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#3 コロナ陽性者をどのように病院にお連れするかという課題

2020年春、私が勤務する保健所の管轄エリアで、陽性者が発生し始めた。

陽性者には病院か専用のホテル、もしくは自宅で療養していただくが、病院などに行く場合はどうやって療養先に搬送するのか。

結論としては、保健所で車を手配して患者さんを送迎することになる。

私はこれまで行っていた電話対応に加え、この患者送迎の仕事も担当するようになった。


※送迎の方法は自治体によって様々だと思うので、あくまで一例として見ていただきたい。


送迎が必要な理由

病院やホテルに行くとき、当然ながら陽性の方は公共交通機関を使えない。
同居家族が車を持っていれば送迎してもらう手もあるが、そうすると家族の感染リスクが高まってしまう。

では自分で車を運転して行けばいいのでは?

しかしながら、病院もホテルも一般の利用者と接触しないように、ゾーンを分ける必要がある。
患者自身がそのまま病院に行くと、入口などで一般の方と接触してしまうかもしれない。

また、これは推測だが、療養先に置かれた陽性者の車をどう管理するかという問題もあると思う。

保健師の人数も限られている

送迎が必要な方がいるときは、感染症対応の本部に連絡して専用の送迎車を手配してもらう。

ドライバーも本部から派遣してもらえるが、病院や患者に連絡する(かつ患者の急変に備える)係も必要になる。

本来は保健師が同乗するべきなのだろうが、保健師は濃厚接触者の調査や自宅にいる患者の健康観察など、他にも仕事は数多くある。
そんな状況で、数少ない保健師が席を外すと仕事が滞ってしまう。

じゃあ同乗者は他の職員にお願いしよう、となる。

私の所属するグループには、保健師の他に精神保健福祉士と事務職員がいる。
精神保健福祉士は精神疾患のある方の対応で、急に持ち場を離れることがしばしばある。

「事務の職員なら行けるんじゃない?」

こうして私たち事務職員が送迎を行うことになった。

送迎の手順

患者さんの療養先が決まってから、送迎するまでの手順を記しておく。

  1. 患者の行き先が判明したら、送迎車を手配する。

  2. 患者に連絡し、療養先の情報を伝える。必要な持ち物や生活の注意点も話す。

  3. 療養先の病院やホテルにも患者の情報を伝える。

  4. 送迎車が保健所に到着したら、患者本人にこれから迎えに行くとの連絡を入れる。

  5. 患者宅の近くに車を停め、車に乗り込んでいただく。

  6. 療養先へ向かう。

  7. 療養先にも随時連絡し、到着予定時刻を伝える。
    相手方も防護服の着用など、患者受け入れの準備をするため、患者がいつ到着するか把握する必要があるからだ。

  8. 療養先に患者さんを引き渡す。

といった流れだ。

職員は送迎中、ただ座っているだけではなく、患者さんの様子もチェックする。
具合に変化はないか、車内の冷暖房が強すぎないか、声を掛けて確認したりもする。

陽性患者が増えると、一日で複数の患者宅をはしごした。
病院が遠方だと送迎に半日はかかる。
まれに県の端から端まで大移動するパターンもあった。

患者さんを常に見守っていなければならない緊張と、長時間座りっぱなしの疲労と(ついでに車酔いも)でぐったりになる。

やっと送迎が終わったと思ったら
「次の人をお願い! 行き先は〇〇病院で、住所は……」
といきなり連絡が入ることも……



こんな調子で毎日送迎に追われていた。
感染症の仕事以外にも普段の仕事も進めなければならないが、なかなか時間が取れない。

なんとか他のグループの職員にも手伝ってもらえないか。


ありがたい提案

そう思っていた矢先、隣のグループの同僚が声をかけてくれた。

「うちのグループの事業が一部中止になっちゃって余裕あるから、やれることがあったらやるよ!」

いつもバタバタしている私達を、ずっと気にかけてくれていたらしい。

本当にありがたい!

上司から了承を得て、彼女たちに送迎の仕事を手伝ってもらえることになった。

彼女たちがこの提案に至るまでのエピソードがもう一つあるのだが、それはまた別の機会に


この仕事を始めるきっかけはこちら。よかったらご覧ください↓



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