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経審を10分で伝える【1】 

こんにちは。ようこそ。
この記事に辿り着いてくれたご縁に感謝申し上げます。

🔵 2024年4月、無料化しました


プロフィール欄での当初の予告どおり、建設業の文脈における、いわゆる経営事項審査(以下、経審と略す)の有料記事をそろそろ書いてみました。

読み物テイストで進めてまいりますので、お気軽に読んでいただけると幸いです。(約4,500字)


実は私、行政書士として某県の経審のとある手続末席に携わらせてもらっています。

※ 公開後、後日付記…今後は、電子申請が主力になっていくため、2023年10月をもって、県庁での受託審査業務(窓口での形式審査)は廃止となりました。ただし、郵送は継続するそうです。

読み物としての経審紹介


察するに、あなたは経審制度について、➀毎年受けているけどなんなのこれ?と思っておられる方か、②これから受けようとする方かと思われます(経理部、総務部、法務部、部署の名称はどうあれ、ご担当かと)。

推察、当たってますでしょうか?

そんなあなたのために役立つ読み物として、経審についてまとめてみました(まだ第一部ですが…以降の部も、徐々に継ぎ足してまいります)。

参考資料を画像で紹介

差し当たり、まずは手作業で、九州7県県庁作成の手引きをかき集めるところから始めてみました(九州在住のため、比較参照の単位が九州域内となりました)。

かつ、出典を明示する方針です(画像添付含む。書籍はシリーズ最後にまとめて紹介予定)。

地元県庁のみならず、他県庁の調査をしたうえであれば、「流行りの人工知能のランダムなつぎはぎ引用」とは異なった「まとめ文」になるだろう、という見立てです。

恐縮ながら、お菓子くらいの値段ですが、「まとめ賃」を拝領できたら幸いです。

今作をご一読いただけたら、手短な制度概要把握のお役に立てると信じています。

※ 徐々に、経審の点数(今年8月にいわゆるP点の最高点と最低点が変動したばかりです)が上がる方向性の話も盛り込んでいきますのでお楽しみに。

参照元【2023年10月執筆時点】

※ 県名は五十音順

  1. 大分県

  2. 鹿児島県

  3. 熊本県

  4. 佐賀県

  5. 長崎県

  6. 福岡県

  7. 宮崎県

経審の意義や目的

▷ 前置き

驚いたことに、九州7県の各県庁がまとめている、いわゆる経審のための「手引き」においては、必要書類紹介や記載例は充実しているものの、そもそもの経審の定義や趣旨目的を懇切丁寧に書き記しているものはないのです(概要や略記はありますが)。

かろうじて、条文や定義について、図解付きでコンパクトにまとめておられたのは、下掲の九州地方整備局によるものでした。

ただ、残念なのは、同局はいわゆる大臣許可の企業が受審するお役所であって、知事許可の経審をご担当されている各県庁とは異質という点ですかね…。

使っている制度の枠組みは同じなので、説明には使えるけれど(後出、客観的事項)、他の都道府県にも営業所がある、大臣許可の人たちしか観ない資料の図解なので、知事許可の人たちにはそもそも入手されない可能性が。

国交省 九州地方整備局による紹介図
(黄色のマーカー線は筆者によります)

▷ 仕切り直し、定義づけて受審者の範囲を確定する


さて、経営事項審査とは、

公共工事への入札参加を希望する(国や地方公共団体といった発注者から直接請け負いたい)建設業許可保持企業が、「審査基準日」現在の自社の経営状況や経営規模などについて、客観的な評価を受けるための審査のことをいう。

と、されています(複数文献の掛け合わせでできている定義文のため、若干込み入っています)。

ですから、帰結として、

  • 民間工事しかしない

  • 下請け工事しかしない

  • 軽微な工事(建設業許可がなくてもできる工事)しかしない

という個人事業主や企業は無縁の制度です。


上記の帰結を分岐(左➡右へ)にした、佐賀県の図(拡大できます)

▷ 経審の趣旨目的(形式と実質と)


上掲の図表(九州地方整備局によるほう)にもあっさり書いてあるように、なぜ受審するのかを一口に言ってしまえば、根拠としては、「建設業法第27条の23が命じる義務であるから」というのが受審理由の形式的な説明です。

形式的というのは、「まあ、業法に書いてあるから」というものです。

では実質的な理由はなんだろう?(言い換えると、なぜそういう義務付けをこの条文はしたんだろう)と思って手引きを読み込んでみるけれど、形式的理由以外は書いていないのです(義務付けられています、という末尾)。

そこで複数の実務書を比較参照してみると、要するに、経審受審を要請する実質的理由とは、以下のような感じです(有料部分に続きます)。

一言で言い尽くせないものの、これらの総体が趣旨目的ということになろうかと。

◎共同マガジンの紹介

※ 2023年11月9日追記

有料部分に入る前に、お知らせがあります。この記事執筆後、ご縁があって、下記の共同マガジンに参加させていただくことになりました。

自分はマイペースなのですが(苦笑)、多方面かつ多彩な面々が、日々、精力的に寄稿されているようです。

もしよろしければ、こちらから↓ご覧になってみてください。


  1. 官公庁は、数多く存在する建設業者の規模や業種に見合った工事を発注するする必要があるため、業種ごとに客観的な評価が必要である。

  2. 公共のための工事であるから、技術力や経験不足による施工不良や不能をなくしたい。

  3. 公共工事は税金が原資であるので、特に慎重な発注が求められており、経営状態の悪い業者による「工事途中の倒産」という最悪の事態とリスクを入札前に可能な限り排除したい。

上記の目的に連携した手段として、経審(による総合評定値の採点、いわゆるP点の算出)があるというわけです。

客観的事項(経審の対象)


宮崎県は親切にも、経審の審査対象(客観的事項と呼称)、総合評定値算出の算式とウエイト、最高点と最低点をカラフルな一覧にしてくれています。

※ 他県の擁護のようですが、他の「手引き」は、これらをモノクロで簡素に、また順不同に列挙しておられるというだけで、情報を一切知らせてくれないわけではありません(汗)。

出典:宮﨑県の経審の手引き 

審査項目には、企業内部のX,Y,Zの他に、企業外部の社会性ということでWという項目があります。

面白いのは、おそらくは顧問税理士さんなどがおられて、客観的に帳簿をおつけになっているわけだから、財務諸表や確定申告書等を県庁に持参すればすぐにも受審できそうなのに(数字は客観的)、上記図解の経営状況(Y)については、「登録経営状況分析機関」という企業に、手数料を払ってY点を別途採点してもらう必要があるというところです。

その結果通知書が来ないと、受審できません(県庁への提出物)。

ツールとして、建設業法がもとめる書式における財務諸表に引き直す必要があるので(建設業法施行規則 第19条の4)、そこが税務・会計を司る税理士と建設業許可周りを司る行政書士とで競合してしまっています。たまに社労士さんも参戦されていたりします。

字数の関係もあり、経審の対象であるこの客観的事項の中身や対策といった諸点については、次回以降に継ぎ足して行ければと思います。

主観的事項(発注者別評価)

▷ 地方自治法の制度と建設業法の制度が折衷されている

ここで、長崎県の「手引き」にもご助力願うことにします。水色のラインが引いてある単語が、この段における関心事です。

長崎県の手引きは関係図は簡素・端的だが、条文も明記されています(カットした画像外に端的な概要文もあり)

あれ、経審で経営面などをチェックされたのだから、建設業法の要請への対応は、これで済んだのでは?

と思ったあなたは鋭いです。

ただですね…前2つの図解においても、別建ての審査があるかのような痕跡はあるのです。

九州地方整備局による図解では、「競争参加資格審査」という薄オレンジのボックスが右下にあります。

また、佐賀県、長崎県の分岐だと、一番右側にあるボックスがあります。おのおの、「点数による等級格付け」、「点数等による順位付け、等級格付け」といった似た表現が用いられています。

ここが、なんと、別の制度なのです。

経審の手引書に載っているのだから、当然、経審の一部だと思いますよね?

しかし、結論を言うと、地方自治法の入札制度が図解に入り込んでいるのです(ちなみに、他業種の様々な入札制度があります)。

対比で思い出していただくと、今までは建設業法独自の制度でした。

薄オレンジのボックスに、発注者別評価(発注者点)とありますが、それが、長崎県のまとめにおける、主観的評価です。

どっちも、経審が取り扱う客観的事項に比べ、なんとなく印象点のようで、居心地悪い名称ですよね…。

ただ、口語とは少し異なり、悪い意味ではないのです。

客観的事項というのは、日々の経理や、税理士さんらによる確定申告で客観的に確認できるものであるので、業法で定めてあります。

それに対して、主観的事項というのは、各地方の実情を交えないといけないもの、文化的背景などが組み込まれるべきものだから地方自治法の制度が接続されていると解されます。

例えば、長崎県は離島を日本一有する地方自治体なのですが、そこで公共工事をしようとした場合、台風が通過する際の耐性とか、錆びてはいけないとか、島ならではの実情があると思われます。あるいは反対に内陸にて、坂が多い県庁所在地界隈の実情ですとか。

それは地方自治の一環であって、会計等、一律の基準の下で公正たるべき経営のチェックポイントのように(自己資本や納税額など)、全国画一で求められるものではないですよね。

むしろ47個、特色が出るはずです(その傘下の自治体の数も足したら相当数になります)。

ですから、九州各県(自治体)ならではの実情が盛り込まれた、という意味で「主観的チェックポイント」リスト(汗)があることになります。

主観的事項のあれこれは、経審の手引きには載っていません(制度の根拠法が違いますし…)。

ただし、こんな図解入りで、ヒントになる資料は、別途Web上で開示されています。

出典:発注者別評価点の活用による資格審査マニュアル (マーカー部分は筆者によります)

もちろん、不透明だったり恣意的なものであってはいけませんから、国交省が諸々、歯止めを別途設けているところです。

総務省のホームページによる一般的な入札制度(実は入札は建設以外にも、事務用品の納品など多岐にわたります)に比して、リンク先の国交省が所管する法律では、対象を建設業に絞っているのが読み取れます。

まとめ

経審の意義や目的から入り、採点上考慮に入れられる主客2つの事項があって、実は制度的根拠が異なること、経審制度と入札制度が合流することなどをご紹介しました。

私が先輩方にご教示を受けつつタッチさせてもらえたのは、客観的事項に関することなので、次回以降は、妙なリークにならない範囲で(手引きや、実務書をお求めいただければ辿っていただける範囲で)、客観的事項についてお伝えしていければと思います。

引き続き、ご支援を賜れたら幸いです。

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