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暗黒の未来スコープ⑤

恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第三十五話】

(ヒロ)


生物の行動が一斉に活発になり、周りの奴らが部活の練習でより一層の努力を振り絞っている。そんな夢と努力と仲間が宿る鮮やかな世界を、教室の窓から眺めていた。

元気の良い声、ホイッスルの音、砂を撫でる風。

これがアオハルかと他人事のように思ってみる。
実際俺には他人事で、青春とはフィクションだ。


担任に教室で話があると言われ待っているが一向に来る様子がない。バックれて帰ろうか。
ただあの担任だ。のちに面倒になる。

思い直していると、よう、とあの人が来た。

あーめんど。
存在を確認するだけで”面倒臭い”と感じさせる人柄は、逆に才能だと思う。

「進路のことなんだが…」

やっぱりか。
進学をしない理由や事情を聞いてくる。
正直、答えたくない。

「親御さんには相談したか?」

”親御さん”という言葉に身体が少しだけ反応して、喉元がキュッと閉まる。とても教師には言えないワードが矢継ぎ早に浮かび上がり、理性でとにかくそれらが現実にならないように押さえつけていく。だが、抑えていた言葉は意図も簡単に空気へ放たれた。

「しつけーな」

言ってしまった後、自分でも驚く。
今までこんなこと一度もなかったのに。
最近はなぜか、感情の振れ幅がやけに大きい。


口に出したらもう遅くて、理論めいた説教タイムが始まった。まだ沸点レベルの低いワードだったのが何よりの救い。想像していたより早めに説教タイムが終わり、ついでに進路質問タイムも終了した。


「とりあえず、親御さんには相談しておけよ。俺にできることがあればなんでも言ってくれ」


大抵の人間は言うだけで終わるが、この教師は本気なようで、確かに信頼が置かれるのもわかる気がした。

「わかりました」

とりあえずそう答えておく。
まだ何か言いたげな顔をされたが、適当に流してさっさと自転車置き場へと向かった。

長いため息をつきながら、ふと顔を上げる。校庭ではキラキラとしている生徒たちが声を出し、汗を流していた。



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