊す人は一定数いるようです。
カゼインプロテインも牛乳から作られますが、ホエイプロテインとの
違いを説明するなら、ヨーグルトを想像していただくと
分かりやすいでしょう。

買ったばかりのヨーグルトを開封すると、食べる部分と上澄み液に
分かれていますが、食べる部分がカゼインで、上澄み液の部分が
ホエイです。
牛乳を飲んでお腹を壊す人がヨーグルトを食べてもお腹を壊さないのは、
ヨーグルト中の乳糖の殆どが上澄み液に存在しているからです。

そのため、ホエイプロテインに比べればカゼインプロテインは、
乳糖によってお腹を壊すことは少ないと言えるでしょう。
とはいえ中には、カゼインによってお腹を壊してしまう
カゼイン不耐症の人や、カゼインそのものによって免疫が
異常をきたしてしまうカゼインアレルギーの方もいて、
そのような人はカゼインプロテインによってもお腹を壊して
しまう恐れがあります。


ソイプロテインには、ホエイプロテインやカゼインプロテインとは
別の理由からお腹を壊す恐れがあることが知られています。

ソイプロテインはたんぱく質の吸収効率が悪いと言われていて、
腸内で処理しきれなかったタンパク質が下痢の原因になると
考えられています。
そして、プロテインそのものによる腹痛のみならず、多くのプロテインに
含まれている人工甘味料のデメリットも見逃すことは出来ません。

プロテイン単体では全く味が無いため、飲みやすさを付加するために
人工甘味料をはじめとする添加物が含まれています。
人工甘味料の多くは、腸内で悪玉菌のエサとなることで
腸内環境を悪化させてしまうことが知られています。



2022年に科学雑誌[Cell」で発表された研究によれば、
人工甘味料が腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を混乱させると
いうことが分かっています。
そのため、人工甘味料入りのプロテインは、プロテインそのものと
人工甘味料のダブルパンチによって腸内を悪化させる可能性が
あると言えるでしょう。




・イライラが止まらない

タンパク源をプロテインのみに頼っていると、お肌や腸のみならず、
私たちの脳神経系にも悪影響を及ぼす可能性があります。
私たちの脳は、その殆どが水と油によって出来ていて、総摂取カロリーに
占めるタンパク質の割合が過剰になることで、脂質の摂取が減少し、
脳が正常に働かなくなる恐れがあります。

特にこれは、運動をせずにプロテインを飲む人にとって
要注意となるポイントです。
タンパク質は1gあたり4kcalの熱量がありますから、
いくら体に良いとはいえ、運動せずにプロテインを
がぶ飲みすれば当然カロリー過剰になってしまいます。



健康を維持するために、1日の摂取カロリーの上限が決まっていますから、
その範囲内でバランスよく炭水化物、脂質、タンパク質の3つを
摂取することが重要なのですが、筋トレなどの運動をしなければ
摂取カロリーの上限は低くなります。

運動をせず、カロリー消費が低いにも係わらず、プロテインを飲むことで
脂質を十分に摂取できなくなり、脳が正常に機能しなくなってしまう
恐れがあるのです。

また脳細胞は、神経伝達物質によって互いに信号のやり取りを
していますが、この神経伝達物質を合成するためには、
タンパク質だけではなくて、ミネラルを始めとする様々な栄養素が
必要なのです。

タンパク源としてプロテインばかりに頼ることで、ミネラルなどの
栄養素が不足し、集中力の低下やイライラといった精神障害を
招いてしまう恐れがありますから、プロテインを飲むときには、
なるべく運動とセットにすることで満足な健康効果が得られると
いうことを忘れないでいただきたいと思います。






間違ったプロテインの飲み方

・朝食前の空腹時に飲む

朝食代わりにプロテインだけを飲んでいるという人がいるかも
しれませんが、それは止めていただきたいです。

プロテインはタンパク質だけを取り出した加工食品です。
私たちの胃腸は、お肉や野菜といった自然の食材を効率的に
消化吸収するよう進化してきていますが、自然の食材には
様々な栄養素がバランス良く含まれています。

逆に言えば、私たちの胃腸はプロテインのように、単独の栄養素を
上手に消化吸収できるようには作られていません。
腸から一度に吸収できる栄養素の量は一定であり、単独の栄養素が
それ以上急に流れ込んでも、吸収が滞って下痢や腹痛の原因に
なりますから、吸収されず意味がないのです。

そこでお勧めなのが、プロテインを食事と一緒に飲むという方法です。
プロテインは空腹時に飲むのが吸収効率が一番いいと聞いたことが
あるかもしれませんが、今までの説明から、そのような方法は
科学的根拠が無いと理解して頂けたでしょうか。

食事と一緒に飲むことで、しっかりと栄養を摂ることもできますから、
プロテインは食事の一部として摂取してください。





・一気飲みをする

プロテインの一気飲みがNGであることは、先ほどの吸収効率のみならず、
分解速度の点からも全くお勧めできません。

実は、私たちの体内ではタンパク質が常に分解され続けていて、
血液中に蓄えておくことが出来ません。
そのため、一度に大量のプロテインを飲むことは効果的ではないのです。

特に注意が必要なのは、筋トレせずにプロテインを飲むケースです。
例え全く運動をしていなくても、私たちの内臓は常に活動を続けており、
これらの臓器にタンパク質を供給するという点で、筋トレをしない人でも
プロテインはそれなりの効果があります。
ですが、筋トレをせずにプロテインを飲み続けると、せっかく摂取した
タンパク質が筋肉の合成に使われず分解されて、結局は不要物として
尿の中に排泄されてしまいます。

腎臓の機能が低下している人は特に注意が必要で、腎臓が悪い人は
タンパク質の分解産物をうまく体外に排出することができず、血液中の
クレアチニン濃度が高くなってしまうためです。
このような、数々のデメリットを避けるためにも、プロテインはこまめに
分けて飲むのがおススメです。

とはいえ、健康長寿のためには空腹の時間も大切ですから、
朝から晩まで少しづつ飲み続けることもお勧めできません。
吸収効率や分解速度、そして空腹時間の確保という様々な点を総合すると、
朝食を抜いた1日2食の食生活をベースに、昼食から夕食までの間に
プロテインを細かく飲むというのが良いでしょう。

このようにすれば、吸収効率を高く保てると同時に、しっかりと
空腹の時間も確保できて、健康や若さを維持することもできます。





・ビタミンやミネラルが入っているものを飲む

これは絶対に重要視していただきたいポイントです。
なぜならば、様々な添加物によるデメリットがタンパク質摂取による
メリットをはるかに上回ってしまうからです。

添加物の中でも、特に注意したいのが甘味料です。
確かにプロテインは、単独では美味しくないものの、
「良薬口に苦し」という言葉の通り、不味いからこそ健康効果が
あるのだと考えて、味については諦める必要があるでしょう。

最近では通販で、完全無添加のグラスフェットプロテインを
購入することが出来ます。
1㎏あたり4,000円程度~と、そんなに高いわけでもなく、むしろ添加物
いっぱいのプロテインでは、これより高いものがたくさんあります。

人工甘味料のような、有害な添加物は入っていなくとも、
ビタミンやミネラルといったタンパク質とは別の栄養素が
含まれているプロテインも存在します。

そのようなプロテインであれば健康のために良いのではないかと
思うかもしれませんが、科学的にはそれもお勧めできません。
プロテインは運動量や食事の摂取量などによって、自分で摂取量を
調節すべきものです。

運動しなかったり、ステーキ肉を食べた日はあまり飲む必要は
ありませんが、筋トレをした日や、肉を食べなかった日は
たくさん飲むなど、自分自身のコンディションに見合った量を摂ると
いうことが重要です。

ビタミンやミネラルもまた、その日の食事量などから摂取量を
コントロールすべきですが、それがプロテインに含まれていると、
タンパク質の摂取量に連れてビタミンやミネラルの量が増減することに
なってしまいますから、適切な量を摂取することが出来ません。

プロテインは普段の食事に置き換えることは出来ず、あくまで食事では
摂り切れなかった栄養素を補完するサプリメントの役割しか
ありませんので、食生活をを補うという前提で飲みましょう。







プロテインと一緒に摂るべき最強の食品

・ゆで卵

卵1個には、およそ6gのタンパク質が含まれていて、
非常に良いタンパク源であると言えるでしょう。

なかでも卵を茹でて食べることで、生卵よりもタンパク質の吸収効率が
2倍近くに跳ね上がると言われています。
卵はビタミンCと食物繊維以外の、全ての栄養素を含む完全栄養食とも
言われているため、普段の食事に取り入れていただきたい
最強の食材です。



・鶏ささみ

鶏ささみは肉類の中でも最もタンパク質が高い食品として有名で、
ささみ肉100g当たりのタンパク質量は、なんと24gもあります。

また、鶏ささみには豊富なアミノ酸など、私たちの健康を維持するために
必要な栄養素がたっぷりと含まれている上に、値段も他の肉に比べて安く、
まさに最強の食材と言えるでしょう。



・納豆

数ある大豆食品の中でも、納豆は特にタンパク質が豊富で、
1パック当たりのタンパク質量は6gありますので、
卵と同程度です。

また、納豆にはイソフラボンやナットウキナーゼなど、若々しさのために
不可欠な栄養素がたっぷりと詰まっている最強食材です。



・イワシ

イワシは鶏ささみに匹敵するほどのタンパク質量を誇り、
まさに海のささみと言えるでしょう。

さらにイワシには,DHAやEPAといった豊富な不飽和脂肪酸が
たっぷりと含まれていて、プロテインでは摂ることが出来ない
神経細胞の健康を保つためにとても重要な脂質を
摂取することが出来ます。
缶詰としても売られていますから、お手軽に食べることが出来る
最強の食材です。



・チーズ

チーズはタンパク源のみならず、心の健康を整えるためにも有効です。

チーズに豊富に含まれているトリプトファンは、セロトニンという
幸福ホルモンの材料となり、さらにセロトニンは夜になると
メラトニンという睡眠を促すホルモンに変換されます。

是非ともプロテインと共にチーズを食べましょう。
体のみならず心の健康維持にも役立つ最強食材です。




終わり

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