極私的映画について① 私の映像体験遍歴(~学生時代)

 私はドゥルーズ『シネマ』の読書会に顔を出してはいるのだが、いかんせん『シネマ』は難物だ(福尾さんや築地さんの『シネマ』入門書ですらそう感じられる)。という訳で、現実逃避として私の映画体験を振り返ってみようと思う。

 恐らく私が初めて観た映画は、父がレンタルビデオ屋で借りてきたドラえもんの大長編とかの子供向けアニメだったのだろう。はっきりとは思い出せない。
 映画に限定せず映像体験として強烈に覚えているのは、小学生の時に観た『ヒトラーと6人の側近たち』というNHKのドキュメンタリーシリーズだ(どうも私は10歳にも満たない頃に観ていたらしい)。一人で観ていたのだが、ある回の終盤、強制収容所の写真がアップで映されて私は怖くなってTVを消してしまった。その写真は、がりがりに瘦せたユダヤ人の裸の死体が山となって積み重ねられたカラー写真だった(だから全体的に写真は肌色だったはずだ)。高校生になってから観たアラン・レネ『夜と霧』で、作中ユダヤ人の死体がブルドーザーで穴へ放り込まれていくモノクロ映像も衝撃的には感じたものの、どうも『ヒトラーと6人の側近たち』程にはショッキングではなかったようだ、今思い返せば。

 よく語られていることかもしれないが、昔のTV番組は今と比べれば随分と表現が過激だった。と言っても私が分かるのは90年代以降のみだが…。例えば『クイズ世界はSHOW by ショーバイ‼』では「この中のどの女性がヌードモデルか?」というクイズがあって、正解が出た後当人のヌード映像が流れたのであった。女性がコピー機でお尻のコピー取っていたのも同番組だったか? 後、これも同番組だったと記憶するが、少年数人が殺害された事件の紹介で、森の中に遺棄された複数の少年の裸体死体がモザイク加工された上ではあるが映されていた。また映像自体はそこまで過激ではなかったが、子ども心に印象深かった「切り裂きジャック」が紹介されていたのは、『奇跡体験!アンビリバボー』だったか? という訳で、子どもの頃は性表現や猟奇事件の映像によく触れていたのであった。こういった経験がその後の私に何の影響も与えていないとは思われないが、具体的にどんな影響かは分からない。で、TVがその後表現をマイルドにしていったのは、ネットの普及と並行した事態だったろうか(これも言うまでもないことだが、ネット上では昔のTVを越える過激な写真・映像が転がっている)。

 話を映画に戻そう。私は映画館に行くのが1日がかりの冒険になるようなクソ田舎で育ったので、映画に触れるとするとそれはレンタルビデオ屋経由がメインとなる(地元で大画面で映画を観られるのは、たまに市民ホールにジブリ映画とかが巡回してくる時に限られていた)。レンタルビデオ屋も小規模店が2店舗程度のみ、後に某大手が出店して少し改善された(その時はその系列チェーン店で数年働くとは思いもしなかった)。ちなみにこの頃は丁度ビデオからDVDに映像記録媒体が切り替わる過渡期に当たる(新聞のTV欄に記載されていたGコード、覚えてますか?)。つまり学生時代の私には、DVDはとても新しいものに思えたのであった。この某大手も出店当初はアニメに関しては品揃えは良くなく(https://note.com/epinomis33333/n/n5337c12460c8 にも少し書いた)、この店のレンタルにないものでどうしても観たいものは、自分でDVDを買うしかなかった。アニメがサブスクでほとんど観れる今からは考えられない不便さである。とまれ、私のアニメ経験については別途書くだろう。
 より広く映画全般で言えば、まぁこれもありがちなことだろうが、高校時代の私はハリウッド映画をバカにしてヨーロッパやアジア映画をよくレンタルで観ていた。先に挙げた『夜と霧』もそうだし、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『山の郵便配達』(息子が親を背負って川を渡るシーン、今思い出してもぐっとくる)、『運動靴と赤い金魚』(人情映画だけれども頑張り過ぎることによる悲劇という一般的な教訓も引き出せる)、『少女の髪どめ』など。ハリウッドか分からんがアメリカ製映画では『フィオナの海』、『灰の記憶』など(どうも私は子どもの頃からアウシュヴィッツに興味があったのか?)。ハリウッド映画を全く観なかった訳でもない(例えば『めぐりあう時間たち』)。高校生の私は映画の感想をノートにつけていたはずだがそのノートが見つからない。捨てたのか? あれがあればもっと思い出せるのに…。 

 一般的に大学生になれば映画観まくるものなのだろうが(都会に出てきたりして)、何を思ったか私はクソ田舎の大学に進学したせいでむしろ高校時代よりも観る本数が減った。環境に関しては前述のnote参照だが、映画館が近くにないのは当然としてレンタルビデオ屋もショボく、おまけにそこは私の在学中に潰れてしまった。東京へのアクセスはまあまあだったので時々東京に観に行った。印象深いのは、『エドワード・サイード OUT OF PLACE』を観に行った時のこと。当日券の列に並んでいたら知らないおじさんが近寄ってきて「君にあげるよ」と前売券をくれた(今でもなぜ私だったのか分からない)。そのおかげで私は映画だけでなく、サイード夫人や今年亡くなった大江健三郎の話までも聞くことができた(確か何かのパーティに参加した時のことをユーモアたっぷりに話していた。後は「晩年のスタイル」について)。他に下北のミニシアターで『アルナの子どもたち』を観たり。まぁバルト9でフツーに話題作も観ていた(男どもが大好きな『ダークナイト』とか)。後はTVでやってた『戒厳令』を思い出す(冒頭、物乞いの前に現れる北一輝の何とも言えぬ預言者っぽさ)。色々書いたが結局のところ、大学時代最も時間を費やしたのが誕生間もないニコニコ動画であったことに疑問の余地はない(酷い時は1日10時間くらい観てた…)。

とりとめもないので、ひとまずここで擱く。

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