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■信長公忌に巡る旅①―まずは本能寺へ

天正10年(1582年)6月2日未明、明智光秀さまの軍勢に急襲された織田信長さまは多勢に無勢、炎のなかに姿を消されます。世に言う「本能寺の変」です。

今年の6月2日はちょうど日曜日でした。私は、いろいろあって気持ちが少し落ち込んでいたこともあり、信長さまの忌日京都で信長さまをめぐる旅することにしたのです。

その日はいろいろなお寺や神社―本能寺、今宮神社、大徳寺、建勲神社、本能寺跡―をめぐり、参拝してきました。今日から何週かに渡り、そのときのお話を書いていきます。

第1回めの今日は、本能寺のお話です。


■そうだ。本能寺、行こう。

それは、一つのつぶやきがきっかけでした。
Twitter(現・X)のTLをぼんやり眺めていたとき、こんなつぶやきが流れてきたのです。

それは、信長公忌である6月2日に、この日限定の御朱印が出るとのお知らせでした。

織田木瓜の御朱印……‼ また、新しい御朱印帳も頒布されるとのこと。信長さまに関しては、コレクター気質を発揮することはほとんどないのですが、このお知らせに触れたとき、私のなかに、何となくピン! と来るモノがあったのです。

そういうときは迷わず行動するのが良いと思い、スケジュールを確認すると、その日はちょうど何の予定も入っていません。これは行くしかないでしょうと決め、いそいそと当日を待つことにしたのです。

■そうして、6月2日当日

高揚した人たちの集まる空間が苦手な私は、なるべく早めに御朱印をいただこうと、朝早く名古屋を出て、新幹線で京都へ向かいました。

そうして、そのまま地下鉄に乗り、烏丸御池駅へ。バスがあまり得意ではないこともあり、地下鉄での最寄り駅烏丸御池駅から歩くことにしたのです。(ほんとうの最寄り駅は、地下鉄東西線の京都市役所駅だったりしますが/笑)

出口近くの階段から外を見ると、傘を差している人がいました。そのため、いそいそと折りたたみ傘を用意して外に出ようとしたのです。が、その瞬間に雨がすんっと止んで。思わず、無言で空を見上げてしまったのもよい思い出です(笑)

そうして歩き始めたとき、ふと目に入ったのがこちら。

『伊勢物語』の主人公のモデル、あるいは、『源氏物語』の主人公光源氏のモデルともされる、在原業平邸跡のしるしです。今日は戦国時代な気分だぞっと思って歩いていたのに、唐突に現われる平安時代(笑)

ほんとうに油断していたので、めちゃくちゃ驚きました。でも、こういった史跡や、邸の跡がまるでRPGのようにしれっと現れるのが京都の醍醐味でもあるなぁとじわっとした感動も湧いてきて、お写真を一枚撮ったのでした。

■無事に本能寺に着きました(not 迷子)

そんなふうに風景も楽しみながら、約10分ほど歩くと「法華宗大本山 本能寺」に辿り着きました。

この総門は国の登録有形文化財だそうです。

実は、信長さまの家臣になるまで存じ上げなかったのですが、本能寺って法華宗(日蓮宗)のお寺なんですね。初めて参ったとき、門の前に日蓮上人の像がどんっとあるのを見て、すごく驚いたことを覚えています。

現在の本能寺は商店街に入ってすぐのところにあります。そのため、門の前は人通りもあり、にぎやかにざわめく雰囲気があります。が、この門をくぐると、やはりお寺特有の静けさや荘厳な空気がめぐっていることが感じられるのです。

そうして、まずはお参りをしようと本堂をまっすぐに目指しました。

その途中には、テントが設営されており、お坊さんが待機されていました。いつもはないものでしたから、やはり「信長公忌」は特別な日なのだなという思いもひとしお。あとで伺うことにして、兎にも角にも本堂を目指しました。

■既に待機中でした

そうして、本堂に辿り着き、お参りしました。

まだ時間が早かったこともあり(午前9時半ごろでした)、人少なでしたので、存分に手を合わせることができました。そうして、そろりそろりと本堂の中へ。

すると、黒いお洋服(わりとゴスロリ系な感じ?)を着た女性たちがずずんっと席に座っておられまして。

ナニゴト? と思ったのですが、どうやらその日14時から行われる信長公忌法要のための席取りの方々だと予想され。いつもとは違う、ぴりぴりした硬質な空気にちょっとだけ「ひえっ」となったです。

でも、せっかくここまで来たのだしと思い直し、肝を据え、日蓮上人の像に向かって、無心に参拝させていただいたのでした。

リーフレットによると、本堂内にある日蓮上人の像は本能寺の変よりも前からあるものだそうです。ですから、信長公も手を合わせた可能性が…と思うと、ちょっとドキワクしちゃいますよね。

■石塔で思いを馳せる

さて、本堂を出てから、さらに奥へ進むと信長公の供養塔があります。この供養塔は、信長公の三男信孝さまの命によって建てられたものです。

事変の後、信長公ご自身の行方はわからないままでした(一説には、阿弥陀寺へ運ばれたとも)。ですから、この供養塔では、石塔の下に信長公ご使用の刀が眠っているとされています。

このときも、まだ早い時間でしたので人がほとんどいらっしゃらず、存分にお参りすることが出来ました。有難い限りです。

また、この石塔の隣には本能寺の変で信長公と共に果てられた家臣の方々の供養塔も建てられています。

考えてみれば。本能寺の変は信長公のお命を狙ったものですから、もっとも注目されるのは公の最期です。

ですが、少数ながらも公に付き従い、最後の最期まで戦い抜かれた方もいらっしゃったわけで……最後まで主君に付いて行かれた方々の思いもさまざまなに想像し、頭を垂れたのでした。

ちなみな話。

この説明の札に「天正事変」という語がありました。本能寺の変は天正10年に起きていますし、「天正」という年号自体、信長公の発案で名付けられたものですから、実はその言い方の方が歴史的には調和するのかもなぁと思ったりもしたのでした。

■ホンモノの迫力に圧倒される

さて、本堂と供養塔にお参りしたあと、わりと大きめの目的であった「御朱印帳」を購入し、そこへしっかりと忌日限定の「御朱印」を書いていただきました。

えぇ、御朱印は4種類あったのですが、せっかくここまで来たのだからと全種類をいただくことに。この日は、たくさんの方が御朱印をお求めになることを想定して、いつもとは異なる場所でお坊さまが何人も待機され、一つひとつ丁寧にお書きくださっていました。

私はちょうどよい時間に行ったようで、御朱印をいただいてから出口へ向かうと、入口あたりに結構たくさんの人が集まりかけていて。「ぎりぎりセーフ…」と胸をなでおろしながら、外へ出たのでした。

そうして、次に向かったのは「大寶殿」です。

以前参拝したときにも入っていますし、入館料も別に必要なのですが、せっかく来たのだからと思い、再度見学することにしました。

中の写真は撮れませんが、ここには日蓮宗に関わるものや信長公にまつわるものがたくさん展示されています。

たとえば、信長公が本能寺に寄進したとされる「麒麟の香炉」。あるいは、信長公が所持していたという「建盞天目茶碗」。また、復元ではありますが、信長公が最後に使ったとされる刀剣である「薬研藤四郎」や「実休光忠」にも会えます。

ホンモノの迫力って、やはり言葉には尽くせぬものがあって。ガラス越しであっても、ズンっと重たく、腹にぶっ刺さってくる感触があります。それはもう、映像や画像では到底得られない感覚で……実物を見るからこその空気感は呼吸さえ忘れそうなほど濃厚なものです。

また、こういったものたちを間近に見ると、「織田信長」という人は物語のなかに居るのではなく、現実に生きていらっしゃったのだなとじわじわ実感できて、背筋がぴりりとします。

さらに、展示品のなかには信長公直筆の禁制朱印状や、本能寺にしかないおひげのない信長公の絵図などもあり、ゆっくり見て回るとそれだけで胸とお腹がいっぱいになる空間です。

三足の蛙さんの香炉

もし、京都へいらっしゃる機会があれば、ぜひ本能寺へ行ってみてくださいね。すっごくおすすめです。

■そんなこんなで

6月2日という、年に一度の特別な日に本能寺へお参りすることができました。何がと明確なものがあるわけではないのですが、ほんとうに行って良かったです。

上にも書いたように、私はさほど熱心なコレクターではないですし、どちらかというと「記念日」といったものにも執着しない方ではあります。

それでも、こういった特別な日に自らの意思で特別な場所へ行くという経験はやはり気持ちのなかに一つ芯を付け加えられるようにも感じますし、何より、400年前の時間や空間に思いを馳せることでしか得られないモノは確実にあるように思うのです。

未だにそれを言葉にすることはできずにいます。が、それでも今回の旅でそれを感じとることができて、ほんとうによかったと思うのです。

・ ・ ・

今回は、我が最愛の推しさま、名古屋おもてなし武将隊の織田信長さまにも「行ってきます」とお伝えしてからの旅でした。「おう、行ってこい」と送り出され、そんなるんるん気分もありながら。まだまだこの旅は続きます。

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