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鉄道の話

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鉄道(車両・設備)について、マニアックな話を書きます。
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#鉄道

貨物電車第2期 : スーパーレールカーゴの後継を勝手に考える(前編)

貨物電車第2期 : スーパーレールカーゴの後継を勝手に考える(前編)

はじめに従来、わずかな例外こそあれ、貨物列車は機関車が牽引するものでした。

その状況を打ち破ったのがM250系電車、通称スーパーレールカーゴ(SRC)です
佐川急便専用列車として2002年に登場したスーパーレールカーゴは、高速輸送が求められる宅配貨物を機関車牽引列車では実現不可能な最高速度130km/hで輸送する「最速の貨物列車」として活躍を続けてきました。

しかし、登場から20年以上経過した

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EF510形は「EF64形の後継」になりうるか?

EF510形は「EF64形の後継」になりうるか?

2021年3月末、JR貨物は2021年度事業計画において、九州地区にEF510形電気機関車を投入することを発表した。

2021年現在、九州地区ではEF81形、ED76形といった経年が30年〜40年程度の機関車が運用されており、現在日本海縦貫線(大阪〜青森)を中心に活躍するEF510形を新たに増備し、これを置き換えるものと思われる。

また、東海道・山陽本線を中心に長らく活躍を続けてきたEF65形

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イギリス鉄道史家が見た日本の鉄道

イギリス鉄道史家が見た日本の鉄道

O. S. Nockの鉄道本Oswald Stevens Nock(オズワルド・スティーヴンズ・ノック、以後O.S.ノック)(イギリス 1905-1994)という人物は、日本における知名度は皆無に等しい。
しかし、英語圏の鉄道界では名の知られた人物であるらしい。

彼の本職は鉄道信号の技術者であり、そちらでも一定の功績を挙げたようだが、より有名なのは鉄道史の研究者としてである。
彼が執筆した鉄道史

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貨物列車はどのくらい長くできるのか

貨物列車はどのくらい長くできるのか

JRの新幹線・在来線を合わせた中で最も長い列車は、東京〜福岡で走る貨物列車である。
機関車1両が貨車を最大26両牽引し、その長さは約540mに達する。

山陽本線を快走する貨物列車(筆者撮影)

貨物列車の運行にかかるコストのうち、大半が貨車の数に関係のない「固定費」である。
そのため、機関車の性能が許す限り貨車をたくさん牽引したほうが、貨車1両あたりのコストが減って経済的である。
アメリカなどで

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DF200形の後継機関車を予想してみた

DF200形の後継機関車を予想してみた

2021年2月17日の官報に、こんな記事が掲載された。

JR貨物がDF200形ディーゼル機関車の後継機を購入するにあたり、入札の前段階として車両メーカーに参考資料の提供を求める記事である。

DF200形の後継機導入計画について、具体的な情報が公開されたのは恐らく初めてのことである。

DF200形は試作機が1992年に登場してからそろそろ30年となり、JR世代機とはいえ後継の話が出ても確かにお

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蒸気機関車のカタログスペックと実用性について

蒸気機関車のカタログスペックと実用性について

蒸気機関車を評価するための基準として、いろいろな数値が引き合いに出される。

全長は○○m
重量は○○t
出力は○○馬力
最高速度は○○km/h
…などだ。

だが、これらの数値の大小をもって機関車の性能を比較するのは、必ずしも適切であるとはいえない。
これらの数値は、機関車の実際の運用、すなわち、営業列車を牽引するときとはかけ離れた条件で測定されているからである。

最高速度は、客車はまったく連

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現実的に架空蒸気機関車!仮称D53(基本編)

現実的に架空蒸気機関車!仮称D53(基本編)

はじめに前回の記事「巨大蒸気機関車は永遠のロマン」でも言及したが、蒸気機関車は、諸外国との格差が大きい分野である。諸外国の蒸気機関車は、日本のものよりずっと高性能なのだ。

前回の記事はこちら↓

これは蒸気機関車製造当時の日本の工業技術力が低かったことと、日本の鉄道の設備が貧弱であったことが原因である。
設備の質とは、例えば軌間のような、特定の設備で測れるものではない。軌道・駅・操車場などの鉄道

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機関車の性能を考えてみる : DD51(後編)

機関車の性能を考えてみる : DD51(後編)

1987年、日本国有鉄道は民営化され、旅客鉄道会社6社と貨物鉄道会社1社が発足した。

旅客6社では、客車列車を廃止し、電車・ディーゼルカーに置き換えるという国鉄時代の方針が引き継がれたため、ディーゼル機関車に対し積極的な投資をすることはなかった。
客車列車の需要がないことから、それまでディーゼル機関車で行っていた工事列車の牽引や除雪などもディーゼルカーや保線機械(書類上車籍を持ち、鉄道車両として

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機関車の性能を考えてみる : DD51(中編)

機関車の性能を考えてみる : DD51(中編)

この記事は、DD51形に関する記事の第2回である。
前編はこちら

DD51の最近の活躍かつてはどこでも見ることができたDD51形だが、2020年現在、JR旅客会社ではすでに旅客列車での定期運用はなく、JR東とJR西で臨時列車や工事列車の牽引、蒸気機関車の補助などでわずかに運用を残すのみとなっている。
JR貨物所属機も名古屋周辺での運用を残すのみとなり、それも2021年春をもって終了予定である。

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現実的に架空蒸気機関車!仮称D53(改善編)

現実的に架空蒸気機関車!仮称D53(改善編)

以前書いた「D53形」の記事であるが、その後設計に問題があることに気づいたので、「D53基本編」と「D53運用編」の間に挟む記事として、「改善編」を書くことにした。

基本編はこちら↓

致命的な問題私には絵心というものはまったくないのであるが、D53はどんな見た目をしているのだろうかと気になったので、簡単な絵を描いてみた。
すると、数字を見ていただけではわからなかった致命的な問題があることが発覚

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機関車の性能を考えてみる : DD51(前編)

機関車の性能を考えてみる : DD51(前編)

はじめに

これまで私は、鉄道に関する記事を3本投稿している。
これらの記事は、いままで私がnoteに書いた中では一番読まれているシリーズなのだが、鉄道研究は上には上がいて、そのさらに上がいるような業界であるので、同じ土俵で勝負したところで私のような工学素人には太刀打ちできないだろう。
だから私は、高度な技術論ではなく、鉄道の技術的な話題について、あまり詳しくない人にもわかりやすく説明することを目

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現実的に架空蒸気機関車!仮称D53(運用編)

現実的に架空蒸気機関車!仮称D53(運用編)

前回までの基本編・改善編が未読の方はこちら↓

前回までの記事で、架空蒸気機関車「D53」の要目について設定した。今回は実際にD53が製造されていたとしたら、どのような活躍ができたのかを考えていこうと思う。

設定投入路線の選定「鉄道辞典」上巻950ページ添付資料に、1958年時点での線路種別(路線のランク)を示した地図があるので、これを参考に投入路線を決めることとした。
「鉄道辞典」はインターネ

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巨大蒸気機関車は永遠のロマン!どうすればD52を超えられたのか考えてみた

巨大蒸気機関車は永遠のロマン!どうすればD52を超えられたのか考えてみた

はじめに
私は機関車が好きだ。
機関車牽引の旅客列車が日本ではほぼ消滅した現在、機関車の活躍を存分に見られるのは貨物列車だから、貨物列車が好きだ。
重厚な機関車が貨物を満載した貨車を連ねて疾走する姿には、電車や気動車にない迫力がある。
電気機関車もよいが、外からエネルギーの供給を受けず、完全に自分自身の力で走る蒸気機関車とディーゼル機関車はもっと好きだ。

ここ数年、蒸気機関車の構造面に興味を持ち

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