暗黒の未来スコープ④
恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第三十四話】
(ヒロ)
過去も今も将来も全てが暗黒に包まれて。
答えのない出口を求めて、彷徨って。
俺はどう生きればいいのだろうか。
「お前、進学しないのか」
お節介な担任は俺をどうにかして進学させたいと言う。それからつらつらと何故進学するべきかを語り始めた。
俺に未来を求めてどうする。
進学など許されない行為だ。
未来の可能性を広げられることを強く熱弁する教師を前にして、こんな言葉は胸にしまっておく。
けれど進学しないにしても、家を出て、お金を稼ぎながらどうにか最低限生活しなければならない。
そうなると就職か…。
正直に話せたらいいが、この担任はしつこく理由を聞いてきそうなので言わずにいる。
帰りは悶々とした脳内のまま自転車を漕ぎ続けた。
カフェに着くと、すぐに支度をして業務を始める。そして進路のことをかき消すように、ただ目の前の仕事に取り組んだ。
カランの音で扉に顔を向ける。
そこには彼女がいた。
心は一気に晴れ模様。
思わず手を振ってしまいそうになるほどに。
最近は時間があれば、タクトに許可を取ってホットココアの練習をしている。
どうすれば至極のホットココアができるのだろう。
距離が近づけなくても、何か彼女のためにしたい。
だが、俺にできることはホットココアを作ることだけ。やっと、機会が巡って来たのだ。
嬉しくないわけがない。
いつもの。
そうオーダーを受けて作ったホットココア。
口に運ぶ彼女の表情に少し笑顔が漏れるのを確認すると、俺は誰にもバレないように小さくガッツポーズをした。
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