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ラブラブ光線銃【前編】

2055年の未来の出来事である。
チャイムが鳴る。
「おはよう 」
「それじゃ出席を取るよ 」
担任の天出ダメ夫はフロンティア高校の教師で、歴史と地理を教えている。
32歳、独身。趣味は天体観測である。
生徒からはダメ夫と呼び捨てされるが人気はあった。
性格が奥手のせいか彼女がいなかった。
見かねた校長や教頭からは見合いを勧められていた。
なぜかその話を断り続けていた。
実は幼馴染で同級生の結菜に秘かに思いを寄せていた。
それとダメ夫とは逆に健(タケル)と言うプレイボーイの同級生もいて、いつも合コンにダメ夫を呼び出しては女友達の前でイジられていた。
「もう、健くんってイジワルなんだから 」
「そうそう、ダメ夫さんも何か言い返したら 」
「うーん。頭の中では出かかっているんだけど・・・・・・ 」
「ほーら。いつものダメ夫の悪いクセが出た 」
てな調子で彼は健の引き立役にされていた。
そんな週末のある日、アシモフは彼のグチを朝から聞かされていた。
2030年製で両親が大学生活を始めるのにと、家政婦ロボットとして購入してあげたものだった。
朝の起床から食事、洗濯と家事はブログラムされており、どの家庭でもロボットは当たり前に導入されていた。
しかもAIによるディープラーニング機能により日常の会話も難なく、こなしてくれていた。
彼が部屋に帰る度に、職場での出来事や健にいじられて恥をかかされた事をアシモフにだけこぼしていた。
そんな時に必ずアシモフは彼にこう言ってあげるのだった。
「ダイジョウブだよ。君はボクの一生の親友なんだからね。何があってもボクが守るから」
その言葉に彼はいつも慰められていた。
「でもアシモフって僕の事をなぜ、親友って呼んでくれるの? 」
「それは今は言えないけど。そのうちに・・・ 」
彼にはまだその意味が理解出来ていなかった。
そんなアシモフには隠された能力があった。
開発時から軍事用AIが搭載されており、言語処理が優れていた。
しかもメーカーのサーバーとクラウド接続されて常にバージョンアップされていた。
異次元プリンターや手元にマイ工場とアシモフに造れないモノは無かった。
すべてダメ夫の為にオリジナルで造ってあげていた。
但しプロトタイプ故に、時々バグを起こしてヒートアップし、フリーズするが30分経つと、再起動し元に戻ることもあった。
職場から戻ったある日、アシモフが何やら・・・
「ラブラブ光線銃! 」
「アシモフ?何それっ 」
ドヤ顔する訳は無いのだが、今すぐ手に取ってみろという勢いを感じた。
「これを相手に向かって光線を放つと撃った人のDNAに好意を持つ作用があるんです 」
「ダイヤルのつまみに応じて効き目が変わってくるよ 」
こうしてアシモフは彼の潜在意識を見透かしたように、次々とイメージ通りの発明品を造り出してくれるのだ。
ダメ夫は試しに隣の飼い犬に光線銃を放ってみた。
「ぎゃおーん 」
いきなり突進された。
思いっきり顔をベロベロ舐めまわされる始末であった。
次に、身近なところで教頭にも試してみた。
いつも小言が多いので、何とかならないか思っていた。
効果は絶大であった。
「ダメ夫くん。今日は仕事帰りに一杯どうかね? 」
「わっ、分かりました 」
一応、誘いに乗ってみた。
教頭行きつけの小料理屋へ。
「いやぁ、ダメ夫くん。急に君の事が気にかかってね 」
「先生、どうしました?」
「それが分からないなんだよ 」
「今朝ね、君の顔見ていたら、ここに連れてきたくなったんだ 」
「いつも気にかけてくれてありがとうございます 」
教頭の上機嫌ぶりに申し訳なくなってきたが、すっかりご馳走になっていた。

とにかくありがとうございます。