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#16 ウイルスも盆と正月くらい休んでろ

夏休みや大型連休のたびに、憎きコの字の感染拡大が気がかりになる。
せっかくの休みでもなかなか気分が晴れない、そんな元保健所の中の人です。

今日も元職場の振り返りをば。

(↑前回の話)

2020年初頭〜翌年3月までに経験したコ■ナ対応で、最も忙しかったのは年末年始だった。全国的にも陽性者の多い時期だったかと思う。

自分の勤務する保健所の管轄内でも、病院、介護施設、学校と、ありとあらゆる施設でクラスターが発生していた。

休日も職員が交代で出勤したが処理が追いつかなくなり、非番の職員をしょっちゅう呼び出していた。


陽性者が急増する中、絶対にやらねばならないことは、落とさずにやる。
早く患者に連絡し、重症化リスクの高い人を見つけ出し、入院していただく。
これが最優先事項だった。

しかし優先順位をつけると他の事務は必然的に遅れる。接触者の調査も、通知の発送も遅れた。それによってクレームが発生し、さらに処理が遅れるという悪循環。

緊張と疲労とジレンマが職員の間にうず巻いていた。

前にも書いたがこの界隈でメンタルが故障する人も増えてきた。
自分の保健所は今のところ、少なくとも自分のグループはみな元気だが、いつまで保つのやら。

年末年始もシフトを組んで交代で出勤するようにした。
自分は特に帰省の予定もないし、正月から三が日にかけて出勤した。


ウイルスには盆も正月もないのだ。


2021年1月1日

新年の空気はいつもと違う気がする。
どうせなら初日の出を見てから家を出ればよかったな。
出勤するなり病院から年賀状、じゃなくて患者発生届がFAXで届く。よりによってお正月に陽性になってしまった患者も気の毒。
ホント、正月くらい休んでろよウイルスめ。

そんな中、「初詣は年末に済ませた」と語る同僚。正月は間違いなく混雑するだろうし、合理的だと思った。

自分も今回の初詣は見送った。この一年弱で、神も仏も信じられなくなったし。


1月2日

出勤中の先輩が「初売り行きたいなー、混んでるかなー」とぼやいていた。
万が一のことがあったら、と思うと何もできない。
どこぞの役場がクラスター出しちゃったらしいよ、なんて噂も聞いている。


患者が陽性になってしまうのは避けられない。ここまでは誰も悪くない。
だがその人の勤務先がクラスターとなったときは別だ。どうにもならないときもあるが、勤務先の感染対策を疑われる可能性も。


同じ轍を踏んではならない、絶対にならないと、気が抜けない。


1月3日

夜9時過ぎ。あらかた自分の仕事は終わったが、保健師の後輩がまだ作業をしていた。
何ができることがあればやるよと、声を掛けた。
「あ、じゃあコレをお願いします」と、書類の束を渡された。
処理を終えたと伝えに行くと、「実はコレもあって…」と。それを片付けると「まだコレも残ってて…」

オイオイ、どんだけ溜めてんねん!
叩けば埃のごとく仕事がどんどん出てくる。


こうなる前に誰かに相談してよ、頼むから。
ってこの状況じゃ相談もなかなかできないか。

気づかなくてごめんな。


仕事帰り、その後輩が「辞めたい」とこぼす。
辞めたいと思ったら、辞めてもいいよと返答した。
この職場に固執する必要はない。保健師の資格があるのなら尚更だ。
自分がいいとか悪いとかジャッジする権限は全くないのだが、辞めてもいいと思うとは伝えた。

公務員の退職者のうち、半分は自己都合退職だと聞いたことがある。
終身雇用が常識だったこの業界も、退職は全然珍しいものでなくなってきた。



自分も多分辞めるだろう。

今はそのときではないだけで。


今日のおまけ

保健所の話はどうしても陰鬱な内容になりがちで、書いてる方も少々気が重くなります。
いつかハッピーでピースフルだった保健所の話もしたい。

あ、保健所に来る前の転職体験記はそれなりにピースフルなので(たぶん)、お口直しに読んでみてください。


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