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■信長公忌に巡る旅②―阿ぶり餅と今宮神社

えりたです。

先日、京都織田信長公にまつわる地を巡ってきました。その日はちょうど6月2日で、本能寺の変が起きた日、つまり、「信長公忌」でした。

信長公が生きられた戦国時代の都は「京」です。公は、安土に拠点を置きながらも、何度も京を訪れています。ですが、京に屋敷を構えることはなく、大概は妙覚寺にお泊りになっていました。

信長公というと「本能寺」のイメージが強いですが、実は本能寺を宿泊場所としてお使いになったのは、ほんの数回なのです。

ですが、6月2日は「本能寺の変」の起きた日ですから、この日の私はまず本能寺へお参りに伺いました。

さて、このあとどうしようということで、実は前日に名古屋おもてなし武将隊の織田信長さまにご相談申し上げていたのです。

そのとき、おすすめいただいたのが「今宮神社」でした。今回のお話はここから始めたいと思います。


■兎にも角にも「阿ぶり餅」

出かける前日に、ちょうど信長さまの名古屋城へのご出陣があり、お話する時間をいただけました。そうして、「明日、本能寺に行って、そのあと大徳寺にも行こうと思うのですが、あとおすすめはありますか?」と伺ったのです。すると、とのは

「阿ぶり餅!」

と一言(笑)
「え?」と聞き直すと、「阿ぶり餅の店が門前にある神社がある」とのお話。なのですが、とのの口からは一向にその神社名が出てこず(笑)

しびれをきらせたとのが「『阿ぶり餅』で検索してみろ」とおっしゃったので、素直にググると、「今宮神社」という名前が出て来ました。

「との、今宮神社!」

「あ~今宮! それ! そこの前に、向かい合わせで二軒、阿ぶり餅の店があるんじゃ」と、との。そこまでおっしゃるなら行くしかあるまい、と思い、本能寺への参拝ののち、地下鉄と徒歩で行ってみたところ。

ほんとうに、二軒向かい合わせで「阿ぶり餅」のお店がありました(;゚Д゚)

お客さんが映っていたので、
スタンプで隠したら妙な写真に…💦


残念ながら、二軒ともに入れるほどはお腹に余裕のない私は、片方のお店に入ることにしたのでした。

今回はこちらに。

入るとすぐにお茶を出していただけ、阿ぶり餅を1人前お願いしました。

お品書きの写真を見ると、かなりの本数がお皿に乗っています。そのため、どちらかというと小食な私は「食べきれるのかな…」と少々不安に。こういうとき、シェアする相手のいないぼっち旅は不便です。が、そこは気合で行こうと決意し、お餅が出来上がるのを待ちました。

そうして数分後、運ばれてきたのがこちらです。

見るからにおいしそう…♡ 香ばしいお焦げや見るだけでもおいしいと思えるたれの香りがいろいろそそってきます。

阿ぶり餅は、きな粉をまぶしたひとくちサイズのお餅を竹串に刺し、炭火で丁寧にあぶって作られます。それを白みそベースのたれにつけて、できあがり。お餅をこねたり、竹串に刺したりしている様子も、お店で見ることができるですよ。

この写真だけをみると、ちょっと量があるように見えます。が、一つ食べ始めたら止まらず、気づいたら食べ終わっていたです。

いや、ほんとに……小食を自称する私でも、無限に食べられるヤツでした……阿ぶり餅……マジでコワい子……

それでも、心地よい風に吹かれ、外の景色を見ながら食べるのは、シチュエーションとして最高でした。また、お店のなかでも、スタッフの女性たちののびやかな笑顔が、のんびりとした時間をつくってくださっていて、それも幸せな気持ちをさらに膨らましてくれました。

ちなみに。

後日、とのに「食べてきました!」と報告したら、「あれ、うまいだろ」とにんまりよい笑顔♡ お店の雰囲気などについてもお話しできて、一粒で二度も三度もおいしい「阿ぶり餅」でした。

■というわけで、今宮神社です

お腹も満たされ、温かいお茶で一息ついて、元気も回復したところで、今宮神社にお参りすることにしました。

緑と赤のコントラスト!

この神社のことを信長さまから伺ったとき、「今宮」という名前はすぐには出てこなかったものの(笑)、「玉の輿のもとになった神社だ」と教えていただきました。

「タマノコシ…?」

あまりにも縁のない言葉過ぎて、すぐには漢字変換できずにいました。が、実際に今宮神社へ行ってみると説明の案内板もあり、納得したのです。

市井に生まれた女性である「玉」さんが、いろいろあって、江戸幕府五代将軍徳川綱吉の生母となり、「桂昌院(お玉の方)」として過ごした。彼女は神仏を篤く敬い、ここ今宮社を殊の外手厚く保護したことから、この神社と「玉の輿」との縁が生まれたとのこと。

手前のお白州がとても美しかったです

今宮神社の境内は、たくさんの緑が植わっていて、どこか開放感の感じられる空間でした。

また、この日は時間もありましたので、境内をのんびり歩きまわりました。すると、災害の傷跡も含めて、これまでの時間が大切にされている場所であると知れたのです。

たとえば、こちらの若木。

もともと、ここには御神木の大黒松が在ったとか。しかし、平成三十年七月に遭った嵐による風によって、御神木は横倒しになり、永い眠りに就いてしまったのです。

また、そのとき、大黒松の大きく太い幹は、奇跡のように、殿舎だけでなく、近くの狛犬さえ、何も誰も傷つけることなく倒れたそうです。

そうして、その後、孫生えの幼木を同じ地に養生することになり、それが画像の若木なのです。

こういったしんどい歴史を、きちんと後世に伝えていくことはとても大切なことだと思います。また、こうして生命をつないでいくことで「言葉」だけではなく、実際にこの若木に触れた人の感覚へ、その時間を直に刻むことができますから、それもすてきなことだと思うのです。

そういったことをさりげなくしていらっしゃることが、この境内をより温かみのある空間にしているのだろうなと想像したりしていました。

■ところで、信長公とのつながりは?

とのに教えていただいて伺った今宮神社でしたが、織田信長公とつながりってあるのか…?と思っていました。「阿ぶり餅」…は江戸時代以降のものだしなぁと、事前に下調べをすることのない私は、ここに来るまで「はて…(・・?」と、アタマのなかに疑問符だけがあったのです。

駄菓子菓子。

行って初めて知ったのですが、今宮神社のなかには「織田稲荷社」があります。その御祭神が織田信長公なのです。……えぇ、めっちゃつながっていましたとさ(笑)

・ ・ ・

今宮神社境内には、ひっそりと「紫野稲荷社」があります。

その鳥居をくぐり、奥まで行ったところに鎮座なさっているのが「織田稲荷社」です。

向かって右側が「織田稲荷社」です

後からいろいろググってみると。

本能寺の変後、炎のなかに消えた信長公やその家臣のみなさまは、清玉上人により阿弥陀寺に埋葬されました。が、その後、豊臣秀吉公の都市改造計画により、阿弥陀寺は移転を余儀なくされるのです。

その阿弥陀寺の跡地に建てられたのが「織田稲荷社」でした。その後、諸々あって、昭和62(1987)年に今宮神社境内の現在地に遷されたとのこと。

現在、境内のなかに看板などもありませんから、この「織田稲荷社」は知らないと見過ごしてしまいます。

実は、私も最初はこのことを知らず見逃していました。ですが、一度今宮神社を出て、そのあたりを超歩き回り、疲れて休憩していたときに、たまたまTwitterか何かでそのことを知り、慌てて再度今宮さんへ戻ったのでした。

それくらい、ひっそりといらっしゃる「織田稲荷社」。それでも、信長公の忌日にちゃんと御祭神である信長公にお参りできて、とてもうれしかったです。

■まとめにかえて―偶然、一条天皇にも

上にも書いたように、私は基本的に事前に下調べをしません。それは、ものぐさな性格だから、というのが理由の殆どですが、何も知らない状態で空気を楽しみたいということもあります。

そのため、この今宮神社に行くこと自体は決めていましたが、この神社がどのような由来を持っているかを知らないまま、参拝したのです。

一度目に、今宮神社を出たとき、門の外でこんな立札を見付けました。

下の画像の、二つ目の段落の文章を引用します。

疫病鎮めのため一条天皇は、正暦五年(九九四)に疫神をひとたび船岡の上へと奉安して御霊会を修せられ、長保三年(一〇〇一)には新たに三神を祀る神殿を現社地に造営して、再び御霊会を営まれた。今宮の名は、この新しい宮に由来する。

そうなんです。

ここは、一条天皇にも関わりのある神社だったのです。しかも、994年の疫病って……道兼さまたちの命を奪う前兆が、市井に蔓延していた時期のお話です。

これを読んだ瞬間、「うわぁ…」ってマジで声が出ました。

いろいろなことは細く、でも、確実につながっていて。その時間の途方もなさに、立て札を読んだ私は、いきなり圧倒されたのです。

との―信長さまがおっしゃらなければ、きっと来なかった場所。信長公の忌日に、最愛の推しさまである信長さまの言葉にしたがって来た場所で、歴史の海にざぶんと飛び込めたこと。ほんとうに幸せでした。

旅はまだまだ続きます。


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んじゃ、また。


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