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『ふしぎ駄菓子屋銭天堂6』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(350))

廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』シリーズ(jyajya絵、偕成社)6冊目。これまでの巻より心持ち分厚い感じ。ライバルというか敵役のよどみは、第5巻のトラブルで鳥かごのなかに収監されていて、ぱっと見トラブルの種はなさそうなのに、銭天堂の紅子は原因のわからない不調で集中力を欠き、幸運のお客さまにお勧めする駄菓子を間違えてしまったり、カプセルトイを落としてしまって幸運のお客さまでない人に使われてしまったり。
とはいえ、第6巻のお客さまたちは、ちょっと粗忽で、銭天堂で買ってきたものの使い方を誤って新たなトラブルに見舞われたりはしているが、幸運のアイテムへの感謝の念を忘れず、お勧めするアイテムを間違えたお詫びに現われる紅子に、代替品は不要、ときっぱり答えたりしていて頼もしい。
そして、幸運のコインは発行年が指定されているが、幸運のお客さまは必ずその指定された年のその額面のコインを持って銭天堂に来ている、というのをかなり強調するようになっている。何かの伏線?

いつも走るように筋を追って読んでしまうのだが、銭天堂にたどり着いたお客さまが、銭天堂や、置いてある商品に魅了される描写がそれぞれに違ってとてもいい。
「りっぱな看板がかかっていて、軒先にずらりとならんだ駄菓子たちが、きらきらと光をはなっているように見える」
「そこに、小さな駄菓子屋があったのだ。色とりどりの、見たこともないお菓子やおもちゃがならんでいる。それを見ただけで、まるで遊園地に来たみたいに、胸がわくわくどきどきしてきた」
「なんて、なんてきらきらしてて、ふしぎなお菓子たちなんだろう。すてきすぎて、頭がくらくらする。ああ、目が十個くらいほしい。そうしたら、いっぺんにいろいろ見られるのに」
勿論、それぞれのお客さまが心ひかれる商品の名前も独自だし、作者が引き出しをどんどん増やして、紅子の世界を広げて行っているのがわかる。

そして、別に紅子はお客さまが善き存在であることを願って、商品を売っている訳ではない。それは最初の頃のエピソードからそんな感じではあったのだが、この巻の中で紅子はこう言う。
「たしかに、よい効果だとはいえましょう。けれど、うちはけっして、お客さまを幸せにするために商売をしてるわけじゃござんせん。お客様のねがいをかなえるのが、『銭天堂』のモットー。ねがいをとりちがえてしまうなど、あってはならないことなんでござんすよ」
願うことと幸福は違う、という、なんだか哲学的な話になってきた。

巻末で、紅子は「果たし状」を受け取る。誰から? 何を果たそうと? 7巻に続く!

過去の感想:1巻 2巻 3巻 4巻 5巻

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