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柴田哲孝著(2024)『暗殺』株式会社幻冬舎

現状の捜査結果に疑義を持つ人が多いので、逆にこの本がリアルに近く思えてくる

わたしはめったに小説は読まないけれど、これは色々な人に勧められたので、一読してみた。本書は元内閣総理大臣だった人のリアルな暗殺事件がモチーフになっている。そしてそのリアルについても、本書で指摘しているとおりの不思議なことが多く、その不思議がどうも人為的なことによるのではないかと、実は今でも多くの人が思っている状態であろう。

わたしもリアルな事件で犯人とされている者は、本書と同じような見解を持っていて、所謂オズワルド的な噛ませ犬だったと思っているし、テレビの報道などで目にした映像からも、あの至近距離から自家製の銃器で打ったとしても、その対象となる人物以外に周りにいた人などにも被害者は出ると思われるが、それもない不思議…

わたしも疑義を持つ一人なので、本書のあらすじの方が、よりリアルで事件までのあらすじといい各プロットと言うか背景というべきものを読んでいくと、こちらの方がより真実に近いような錯覚もしてしまう。それだけ事件が衝撃的でもあり、まだまだ記憶に消えていない中での出版なので混同してしまう部分でもあったのかも知れない。それだけに出版された時期が事件からそう遠くはない時期でもあるため、各々の場面がイメージしやすいところが、読者が本書に引き込まれやすくなっている証なのかも知れない。

昨今はトランプ氏の暗殺未遂事件にしても、スイスチーズモデルのように警備の不備やシークレットサービスと地元警察の指揮のあり方などを含め色々と問題があったように、モチーフとしている元内閣総理大臣の暗殺についても、演説場所の問題、選挙カーで背後を盾にできない問題、警備の問題、その他多くの不備が(意図的なのか)偶然なのか重なっているように思えることと、当時の県警が不祥事問題を抱えていた事や、一番は急遽選挙応援演説場所を変更したことなど、事件性や陰謀論を説くための要素があまりにも多い。

本書の内容を細かに掲載するとネタバレになってしまうだろうけど、この小説に登場する人物たちの一部は、現実の政界を含めたモデルとなっている人を想像してしまうことにもなり、その点で、読者が小説とリアルを、ある意味交互に確認しながら読んでしまう点はあるのかも知れない。

まあリアルな方の事件が、まだ本当に解決しているのか良くわからないという読者の心情もあるので、本書が数々ある疑問の中から1つの最適解のようなことを提示している形になっていることは、小説の中でも特にユニークな本書の立ち位置を残しているのだと思う。

そのうちテレビドラマや映画にもなりそうな感じにもさせる小説なのかも知れない。

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