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親愛なるテオ・アンゲロプロス
親愛なるテオ・アンゲロプロス
今日1月24日は、あなたが13年前、交通事故で亡くなられた日です。あなたは「20世紀三部作」の第三部に当たる新作映画『THE OTHER SEA』を撮影中でした。あなたの映画が大好きだった私は、次はどんな映画なのかしら、とわくわくしていました。突然の訃報に、あなたの新作はもう観られないのか、と愕然としたのを覚えています。
「20世紀三部作」の第一作『エレニの旅
サラリーマンのイエス―小津安二郎『生れてはみたけれど』
はじめに 小津安二郎の『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』(1932)は、小津のサイレント期を代表する傑作で、資本主義社会における、資本家と労働者、持てる者と持たざる者を対比し、持たざる者である労働者の悲哀を子供の目を通して描いている。
本稿は、映画を分析することで、以下の、二つのことを目指す。第一に、子供たちが繰り返し行っているゲームに着目し、そのゲームが持つ意味を明らかにする。第二に、サ
父たちを乗り越えて―トッド・ヘインズ『キャロル』 その2
はじめに 前回のレビューでは、『キャロル』という映画のタイトルから、ヒロイン二人がイエスとして誕生し、死に、復活するさまを描いた映画であると述べた。今回は、『キャロル」がどのような映画のオマージュとなっているか、を指摘し、それをもとに監督であるトッド・ヘインズが何を目指したか、を考えていきたい。
Ⅰ オードリー・ヘップバーンへ1 ウィリアム・ワイラー『ローマの休日』
映画は1953年の春の
ニューヨークのイエス―トッド・ヘインズ『キャロル』 その1
Ⅰ 始まり 列車が軋みながら、ホームに滑り込む音が聞こえてくる。続いて、キャメラは高くそびえる鉄条網のようなものを写し出す。映画は、ナチスの強制収容所にユダヤ人を乗せた列車が到着したことを思わせるシーンから始まる。
ナチスはユダヤ人のみならず、同性愛者も迫害の対象としていた。映画のタイトル『キャロル』は、結婚して娘をもうけてはいるものの、同性を愛する女性キャロル・エアード(ケイト・ブランシェ