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ガタリ『カオスモーズ』についてのメモ①
先に言っておくが本の内容には全然触れない。
私の手元にある原著は、最近出たlignes版だ。旧版はgaliléeから出ていて、邦訳もこれに拠る。で、邦訳にある強調(宇宙、存在、シニフィアンなどの単語)はおそらくgalilée版からのものだろう(原文はイタリック体か? 手元にないので分からない)。lignes版では強調はなさそう。
もう一つ、「美の新しいパラダイム」の章でマラルメの「骰子一擲」
近藤和敬『人類史の哲学』の雑な感想①
この書物の目的を一言で言えば、「今とは別の仕方で思考するために」とでもなろうか。別の仕方で、とはわれわれが生きる近代資本制社会の価値とは別の価値を見出す、ということだ。
著者の前著は『ドゥルーズとガタリ(以下D&G)の『哲学とは何か』を精読する』であった。D&Gは同書において、古代ギリシア、近代資本制社会という哲学にとっての2つの歴史的契機に続く第3の来るべき契機に呼応する、哲学の「未来形式」
映画『窓ぎわのトットちゃん』感想
原作は未読のため、今回の映画のみの感想となる。
まずはキャラクターデザイン。最初子どもも唇にはっきり色がついていて違和感があったのだが、観ているうちに気にならなくなった。また笑い顔・泣き顔が崩れて不細工なのは、よりリアルではある(製作にPRODUCTION I.Gが入っていることで思い出したが、押井守『イノセンス』の終盤出てくるプラント船の少女の叫ぶ顔もそんな感じだった)。これらの顔についても
死後の生 永遠、残るもの
「死後の生」という言葉は多義的だ。それはある人間が死んだ後、その当人がどうなるのか(=来世)と、残された人々にとってその人の残したものがどうなるのか(=現世)を同時に意味しうるのだから。
アーレント『人間の条件』の「永遠と不死」の章は、この辺りのことを立ち入って説明しているように思える。
松山高吉についてのメモ①
松山高吉は明治日本へのキリスト教導入において重要な人物である。彼についての詳細な情報は、岡田勇督「松山高吉―その生涯と資料調査の現状」を参照されたい。
で、私が松山の業績を調べる上で重要だと思うことを簡単に述べる。
① 聖書の日本語訳での貢献
これについては例えば、岩波文庫の『文語訳新訳聖書』の解説に述べられている。松山は翻訳において指針を示し、それは訳に反映された(769~70頁)。
遠藤周作『沈黙』雑感③ 東洋と西洋、母性と父性
『沈黙』は文学作品であるから、大きなテーマだけではなくディティールにも関心を払った方がいいのだが(例えば切支丹の唄とか方言とか長崎の様子とか)、私はどうしても抽象的なテーマに興味が向かってしまう。今回もまたそんな話。
『沈黙』には大きな対立線が走っている。それがタイトルに挙げた東洋と西洋、母性と父性である。この作品に出てくる東洋人と西洋人には対立と、そして奇妙な和合が見られる。
ちょっと整
映画感想:プリキュア+岡田麿里新作 それと、『君たちはどう生きるか』
どちらも公開初日に観てきた。以下、ネタバレ含むので未見の方は注意。
①『プリキュア オールスターズF』
変身シーンを大画面で観れるだけでも眼福なのに、壮大なストーリーで年甲斐もなく興奮してしまった。心の中のミラクルライトで応援したのは言うまでもない。
ところでタイトルのFとは何か。パンフを見る限り、テーマ曲の歌詞にあるFellows、Friends、Fantasticの頭文字である。だがFa
映画『銀河鉄道の父』感想
お盆中に観たので。原作は未読。
父政次郎と若い賢治の対話。「質屋は農民を搾取している」と学校で(あるいは図書室で)学んだ知識でまくしたてる賢治と、それに対して地に足の着いた返答をする政次郎。同じような光景は日本のそこここで、時代を越えてなされてきたのだろう(同時代では、中野重治「村の家」が思い浮かぶ)。このシーンは、その後の賢治の行く末を暗示していると見るべきか。商売に向かぬ息子を最後には受
華奢な身体の(性的)魅力について
…おもにエロ漫画から考察したいと思っている。思い浮かぶ作品としては、
宮居史伎のLO掲載作品
三巷文「スペアキー」(『こんなこと』所収)
シイナ『ノラネコ少女との暮らしかた』
あたりか。
極私的映画について① 私の映像体験遍歴(~学生時代)
私はドゥルーズ『シネマ』の読書会に顔を出してはいるのだが、いかんせん『シネマ』は難物だ(福尾さんや築地さんの『シネマ』入門書ですらそう感じられる)。という訳で、現実逃避として私の映画体験を振り返ってみようと思う。
恐らく私が初めて観た映画は、父がレンタルビデオ屋で借りてきたドラえもんの大長編とかの子供向けアニメだったのだろう。はっきりとは思い出せない。
映画に限定せず映像体験として強烈に覚
カフカの絵葉書 ラファエル・キルヒナー
『ポケットマスターピース01 カフカ』をめくっていたら、魅力的な絵葉書が載っている。
で、この本が底本にしている批判版全集の『書簡集』を手に取る。
写真をよく見ると、「RAPHAEL KIRCHNER」の文字が絵葉書の左上にある。ネットで検索すると、同じ絵葉書が出てきた。どうやらラファエル・キルヒナーの「Greek Virgins」シリーズの一つのようだ。
ところでなぜカフカはこの絵葉
信州 木村素衛の石碑を訪ねて
GW中、長野県に5箇所ある木村素衛の石碑を見て回った(ただし内3箇所は小学校敷地内のため、学校の外を歩くに止めた。事前に連絡しておけば見られたかもしれないが、その余裕がなかった)。
木村素衛(1895~1946)は加賀出身で、西田幾多郎の弟子の教育哲学者。信州の教師達に請われ何度も当地を訪ね、亡くなったのも信州だった(体調の優れぬ状態で講演に行き、そこで悪化させてしまった)。今も長野県の