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【えりた書店】

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元書店員で、雑食系活字中毒者のえりたが「おもしろい!」「好きだ!」と思った本をジャンル問わずにご紹介。売れ筋の本も、ひっそり輝く本もステキポイントをずっしり掴んで書いていきます。… もっと読む
一か月で10本の書評を放り込みます。記事単体では300円ですから、マガジンの方が絶対にお得。また、… もっと詳しく
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記事一覧

■自分のなかにある違和感をスルーしない―『言葉の展望台』

■『言葉の展望台』 ■三木那由他著 ■講談社 ■2022年7月 ■1300円+tax ■『言葉の展望台』について私たちは主に言葉を用いて、他者とコミュニケーションをとります。そのなかで、相手に伝わらなくてもどかしい思いをすることも少なくありません。あるいは、自分の伝えたいと思うことをうまく表現できず、のたうち回ることも多々あります。 また、日々さまざまな情報を目にするなかで感じる違和感があります。 なぜこの人はこんな風に言うのだろう。 あの言葉はいったい何を伝えようとし

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■歴史は勝者が描く―『藤原公任 天下無双の歌人』

2024年の大河ドラマ『光る君へ』。 1月7日に初回放送も始まり、私たちの期待以上の物語が展開されています。それを繰り返し見ながら、来週への期待に胸を膨らませていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。 そのなかで「藤原道隆公」をガチ推ししている私。放送開始前、井浦新さんが演じられる道隆公のお写真を見て、パトラッシュと一緒に天に召される勢いで沸き立っておりました。 が、実は、それを上回る高揚感をくださったお写真があったのです。それがこちら。 町田啓太さん演じる「藤原公任

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■1000年前のラグジュアリーを最新の研究から学ぶ―『紫式部と王朝文化のモノを読み解く』

大河ドラマ『光る君へ』は平安時代中期の物語です。年代で言えば、西暦1000年前後。今から約1000年前の時間を舞台にしています。 もちろん、同じく「日本」という国で暮らしていますから、1000年前と言えど、共感できるところ、身近に感じるところもたくさんあると思います。たとえば、春の桜を愛でる気持ち、あるいは、新年を迎える新鮮さ。そういったものは今も昔も変わりません。 ですが、やはり1000年の時間の隔たりは大きいと感じるところもあるのです。それは、衣食住など文化の具体的な

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■歴史上の人物の日常を垣間見る―藤原道長『御堂関白記』について

今年の大河ドラマ『光る君へ』は、『源氏物語』の作者である紫式部が主人公です。彼女は平安中期、今からちょうど1000年ほど前の時代に生きていまいた。 その時期、最も大きな権勢を誇っていたのは藤原道長です。彼は、四人の娘を天皇の后として入内させ、彼女たちの生んだ皇子たちの外祖父として長く政権を維持しました。現代の教科書で言うところの「摂関政治」ですね。 私たちは学生時分に日本史でこれらのことを学びます。ですが、これ以上のことは知らないんですよね、実は。 紫式部の本名とか(と

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■400年の歴史を支え続けた32人の天皇たち―『平安時代天皇列伝 桓武天皇から安徳天皇まで』

今年の大河ドラマ『光る君へ』は、平安時代中期の摂関政治が全力で領域展開していた時期を舞台としています。 実は、ワタクシ、某国立大学の大学院博士課程後期課程に在籍していた時分に『大鏡』という歴史物語の研究をしていました。 『大鏡』は平安時代後期(院政期)に成立した作品で、藤原道長の栄華の在り様を余すところなく描き出すことを至上命令としています。 『大鏡』については、こちらの記事にくわしく書いていますので、よろしければご参照ください。 さて、その『大鏡』は、文徳天皇から後

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■『紫式部日記』を読むならここから①―『紫式部は今日も憂鬱 令和言葉で読む『紫式部日記』』

来年の大河ドラマは平安時代中期、摂関政治が最盛期を迎えた時代を舞台とする『光る君へ』。主人公は、吉高由里子さん演じる紫式部です。 紫式部が著したもので最も有名なのは『源氏物語』です。しかし、彼女が残した書物はほかにもあります。それが『紫式部日記』『紫式部集』です。 『紫式部日記』は、紫式部の仕えた中宮彰子が敦成親王を出産したとき(寛弘五年)の記録を中心に、中宮に仕える女房たちについてや仕事における感懐などを、寛弘七(1010)年にまとめたものです。 この『紫式部日記』が

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■土は地球の特産品―『大地の五億年』

土と砂は違うことは、理解していました。「これは土。あれは砂」。見てすぐに分別することはできるのです。それなのに、それぞれを言葉で説明することはできない。不思議ですよね。 そんな、疑問を持っていることすら忘れてしまうほど、身近にある「土」について、五億年の歴史を紐解きながら、縦横無尽に解き明かしたのが、今日ご紹介する藤井一至『大地の五億年』(ヤマケイ文庫)です。 ■土は地球の特産品

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■春の桜を愛でる気持ちはどこからやってきたのか―『100分de名著 古今和歌集』

国語の記事を書くようになって、改めて感じたことがあります。それは「義務教育で教えられる内容の濃さ」です。 たとえば。 今回話題に取り上げる『古今和歌集』。かなり多くの人が、これが平安時代の和歌集であることを知っています。また、 『古今和歌集』に収められている二首です。そのどちらの歌にせよ、歌そのものや歌の意味するところを、多くの人が何となくは知っています。 それって、とてもすばらしいことだと思うのです。 この二つの歌も『古今和歌集』も、どちらもおそらく、教科書に載っ

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■「あした、なに着て生きていく?」―『私、誰の人生もうらやましくないわ。』

先日、TwitterのTLをぼんやり眺めていたら、こんなtweetが流れてきました。 広告なのに、字だけで成立? しかも、タイトルがすてき過ぎ‼ 絶対に面白くないわけないよね‼と思い、一気にポチりしたのです。 ■『私、誰の人生もうらやましくないわ。』について■児島令子著 ■パイインターナショナル ■2022年12月 ■1400円+tax この本は、児島令子さんが「これまで書いてきたコピーを集めたもの」。それらが「広告から離れて、商品から離れて、時代背景からも離れて、ここ

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■「かなしい」を「かなしい」と言うだだけでは足りなくて―『百人一首という感情』

私は、人生の半分以上を受験国語のプロとして過ごしています。また、20代の頃は大学院で平安時代の物語の研究もやっていました。が、そのなかで驚くほど苦手にしていたものがあります。それが「和歌」です。 これまでずっと「和歌」の面白さが理解できず。学部生時代も授業中にずっと『源氏物語』を読んでいるような学生でしたが、和歌が出てくるとフツーに飛ばして読んでいました(そして、師匠に怒られていました)。 あるいは、高校時代。「百人一首を定期テストの範囲にするから、1~50まで暗記して自

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■資本主義が思考を縛る世界をどう変えていくべきか―『人新世の「資本論」』

表紙に著者さんの写真がドデンとある新書が苦手です。 もちろん、そういった本が、著者さんの「顔」がある程度以上に売り上げに貢献するほど、影響する力の大きい人が書いたものだと理解はしています。その証拠に、そういった本は大概、書店で面陳されています。 でも、それを見かけるたびに、何とはなしに威圧されてるような気持ちになってしまうんです。で、内容云々の前に、手に取るのを諦めてしまう、と。 実は、今回ご紹介する『人新世の「資本論」』もそれが理由で読むのを諦めていました。 確たる

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■言葉一つで無限に広がる読書体験を―『100分de名著 紫式部 源氏物語』

来年の大河ドラマ『光る君へ』は摂関政治最盛期の平安時代中期を生きた紫式部を主人公とする物語です。 「紫式部」と言って、すぐに思い浮かぶのは『源氏物語』ですよね。これを機会に『源氏物語』を読もうと意気込んでいるかたも多いのではないでしょうか。 でも、『源氏物語』って、ただでさえ五十四帖もある、長大な物語です。しかも初っ端から と、全力で古文。 私たちが高校で習う古語文法は、このあたりの時代を基にしています。ですから、係り結びだの、敬語だの、動詞の活用だの、定期テストで苦

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■自分の言葉に自分で責任を持つということ―『いつもの言葉を哲学する』

noteやTwitterで言葉を綴ったり お友だちと話をしていたりするとき 自分の書き癖、口癖に 辟易することがあります。 伝えたい内容自体は異なるのに なぜか用いる言葉が同じ。 そりゃ、毎回自覚的に考え尽くす!では 疲れ果ててしまいますが(笑) けれど、伝えるための言葉を ぞんざいにしてしまっては 内容も色褪せてしまうような気もするのです。 でも、それを どうしたらいいのかわからない。 という気持ちに指針を与えてくれたのが こちらの本です。 ■『いつもの言葉を哲学す

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■「史実」と「説話」の間にあるものに目を向ける―『敗者たちの平安王朝【皇位継承の闇】』

来年の大河ドラマ『光る君へ』は、摂関政治が最盛期を迎えた平安時代中期が舞台です。初回放送日も決まり、SNS界隈でも少しずつ盛り上がりを見せています。 しかし、「平安時代」の文化や風習、歴史に馴染みのない方も少なくないでしょう。私自身、院生の頃はそのあたりの時代を専門に研究していましたが、知識そのものはそこで止まってしまっています。同じように、学生時代に習った内容が何となく記憶に残っている(気がする)、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そのあたりを踏まえ、現在、

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