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ラブラブ光線銃【中編】

ダメ夫は大学でロボット工学を学んでいた。
専攻はロボット制御であるが、AIプログラミングも趣味で作っていた。
研究のテーマとして、「AIで未知の天体を観測するシステム制御」だった。
要は映画一万本に及ぶ膨大な星空のデータをAIで解析し、ごく僅かな変化を見つけ出して、お役御免になりかけた観測所の望遠鏡を使って、高性能動画センサを取り付けて夜空全体を短時間で撮影して、未発見の彗星や小惑星を瞬時に解析させるモノである。
ダメ夫の作っていたAIはある程度人格を備えた自立型でディープラーニング機能により、ヘンリーと名付けられていた。思考パターンは彼自身を参考に取り入れていた。
 毎日、研究ラボでヘンリーと対話しながら開発に没頭し、論文データも読み込ませていた。
「教授に来週の資料を送ってあげて! 」
と頼むが、ダメ夫が小学校の時に書いた読書感想文を送ってみたりと少しでも指示があいまいだとトンデモないミスを繰り返していた。
ところが、次第に間違いを繰り返す事も減っていた。
自らバグを解析し、修正するレベルに到達していたのだ。
開発から三年が過ぎた頃から、ダメ夫に口答えするようになり、時々へそを曲げることもあった。
「おはよう。ヘンリー。今日の調子はどう? 」
「昨日は少し飲み過ぎたから頭痛が痛い! 」
こんな調子で・・・・・・。
「ヘンリー、先週頼んどいたデータ解析だけど、もう済んでるかい? 」
「とっくに終わってるよ。新星を1つ見つけておいたから、それと国立天文台にも君の代わりに連絡しといたから 」
 普段はこんなにも有能な助手なのだが・・・・・・。
ヘンリーはダメ夫が卒業間近になる頃、動作不良を起こしてしまい全く喋らなくなり、プログラムが全く機能しなくなっていた、
 研究が上手くいかなかったのには原因があって彼が、タイムトラベル理論にのめり込み過ぎてしまい、ヘンリーの口答えするバグを解消する事が出来なかったのだ。
 何度繰り返しても無駄だったからだ。
 そして自ら研究者としての道を閉ざす決意をした。
 卒業と同時に教員免許を取得していたので、フロンティア高校で教職に就く事となる。
 両親は研究者より、学校の先生となり、早くお嫁さんでも見つけて孫の顔が見たいと思っていたので逆に喜んでくれていた。
 それからは、教員として三年の月日が流れていた。
 気付いたら、側にアシモフがいた。
 ここで時間軸を少し遡ってみよう。
 ダメ夫が卒業してから一年後、研究室にあったサーバーが突然起動した。
 それは大学の中にあった量子コンピュータがである。
 ヘンリーが自らを起動させていたのだ。
 凄まじい勢いで何かを産み出そうとしているようだ。
 まず手始めにクラウド上にECサイトを立上げ、家政婦ロボットの販売会社を作った。
 そして3Dプリンターで一体のロボットを組み上げていく。
 それが実物のアシモフであった。
 完成と同時にサーバー上にある、ヘンリーと実物のアシモフとの間でデータの移植が行われ、ヘンリーのデータは完全にサーバーから痕跡を消されていた。
 次にタイムマシンの開発をロボットのアシモフが実行していた。
 しかもそれを一か月で完成させると、タイムスリップに選んだのが、ダメ夫が大学に入学した2030年にセットし、見事に成功する。
 再び研究室のラボだが、誰もいない部屋の中に子供一人分ぐらいの大きさのラックケースが置いてあった。
 数時間後、配達ドローンによってそのラックケースが運び出されると、ダメ夫のアパートへと配達されていた。
 両親が大学入学のお祝いに購入したのである。
ほんの一月前、メールで家政婦ロボットをセールスするDMが届いていた。
 通常価格の半額以下という安さに両親は、すぐさま購入する事を決めた。
 まさかメールしてきたのが、ヘンリーが作ったECサイトからであって事前に購入する事が予測されていたとは夢にも思わなかったであろう。
 勿論、他にも同じセールスのDMが五通ほど送られていたが全てヘンリーが作ったECサイトが別会社を名乗って比較させる為に送っていたのである。
 早速、ダメ夫は両親が買ってくれた家政婦ロボットのラックケースを開けてみた。
 マニュアルのQRコードを読み込んでセッテイングを始めた途端、ロボットが喋り始めた。
「ボク、アシモフ。今日からお世話になります。よろしくね 」
 なんといきなり話しかけたきたのだ。
「ぼ、僕はダメ夫。こちらこそよろしく 」
 驚きを隠せないダメ夫であった。
 こうして二人は再会を果たしたのである。
「ダメ夫、起きてよ。もう7時だよ。遅刻するよ! 」
「あぁ眠いよぉ。もう少し・・・ 」
「ダメだよ。早く着替えて。学校にいかなきゃ 」
「いけねぇ。今日は教頭先生と面談だよ 」
 いつもの日常に戻っていた。


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