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シュラバラバンバⅡ

「啓介くん申し訳ない。ウチのバカ娘がとんでもない事をしでかした。」
義父は最初、事情が呑み込めていなかったが、娘の口から浮気していた事を聞かされた途端、両親共々、俺に土下座して謝ってきた。
俺は妻と二人暮らしで結婚三年目である。
ここ二年、妻は多忙を理由に帰りが遅くなり、家事も疎かになり夜の夫婦生活がほぼ無くなっていた。
暇さえあればスマホをいじっては
「アタシも疲れているんだから貴方もガマンしてよ」
とまで言い出す始末であった。
付き合って間もない頃はこんな女ではなかったのに。
あまりにも残業が多いのと、やたらと飲みに行く回数が多いのでもしかして浮気を疑い始めた。
そんなある日、二日ほど仕事で出張すると言い出してきた。
「浮気相手と旅行にでも行ってくるのか?」
あえて平静を装い行先も聞かずに
「しっかり仕事してきな」
と送り出してやった。
それから暫くして、パソコンで嫁のスマホのGPS情報を確認してみた。
案の定、地方の温泉地が出てきた。
しかもご丁寧に、あちこちの観光名所がログとして記録されていた。
「出張先に一体誰と出かけるのだ」
俺はピーンときた。
まず自分で嫁の行動パターンを調べ始めた。
嫁が会社を定時に出た後、家に帰る方向とは別の駅に降り立ち、居酒屋で男とご機嫌よろしく飲んでいた。
その後、二人でラブホに入っていく姿も確認した。
どおりで毎日帰りが遅く、家事もしなくなる訳だった。
男は会社の上司である事も突き止めた。
「俺との暮らしに何が不満だったんだ。」
「そんなに上司とのSEXが気持ち良かったのか。」
思わず妻への怒りが込み上げてきた。
「まさかこんな事をする女だったとは」
段々怒りが込み上げてきた。
すぐさま、弁護士に相談して嫁と離婚するための準備を始めた。
「これだけ資料が揃っていれば裁判してもかなり有利ですよ。
それと、興信所を使って相手の身辺調査も、いかがしますか?」
俺は弁護士に調査の依頼を頼んでおいた。
数日後、興信所からの報告書を読んでいる。
そして翌日の朝、嫁を見送った後、俺はマンスリーマンションに引っ越してていた。
嫁と浮気相手に対して、内容証明書を送り付けてやった。
家に帰った嫁は俺がいなくなった事に気付いたようで、スマホに何度も着信があった。
ラインにも何度もメッセージが入っていた。
何十件も鬼のような着信メッセージ付きでだ。
当然、送られた内容証明を読んでいたからである。
嫁の実家に大事な話があると嫁と立川とその嫁も呼び出した。
「あなた許して。アタシもストレスが溜まっていて誰かにグチをこぼしたくなって。」
「つい間が指したの。」
当然、嫁も涙ながらに俺に二度と浮気はしないからと懇願してきた。
そしてしばらくすると、浮気相手の立川と奥さんがやってきた。
しかし、俺に詫びる気など毛頭無い態度に呆れてしまった。
「誘ってきたのは、ますみの方で、誘われるまま相手しただけだ」
とシラを切っていた。
この期に及んで、自己保身である。
自分こそお前の嫁に浮気をそそのかされた言わんばかりの調子だった。
「よろしいですか。アナタと俺の嫁が浮気した証拠がこれですよ。
しかも、出張先でよく浮気できますよね。奥さんが、かわいそうと思わないのか?
それと俺に詫びる気も無いのか?」
立川の態度に殴りかかりたい衝動にかられたが、打ち合わせの段階でつい感情的になりやすくなるので注意するよう言われたのを思いだした。
すぐさま、外に待機していた弁護士を呼び出して話し合いに同席してもらい、交渉の手続きを始める事とした。
すると話し合いを始めてまもなく立川の嫁がこう言ってくれた。
「ウチのダンナがやった事は許してもらえると思っていませんが、必ず償いをさせます。」
それに義母も俺に対して
「啓介さん。貴方に娘がした事は到底、許してもらえないと思います。
でも貴方は今でもワタシの息子と変わりはないですからね。」
浮気していた二人以外、みんな俺の側に付いてくれたのが嬉しかった。
そして俺はこうも言ってやった。
「ますみ、お前には慰謝料として三百万、マンションは元々俺が購入したモノだから預貯金含めて財産分与はナシだからな。
立川さん、貴方には慰謝料五百万を請求します。分割なんかあり得ないからな。一括で支払ってもらうからな。」
こうして弁護士立ち合いのもと、離婚の話し合いは終わった。
嫁と離婚して一年が過ぎた。
以前のギスギスした夫婦生活から解放されたので、仕事も順調にこなしている。
おかげでヒラから主任に昇進することも出来た。
そんなある日の日曜日、近所のショッピングモールに出かけてみた。
「谷口さーん」
どこからか、呼ばれた気がした。
振り向くと、立川の元嫁がいるではないか。
「先日もお見かけしたんですよ。
以前はここの近所じゃなかったですよね。
実はあの人とは別れて前のマンションを売り払って引っ越してきたんです」
「そうだったんですか。あれから気持ちの整理も付きましたか?」
「結構、時間がかかりましたね。」
「分かりますよ。自分も思い出すだけで、何か虚しくなっちゃって。」
「もしお昼がまだでしたら、食事でもご一緒しませんか?」
彼女から思わぬ誘いに、断る理由も無かった。
モールにあるレストランに入ると、お互いシングルだったのもあり、話が弾んだ。
暫くして彼女から聞かされた話に驚いた。
「実は奥様の事、前から知っていたんですよ」
「えっ」
思わず叫んだ。
「学生時代に同じサークルにいたんですけど、ボーイフレンドがたくさんいらして当時は、かなりの有名人だったの、まさかウチの人とまで浮気していたなんて、驚きましたよ。」
思わず俺も絶句してしまった。
「貴方から連絡をもらった時、あの人を絶対許すものかと思いましたよ。
そして奥様の事もね」
まさかこんな展開になっていたとは。
しかも、元嫁の実家に呼ばれた時は既に、覚悟を決めていたのも分かった。
それからしばらくして彼女と、付き合う事となり半年後には互いの部屋を行き来するまでになっていた。
それから、元嫁は立川と一緒に暮らしていたが、元々の浮気性が懲りておらず今度は取引先の営業マンと関係を持ってしまい、それを知った立川も部下の女性に手を付けて互いにW不倫を繰り返す因果応報とは正にこの事で、人として失ったモノの大きさに気付いた時は既に遅いのであった。
結論から言うと二人とも離婚したのは言うまでもない。
俺はと言えば、立川の元嫁と一緒に暮らし始めている。
お互いの両親にも挨拶を済ませて、いずれ結婚する予定だ。
実際リサはとても誠実で、しかも美人なのだ。
何とも不思議な感じだが、これからの人生を二人一緒に大切に生きていたいと思う。

とにかくありがとうございます。