ツッチィー

自分で創るエンターティメントの世界を皆さんにお届け出来るよう 楽しみにしてください。

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最近の記事

「さすらいのラーメン五郎」【十条編】

好麺で働き始めて五年が過ぎていた。  既に師匠の一平のナンバー2として店を切り盛りしていた。  そんなある日、五郎は師匠から話があると言われ、店の隣にある喫茶店に向かった。 「お前、この店に来て何年だ 」 「はい。今年で五年です 」 「早いもんだな 」 「師匠の下で働かせてもらえて光栄です 」 「おいおい、いつからお世辞もうまくなったんだ」 「本当ですよ。マジですよ 」 「ところでだ。お前店を持つ気は無いか 」 「えっ? 」 「お前次第だが、どうだ 」 「いやあ、ありがたいお

    • 「さすらいのラーメン五郎」【立志編】

       「ジリリーン 」  目覚ましの音で五郎が起き上がる。 「ようし今日も始めるか 」  いつもの調子で身支度を整えてアパートを出る。  店まで歩いて十分程だ。  【朝六時】  誰もいない店の裏口の施錠を開け、シャッターを上げる。  まずは冷蔵庫のチェックだ。  昨日仕込んでおいたスープの状態を見て、コンロに火を入れる。  焼豚の具合も確認し、野菜の具も補充する必要があるか点検する。  足りない物はメモに書きだして、後で業者にFAXしておく。  レジの釣銭も不足してないか重要な

      • 最後の手紙

         朝礼が終わって得意先回りに行こうとした矢先、恵介は社長の田川に呼び止められた。  「仕事帰りに、時間が空いていたら俺と付き合え 」  「はい、わかりました 」  彼は社長から誘われる理由が分からないまま返事をしていた。  月末の五十日で忙しかった。  彼が会社に戻ったのは夜の八時過ぎだった。  社長はなぜか満面の笑顔で待っていた。  「いつもこんな時間までありがとうね 」  「お疲れ様です。僕に出来るのは、こんな事ぐらいですから大丈夫ですよ 」  「たまには君の働き振りに感

        • ラブラブ光線銃【中編】

          ダメ夫は大学でロボット工学を学んでいた。 専攻はロボット制御であるが、AIプログラミングも趣味で作っていた。 研究のテーマとして、「AIで未知の天体を観測するシステム制御」だった。 要は映画一万本に及ぶ膨大な星空のデータをAIで解析し、ごく僅かな変化を見つけ出して、お役御免になりかけた観測所の望遠鏡を使って、高性能動画センサを取り付けて夜空全体を短時間で撮影して、未発見の彗星や小惑星を瞬時に解析させるモノである。 ダメ夫の作っていたAIはある程度人格を備えた自立型でディープラ

        「さすらいのラーメン五郎」【十条編】

          ラブラブ光線銃【前編】

          2055年の未来の出来事である。 チャイムが鳴る。 「おはよう 」 「それじゃ出席を取るよ 」 担任の天出ダメ夫はフロンティア高校の教師で、歴史と地理を教えている。 32歳、独身。趣味は天体観測である。 生徒からはダメ夫と呼び捨てされるが人気はあった。 性格が奥手のせいか彼女がいなかった。 見かねた校長や教頭からは見合いを勧められていた。 なぜかその話を断り続けていた。 実は幼馴染で同級生の結菜に秘かに思いを寄せていた。 それとダメ夫とは逆に健(タケル)と言うプレイボーイの同

          ラブラブ光線銃【前編】

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          ツッチィー SNSアカウント 趣味、好きなこと 今の仕事、今取り組んでいること ショートショート、エンタメになるなら何でも ※ 追加項目 基本の項目に加えて、自分のことをより深く知ってもらえるような質問を用意しました。以下の質問の中から書きやすい質問に答えてみましょう! ・休みの日はどんなことをしていますか? ・ここ数年の生活での変化を教えてください。 ・最近ハマっていることは何ですか? ・地元のおすすめフードをひとつ紹介してください。 ・好きなスポーツを教えて

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          スクラッチ

          巨大スクリーンから流れるCMの音と巨大なトラックで大音量を流しながら広告して回るトラックの音が聞こえる。  スクランブル交差点に立つと外国人観光客であふれている。  黒沢慎二、35歳、シュレックでWEBエンジニアとして働いている。  改札を抜けて、黒沢は部下の斎藤とクライアントのはなまるドラッグへ向かおうとして  途中、何か蹴っ飛ばしてしまった。 「痛えっ」 「黒沢さんどうしたんですか? 」 「なんか蹴っ飛ばしちゃったよ」  足の痛みもそこそこに、何か探していた。 「なんだこ

          ラッキード・RPG

          これは新車を購入してクラクションが気に入らなかった男のはなしである。  これまで乗り続けてきた外車を辞めて、国産に乗り換えてみた。  実は車検や燃費の事を考えての結論だ。  外車はパワーがあってハンドルを握っていると実に気分がいいものであっ た。  若い頃、国産の大衆車に乗っていると随分あおられたものであった。  それに、B○●やベ△△にはウィンカーも無しに割り込みなんてしょっ中。  余りに煽られるので外車にする事にした。  すると、運転していると分かるが周りが勝手に避けるよ

          ラッキード・RPG

          恩師

           中学二年のクラス替えで、渡部先生と言う女性が担任となっ た。  先生は既に五十代後半を迎えており、自分たちは彼女が最後に 受け持ったクラスでもあった。  先生は必ず朝のホームルームになると諺を一つ教えてく れた。 「一時が万事」  わずか一つの物事から、他のすべてのことを推し量ることがで きるの意。 から始まり、当時の中学生には何の事か理解出来ずにいた。  だが先生はそんな自分たちにも、どんなシチュエーションで使 われるかを分かりやすく説いてくれた。  他にも「衣食足りて礼

          うちの子ジョニー

          今日が二月二十二日ねこの日だと言うことをすっかり忘れていた。  我が家にもジョニーがいた。  虹の橋を渡って四年の月日が過ぎていた。  その死に際から旅立った頃について思い出してみた。  ジョニーがだんだんと弱ってきている。  ウチにきて15年目の事である。  先週の日曜に近所の犬猫病院に連れて行った。  腎臓の機能がかなり弱ってきており、脱水症状が進行していた。  ここ1年ぐらい痩せてきたのが気になっていた。  処方されたクスリを注射器で経口投与してあげていたが、それも効

          うちの子ジョニー

          さよならバックホーム

          「焼き鳥を焼く香ばしいにおいがする。  軟骨のコリコリした歯ごたえを、ホッピーで流し込む。 店の名は鳥正。  会社帰りに通っている。  東京に来て三十年、話すネタが若い頃の失敗や、野球部で猛練習に明け暮れた日々についてだ。  マスターも昔、甲子園に出たとかで、その後、社会人で活躍したが、脱サラし、都内の有名店で修業をしてから、今の店を持ったらしい。  話し方やお客さんのあしらい方が上手いのか、ここはマスター会いたさに来る客でいつも繁盛していた。  ある時、常連の北村が俺の隣で

          さよならバックホーム

          カウント8で起て

          この男の名は片桐丈一。 幼い頃、父親が多額の借金を作ったまま蒸発し、母親と貧しい暮らしを強いられていた。 彼は少しでも家計の足しになればと毎朝、新聞配達をしながら学校に通っていた。  そのくせケンカが滅法、強かった。  放課後や駅前で理不尽な目にあっている下級生を不良達から守ってあげていた。  中学を卒業する頃、経済的な理由で進学はとうにあきらめていた。  そんなある日、職探しのつもりで街中を歩いていたらボクシングジムの練習風景が目に留まった。  あまりに見入っているものだか

          カウント8で起て

          シュラバラバンバⅡ

          「啓介くん申し訳ない。ウチのバカ娘がとんでもない事をしでかした。」 義父は最初、事情が呑み込めていなかったが、娘の口から浮気していた事を聞かされた途端、両親共々、俺に土下座して謝ってきた。 俺は妻と二人暮らしで結婚三年目である。 ここ二年、妻は多忙を理由に帰りが遅くなり、家事も疎かになり夜の夫婦生活がほぼ無くなっていた。 暇さえあればスマホをいじっては 「アタシも疲れているんだから貴方もガマンしてよ」 とまで言い出す始末であった。 付き合って間もない頃はこんな女ではなかったの

          シュラバラバンバⅡ

          1983年夏・あの頃に戻りたい

          午前八時十分、池袋駅六番線に山手線内回りの発車メロディーが鳴り響く。 高田は新宿へ向かっていた。 母校の甲子園初出場が決まったので当時の監督であった立花からのご指名で後援会の立上げを打診されていた。 OB会の会長からの依頼に多少迷いがあった。 「俺に務まるかな?」  そこで高校時代からの大親友の山本に相談することにした。 結婚式以来だから二十年ぶりである。 新宿西口の彼の会社で待ち合わせすることとなり、山手線から見える車窓を見ながら、自分があのとき打たれたシーンがフラッシュバ

          1983年夏・あの頃に戻りたい

          雨の宮益坂

           あれから三年、雨の日の出来事だった。  コロナの中、緊急事態宣言が続いていた。  高山は、山手線で渋谷へ向かっている。  リモートワークが進んで彼の会社もZOOMを使って顧客と営業をしている。  それでも肝心な場合は訪問せざるを得ない時がある。  正に今日がその日であった。  駅を降りると急に雨が降りだしてきた。  アポが十時だったので目的を果たすとそのまま会社へ戻ろうかと考えていたが、  思いのほか、商談が長引き昼近くになっていた。  宮益坂の途中で喫茶店でも入ろうかと店

          お世話になりました・麻布編

          上京した頃働いていた会社が西麻布にあった。 自分がいた頃は大手自動車メーカーの電装部費品 を扱っていた。 一緒に商品の発送を手伝っていたおじさん達に聞 くと、朝鮮戦争やベトナム戦争の時には相当儲け たらしい。 給料が月に2回もあったらしくトラック関係の部 品やプラグが飛ぶように売れ、それこそ高度経済 成長期の思い出を語ってくれた。 本当か知らないが、社長が戦後腰に蹄鉄型の磁石 をぶら下げては鉄クズを拾い集めては売り歩いて 、 それを元手に会社を興したなんて

          お世話になりました・麻布編