カフカの絵葉書 ラファエル・キルヒナー

 『ポケットマスターピース01 カフカ』をめくっていたら、魅力的な絵葉書が載っている。

『ポケットマスターピース01 カフカ』671頁

 で、この本が底本にしている批判版全集の『書簡集』を手に取る。

Briefe 1900-1912: Band 1 (Franz Kafka, Werke in Einzelbänden in den Fassungen der Handschriften)

 写真をよく見ると、「RAPHAEL KIRCHNER」の文字が絵葉書の左上にある。ネットで検索すると、同じ絵葉書が出てきた。どうやらラファエル・キルヒナーの「Greek Virgins」シリーズの一つのようだ。
 ところでなぜカフカはこの絵葉書を使ったのか? 宛先人はパウル・キッシュ、カフカのギムナジウム時代の同級生である(『ポケットマスターピース01 カフカ』732頁)。私はドイツ語は全く分からないので、全集の方に手がかりがあるかもしれないがお手上げである。単に手元にあった絵葉書を使っただけかもしれない。
 で、このラファエル・キルヒナー、当時は大人気だったようだ。『ゲンロン14』所収の座談会で荒俣宏が言うには「彼はたいへんな大物」(20頁)。とはいえ今はどうか? ほとんど画集すらないようなのだ。同じく『La Vie Parisienne』に描いていたジョルジュ・バルビエなどとはえらい違いだ。どうしてだろう(スマホケースとかはあるようだが)。キルヒナーが主に絵葉書の仕事をしていたことと関係あるのだろうか。
 で、私がこの絵葉書に惹かれたのは、そこに描かれた少女の耽美でやや病的な雰囲気ゆえであった。キルヒナーの他の作品にもあるのだが、特にこの絵が際立っているように私には思える。

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