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#DAC横浜
夜明けは天使とうららかに 1-1
夜明けは天使とうららかにあいいろのうさぎ
「ただいま」
玄関のドアを開けると、少し間を置いてお母さんがリビングから出てきた。
「おかえりなさい」
と穏やかに微笑みながら言ってくれる。僕はそれを見て『良かった、今日は元気なんだ』と安心した。
「確か今日はお誕生日会をやったのよね。楽しかった?」
僕のクラスでは毎月、誕生月の子たちのお祝いをする。僕は二月が誕生日だから、クラスメイト全
夜明けは天使とうららかに 2-3
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翌日、担任の先生に会えたのは昼休みのことだった。僕は先生が会ってすぐに江藤君の話をするんじゃないかと思ってた。だけど、挨拶をしたら、そんなことは無かったみたいに僕の体調とか、昨日帰った後何をしたかを聞いてきたから、少しビックリした。そして、江藤君のことを自分から切り出さないといけないんだ、と気づいて心の中が嫌な跳ね方をした。
昨日覚悟を決めたのに、僕の口は固められてしまったみた
夜明けは天使とうららかに 2-2
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「ただいま」
玄関のドアを開けると、少し間を置いてお母さんがリビングから出てきた。
「おかえりなさい」
と心配を隠し切れない表情で言って、
「今日はどうだった?」
と聞いた。
僕は、どう言おうか少し悩んだ。別室登校自体は、大丈夫だったどころかリセのおかげで楽しかったとさえ言えるけれど、一番最後に起こったことは、まだ僕の頭を悩ませている。
「別室登校は、大丈夫だっ
夜明けは天使とうららかに 1-4
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それから、お父さんとよく話して、とりあえず今日は学校に行くことにした。またあんなことがあったら、と思うととても怖かったけれど、その時は早退でもなんでもしていい、と約束した。
それから、天使もついてきた。
天使──リセの話によると、彼女の姿は僕以外に見えないらしい。実際、玄関を出る時お母さんが見送ってくれたけど、隣にいる金髪の美少女には視線も向けなかった。
リセが一緒に学
夜明けは天使とうららかに 1-2
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何かが背中に当たった。
三時間目の社会で、先生に急用ができたからと自習になった時だった。
僕は思わず後ろを振り向いたけど、みんな配られたプリントを解いている様子だった。気のせいかな、と思って僕もプリントに向かうと、二問ほど解き進めたところでまた背中に何かが当たった。今度は笑い声を押し殺しているのが後ろから聞こえた。
冷えた感覚が全身をザッと駆け巡った。
プリントに書