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逆噴射小説大賞関連作品

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2222年のドラゴン

2222年のドラゴン

「未熟な魔法は科学技術と見分けがつかない」
──トーマス・D・ワシントン

 人生は選択によって形作られる。選択を誤った人生はクソだ。両親が離婚したとき父さんについていくべきだったし、大学では哲学より経済学を専攻すべきだった。全て間違いだった。150年前に化石燃料が枯渇したとき、人類が代替エネルギーを魔法に求めたのも間違いだ。だから俺は今、薬草店に強盗に入り、銃弾から身を隠している。
 武装警備員

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大江戸樹羅鬼捕物帳

大江戸樹羅鬼捕物帳

 「ろくろ首は?」
 「こっちです」
 提灯に照らされた作兵衛の顔は真っ青であった。彼が震える手で指した方を虎之介は一瞥すると、後ろに控える部下に目配せした。
 「行くぞ」
 虎之介は努めて平静な声で部下に号令をかける。草履が砂利を踏みしめる音だけが通りに響いた。彼らの羽織の背には「鬼」の一文字が大きく染め抜かれていた。煌々と光る提灯にも同様の一字が墨で書かれている。
 同心が長屋の戸をぴしゃりと

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横取り【完全版】

横取り【完全版】

※全文無料公開中※この作品は逆噴射小説大賞2019に投稿した同タイトル作品の完成版となります。

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 夜風はトレンチコートの上からでも容赦なく体温を奪っていく。だが身体中が一塊の氷のようになっても、懐の拳銃だけは俺に馴染まずにその存在を主張していた。
 俺は目の前を歩く3人の男をにらむ。真ん中の上背の男が今夜の、そして最初にして最後のターゲットだ。
 ボスから拳銃を渡されたとき、俺の前には二

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横取り

横取り

 夜風はトレンチコートの上からでも容赦なく体温を奪っていく。だが身体中が一塊の氷のようになっても、懐の拳銃だけは俺に馴染まずにその存在を主張していた。
 俺は目の前を歩く3人の男をにらむ。真ん中の上背の男が今夜の、そして最初にして最後のターゲットだ。
 ボスから拳銃を渡されたとき、俺の前には二つの選択肢しかなかった。その場で殴り殺されるか、間違いなく生きては戻れない暗殺に挑んで死ぬかだ。俺は後者を

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怨念の星空

怨念の星空

 無限に続く宇宙の星々も、見飽きてしまえば暗幕の上に置かれたビー玉と変わらなかった。
 宇宙作業員の訓練をしている最中はわくわくしていた。だが、いざ宇宙に上がってみると一週間と経たずに飽きてしまった。最初はアトラクションのようで楽しかった無重力も今では不便さばかり感じる。30年以上連れ添った重力がいかに大事だったかをマットは実感した。
 「第4ブロック異常なし。どうぞ」
 通信機でマットはジョセフ

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赤砂のガンマン

赤砂のガンマン

 枯草の塊が風で転がってきた。
 合図はない。どちらともなくホルスターから銃を抜き、そのまま相手目掛け引鉄を引く。
 銃声が二つ。流れる血は一筋。俺の勝ちだ。
 やつはその場であお向けに力なく倒れた。赤い砂が舞って、やつの死にざまをわずかばかり彩った。
 俺はやつに近づき、革ベストの内ポケットからスマートフォンと無線接続の血液検査キットを取り出し、やつの血を採取しつつ、その死に顔をカメラで撮影する

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Mr.ラッキー:オリジン

Mr.ラッキー:オリジン

 「あんたは運がいい子だ。街を飛び回ってるマントの変人どもに負けないくらいにね。それがあんたのパワーさ」
 77歳のときに7階から落ちて死んだばあちゃんの言葉を真に受けた俺が間違いだった。
 俺はツイてると信じ続けて人生を転げ落ち、この前博打で全財産をスった。そして今は銀行強盗の真っ最中だ。
 「撃て!撃て!こいつだって当たれば死グゲッ」
 赤い影がひらりと舞ったかと思うとリーダーのゼフがレッドフ

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