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廣嶋玲子『あやし、おそろし、天獄園 銭天堂番外編』(毎日読書メモ(499))

昨年12月に、銭天堂シリーズ番外編が出ていたのを最近になって知ったので、読んでみた。廣嶋玲子・jyajya『あやし、おそろし、天獄園 銭天堂番外編』(偕成社)。

これまでもことにつけ登場していた、遊園地天獄園のオーナー、怪童が初めて正面に出てきて、これまで会話の中で話題になっただけで実情が語られたことのなかった天獄園の様子がつぶさに語られる。

銭天堂が幸運のお客様を選び出してお店の商品をあがわなわせるように、怪童も、世の中に不満を持っている人を見つけ出し、天獄園のおためしチケットを1枚渡す。おためしチケットは何に使ってもいいが、1枚だけ。アトラクションに一つ乗るか、お店で売っているものを何か買うか。
まぁ銭天堂の商品も、お客さまをとんでもない目に遭わせることがあるけれど、天獄園のアトラクションは最初から悪意しかない感じ。それも、下手をするとというより積極的に闇の世界にその人を引き込もうとする、魔手のような。
閑話休題的に紅子が登場するインテルメッツォを除き、6つのエピソードが語られるが、元の世界に帰ってくるときに異世界のものを連れ帰ってきてしまった人、帰れるポイントで戻れないまま闇に取り込まれてしまった人、取り込まれそうになった瞬間に、現世界の友人の善意のおかげで引き戻してもらえた人、取り込まれてしまった人、自ら現世界に戻れない方向へ方向へと突き進んでしまった人、取り込まれそうになった瞬間に、自分が壊してしまった人形に助け出された人。全敗では救いがなさすぎるからかろうじて2勝4敗にした、というおとしどころ。
紅子との対決が永遠にできなくなってしまったよどみも、天獄園でお菓子屋として鋭意営業中! こわっ!

現在紅子と対決中の六条教授は、人間世界の中で、紅子との対決を画策しているが、天獄園は銭天堂と同じ、異世界への扉の向こうにある世界、という感じで、ぞわぞわ度が、よどみが紅子に対決を挑んでいた時代を思い出させる、超常感。
帰れなかった人々の行く末を思うと泣ける…。勿論銭天堂のお客さまにもそういう人がいたけれど。

人の心の中に巣食っている闇が増幅されているような、えーこんなもの児童書として世に出していいんですか、いや、現実世界はもっと恐ろしいものだってことですか、と震え。
続編はあるのか、あったらあったで悲しいような、そんな番外編だった。

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