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#7 コロナ陽性者に保健所が送っている通知を解説してみる

※2022.3 タイトルが省略されてものすごい誤解を招くものになってしまったため改題

2020年頃まで、陽性になった方には、保健所から何種類かの通知が送られていた。
……のだが、職員からの説明が行き届いていなかったり、忘れた頃に発送されて「これ何だっけ?」と言われるケースが多かった。

私は保健所で勤務していたとき、患者の送迎に加えて、陽性者に通知を送付する事務も行っていた。

需要があるかどうかはさておき、今日はこの通知について(主観を交えながら)話したいと思う。

1 就業制限通知


まずこれは、「あなたは陽性患者になりましたから、人と接する仕事はやめてください」とお知らせするもの。
たまにテレワークはして良いか?と聞かれるが、接客がなければしても差し支えない。

(個人的見解)
テレワークOKといえど自宅で「療養」をする期間なので、可能なら心身ともに休んだ方が良いとは思う。


入院する方には、入院勧告通知書も同時に送る。

これは、「□□病院に○月○日まで入院してください」と患者にお伝えするもの。

この○月○日には仮の日付が設定される。入院期間が延びると、日付を延長する通知がそのつど作成されていく。
そのため、場合によっては入院勧告通知と延長通知×数枚が一気に送付されることもある。


2 就業制限解除通知


先に送った「人と接する仕事はやめて」という「就業制限」を「解除」する通知。この通知があれば、普段通りの生活に戻ってよい。

通知が届くまで数日のタイムラグが発生するため、自宅療養を終える患者には、この制限が解除になることを先に電話で伝えていた。

しかしながら、「解除通知がないと職場に復帰できない」と患者から相談されることが度々あった。

もう出勤して大丈夫だと患者本人から会社に説明しても納得されず、自分が会社の担当者に直接連絡したこともある。

2020年の夏頃までは、まだ陽性者の存在が珍しかったためか、会社の方にご理解いただくのがなかなか大変だった記憶がある。


3 公費負担手続関係の通知


ざっくり言うと、入院していた患者の医療費を精算する手続である。

公費負担という言葉がピンと来ないかもしれない。
これもざっくり言うと、「あなたが本来払うはずの医療費を、税金(公費)を使って支払います」という制度になる。

ほとんどの人は、例の感染症での入院費用は全額公費負担となる。
つまり、治療にかかる分のお金は税金使ってなんとかするから、あなたは払わなくていいよ!ということだ。
※備品代などは自分で負担する必要がある。

しかし、収入が高い世帯に住む方は、全額ではなく一部を負担していただく。

【例】
同じ世帯に住んでいる人全員の市民税(所得割)の金額が、合計で56万4千円を超えると自己負担が発生する。
この場合、患者には月に2万円分の医療費を負担していただくことになる。

では、その収入が高い世帯か否かをどうやって判別するのか。

答えは、課税証明書を出してもらう。

源泉徴収票じゃだめ?と言われるかもしれないが、収入ではなく支払った市民税の金額によって判断される。
そのため市民税が載っているもの=市役所で発行される課税証明書が必要になるのだ。


うん、めんどくさい!!

患者さんとしては、家族全員の課税証明書を市役所から取り寄せなければならない。
そして職員側も、出された課税証明書を手作業でチェックしなければならない。

しかもその収入が高い世帯に該当する人は、うちの管轄の場合本当にごくわずか。超レアケースだった。
地域によってはもっと多く該当者がいるかもしれないが……
(東京の港区あたりは、やっぱり該当者もたくさんいらっしゃるのでしょうか?)


ごくわずかの世帯のために、大勢の患者と職員がこれだけ手間かけているって、実情に合わないのでは?

恐らく結核の入院医療費の制度をそのまま流用しているから、こんな面倒臭いことになっているのだと思う。事務の根拠も同じ感染症法だし。
結核だったらともかく、これは患者数が桁違いじゃないか。
もう少し臨機応変に対応できないのか……


患者、職員ともども、事務の中でいちばん存在に納得がいかなかったのが、この公費負担の手続だと思う。

なんで今ごろになってこんな通知を送ってくるの?


現場では人命に直接関わる業務が最優先のため、こういった文書事務はそれより優先度は下がってしまう。
しかし、法律に基づいて相手の権利を制限しているため、行政としては多少遅れてでも文書を相手に届ける必要がある。

患者数が増加した2020年冬頃は、通知の発送が相当遅れていた。
本来、陽性がわかった直後に送られるはずの就業制限や入院勧告の通知が、数週間後に送られることもざらだった。
何とも間の抜けたタイミングで通知が届いてしまい、職員としては非常にもどかしく、恥ずかしい。

なんで今さらこんなもの送りつけて来たんだ!というお叱りの電話もいただいた。


患者さんには「後でこういった通知が届きますよ」という話はしているが、超繁忙期はそれすら手が回らなかったのも事実。

我々の仕事のクオリティが下がっていることと、それで住民の方に迷惑をかけていることが、たまらなく悔しかった。


生命保険等の手続で通知が必要な方へ

※追記:2022年4月27日から、マイハーシス(MyHER-SYS)で画面表示される療養証明書が使えるとのことです。
※追記2:2022年9月26日以降に陽性になった方で、発生届の対象外の方は、証明書が発行されないそうです。以下は2022年2月時点の状況を記載したものですので、ご注意ください。


実際に陽性になった方がもし見ていましたら、元職員としてお伝えしたいことがあります。

2022年2月現在、このような通知の発行を省略している自治体もあります。
希望者にのみ送付する形にしたり、通知の代わりに療養証明書を発行している自治体もあるそうです。


通知の請求方法は、管轄の保健所もしくは都道府県の感染症担当課のホームページに案内されている場合があります。
生命保険の手続で通知が必要なときは、まずはそれらのホームページをご覧くださるようお願いします。

ホームページにも、これまで保健所から届いたメールや手紙にも何も説明がなかったら、そのときは保健所にお尋ねください。



現在の患者数は、自分が勤務していた当時の比ではないくらい激増しています。
いくら応援職員を増員しても、同じ事務を同じ水準で続けていくのは不可能に近いと考えます。
どの自治体も、通知の発行に相当時間がかかっていると思われます。


ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、どうかご理解のほど、お願いいたします。