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【えりた書店】

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元書店員で、雑食系活字中毒者のえりたが「おもしろい!」「好きだ!」と思った本をジャンル問わずにご紹介。売れ筋の本も、ひっそり輝く本もステキポイントをずっしり掴んで書いていきます。…
一か月で10本の書評を放り込みます。記事単体では300円ですから、マガジンの方が絶対にお得。また、…
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記事一覧

■「ただそこにいる」ことのたいせつさを―姫乃たま『永遠なるものたち』

色覚についての本を読み 色覚が人それぞれであると知ったとき 強烈な孤独感に襲われました。 隣りにいるこの人と まったく同じものを見ることはできない。 そして、その人が見ているものを トレースのように正確に知ることは 絶対にできない。 もちろん、感じ方は人それぞれで まったく同じことはない、なんて 当たり前のこととして 何の違和感もなく理解していていました。 それでも。 色覚について知ったとき感じた 強烈な孤独感は 私を奈落の底に落としたのでした。 それからずいぶん時間

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■原体験がもろもろと顔を出す―『深夜、生命線をそっと足す』

学生時代に、友人と ミュージカルを観に行きました。 とても感動的で素敵な物語でした。 終幕後、ふと隣に座る友人を見ると ものっそいダダ泣き状態。 それくらい深く感動したのだなと ぼんやり思って泣き止むのを待ってると 彼女が一言、 「なんで泣いてないの? あんた、人間じゃない!」 と言い放ったのです。 泣いていないというだけで、 まさかの種から否定(笑) あまりにも根本からの否定過ぎて 反論も思いつきませんでしたとさ。 とまぁ、学生時代 わりとざっくりめに刻まれた傷が 私

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【読書note】あなたの「光る君」はだれですか―紫式部『源氏物語』

えりたです。 今日は、大河ドラマ『光る君へ』に関わる本のご紹介です。 以前、こちらの記事を更新しました。 こちらは、長い間『源氏物語』をはじめとした、平安時代の文学を研究していらっしゃる三田村雅子先生による『源氏物語』の入門書です。「100 de 名著」シリーズですから、書店で手に入れやすいですし、また、お値段もお手頃。なので、私にとっては、心からのおすすめ本♡ これを読むと、けっこう本気で「うわぁ…『源氏物語』読みたい…‼‼」ってなるですよ。しかも、大河ドラマ『光る君

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【読書記録】椎名誠『続 失踪願望。 さらば友よ編』―日常を綴ること。日々を愛おしむこと。

えりたです。 去年までは、本を読むのに「冊数」にこだわっていました。とにかくたくさん読みたい。だから、選ぶ本も手軽でささっと読めるものが主体になっていたのです。 それが今年に入ってから、なぜか、そういったざっくりとした集中力で読める本たちでは満足できなくなっていたのです。理由はいろいろありましょう。 たとえば、そういった本の文法にアタマが慣れきってしまって、読んでるときの感情の振れ幅が小さくなったこと。また、ありがたいことに、仕事が昨年よりも忙しく、手軽に一冊の本をざっ

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■自分のなかにある違和感をスルーしない―『言葉の展望台』

■『言葉の展望台』 ■三木那由他著 ■講談社 ■2022年7月 ■1300円+tax ■『言葉の展望台』について私たちは主に言葉を用いて、他者とコミュニケーションをとります。そのなかで、相手に伝わらなくてもどかしい思いをすることも少なくありません。あるいは、自分の伝えたいと思うことをうまく表現できず、のたうち回ることも多々あります。 また、日々さまざまな情報を目にするなかで感じる違和感があります。 なぜこの人はこんな風に言うのだろう。 あの言葉はいったい何を伝えようとし

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■歴史は勝者が描く―『藤原公任 天下無双の歌人』

2024年の大河ドラマ『光る君へ』。 1月7日に初回放送も始まり、私たちの期待以上の物語が展開されています。それを繰り返し見ながら、来週への期待に胸を膨らませていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。 そのなかで「藤原道隆公」をガチ推ししている私。放送開始前、井浦新さんが演じられる道隆公のお写真を見て、パトラッシュと一緒に天に召される勢いで沸き立っておりました。 が、実は、それを上回る高揚感をくださったお写真があったのです。それがこちら。 町田啓太さん演じる「藤原公任

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■1000年前のラグジュアリーを最新の研究から学ぶ―『紫式部と王朝文化のモノを読み解く』

大河ドラマ『光る君へ』は平安時代中期の物語です。年代で言えば、西暦1000年前後。今から約1000年前の時間を舞台にしています。 もちろん、同じく「日本」という国で暮らしていますから、1000年前と言えど、共感できるところ、身近に感じるところもたくさんあると思います。たとえば、春の桜を愛でる気持ち、あるいは、新年を迎える新鮮さ。そういったものは今も昔も変わりません。 ですが、やはり1000年の時間の隔たりは大きいと感じるところもあるのです。それは、衣食住など文化の具体的な

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■歴史上の人物の日常を垣間見る―藤原道長『御堂関白記』について

今年の大河ドラマ『光る君へ』は、『源氏物語』の作者である紫式部が主人公です。彼女は平安中期、今からちょうど1000年ほど前の時代に生きていまいた。 その時期、最も大きな権勢を誇っていたのは藤原道長です。彼は、四人の娘を天皇の后として入内させ、彼女たちの生んだ皇子たちの外祖父として長く政権を維持しました。現代の教科書で言うところの「摂関政治」ですね。 私たちは学生時分に日本史でこれらのことを学びます。ですが、これ以上のことは知らないんですよね、実は。 紫式部の本名とか(と

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■400年の歴史を支え続けた32人の天皇たち―『平安時代天皇列伝 桓武天皇から安徳天皇まで』

今年の大河ドラマ『光る君へ』は、平安時代中期の摂関政治が全力で領域展開していた時期を舞台としています。 実は、ワタクシ、某国立大学の大学院博士課程後期課程に在籍していた時分に『大鏡』という歴史物語の研究をしていました。 『大鏡』は平安時代後期(院政期)に成立した作品で、藤原道長の栄華の在り様を余すところなく描き出すことを至上命令としています。 『大鏡』については、こちらの記事にくわしく書いていますので、よろしければご参照ください。 さて、その『大鏡』は、文徳天皇から後

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■『紫式部日記』を読むならここから①―『紫式部は今日も憂鬱 令和言葉で読む『紫式部日記』』

来年の大河ドラマは平安時代中期、摂関政治が最盛期を迎えた時代を舞台とする『光る君へ』。主人公は、吉高由里子さん演じる紫式部です。 紫式部が著したもので最も有名なのは『源氏物語』です。しかし、彼女が残した書物はほかにもあります。それが『紫式部日記』『紫式部集』です。 『紫式部日記』は、紫式部の仕えた中宮彰子が敦成親王を出産したとき(寛弘五年)の記録を中心に、中宮に仕える女房たちについてや仕事における感懐などを、寛弘七(1010)年にまとめたものです。 この『紫式部日記』が

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■土は地球の特産品―『大地の五億年』

土と砂は違うことは、理解していました。「これは土。あれは砂」。見てすぐに分別することはできるのです。それなのに、それぞれを言葉で説明することはできない。不思議ですよね。 そんな、疑問を持っていることすら忘れてしまうほど、身近にある「土」について、五億年の歴史を紐解きながら、縦横無尽に解き明かしたのが、今日ご紹介する藤井一至『大地の五億年』(ヤマケイ文庫)です。 ■土は地球の特産品

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■春の桜を愛でる気持ちはどこからやってきたのか―『100分de名著 古今和歌集』

国語の記事を書くようになって、改めて感じたことがあります。それは「義務教育で教えられる内容の濃さ」です。 たとえば。 今回話題に取り上げる『古今和歌集』。かなり多くの人が、これが平安時代の和歌集であることを知っています。また、 『古今和歌集』に収められている二首です。そのどちらの歌にせよ、歌そのものや歌の意味するところを、多くの人が何となくは知っています。 それって、とてもすばらしいことだと思うのです。 この二つの歌も『古今和歌集』も、どちらもおそらく、教科書に載っ

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■「あした、なに着て生きていく?」―『私、誰の人生もうらやましくないわ。』

先日、TwitterのTLをぼんやり眺めていたら、こんなtweetが流れてきました。 広告なのに、字だけで成立? しかも、タイトルがすてき過ぎ‼ 絶対に面白くないわけないよね‼と思い、一気にポチりしたのです。 ■『私、誰の人生もうらやましくないわ。』について■児島令子著 ■パイインターナショナル ■2022年12月 ■1400円+tax この本は、児島令子さんが「これまで書いてきたコピーを集めたもの」。それらが「広告から離れて、商品から離れて、時代背景からも離れて、ここ

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■「かなしい」を「かなしい」と言うだだけでは足りなくて―『百人一首という感情』

私は、人生の半分以上を受験国語のプロとして過ごしています。また、20代の頃は大学院で平安時代の物語の研究もやっていました。が、そのなかで驚くほど苦手にしていたものがあります。それが「和歌」です。 これまでずっと「和歌」の面白さが理解できず。学部生時代も授業中にずっと『源氏物語』を読んでいるような学生でしたが、和歌が出てくるとフツーに飛ばして読んでいました(そして、師匠に怒られていました)。 あるいは、高校時代。「百人一首を定期テストの範囲にするから、1~50まで暗記して自

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