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『ふしぎ駄菓子屋銭天堂7』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(354))

廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』シリーズ(jyajya絵、偕成社)7冊目。6巻目に続き、鳥かごに閉じ込められたままの、たたりめ堂のよどみから邪悪な駄菓子の素材を委ねられた赤ひげの怪童と勝負をすることになった銭天堂の紅子。たたりめ堂から委託された菓子を銭天堂に並べ、お客さまが紅子が作った菓子より沢山たたりめ堂のお菓子を選んでくれれば怪童の勝ち、という勝負。
もう見るからにたたりめ堂のお菓子が邪悪さを醸し出しているので、まるで紅子がすごくいい人みたいに見えてくる。
6巻で「うちはけっして、お客さまを幸せにするために商売をしてるわけじゃござんせん。お客様のねがいをかなえるのが、『銭天堂』のモットー」と言い放ち、お客さまを幸福にするのが目的ではなく、運試しをしてもらうことそれ自体が目的、と言っていた紅子だが、怪童から公平な勝負を、と言われ、お客さまの願い事を聞いたら、そのソリューションとなりうる商品を、銭天堂から1つ、たたりめ堂から1つ提案すると、もう、どう考えたって、紅子が用意したお菓子を選んだ方があなた幸せになるよ、ってものばかり。

7巻で出てきた商品の中で秀逸だと思ったのは、お菓子ではなく、「ドリームドーム」という大きいおもちゃ。自分の分身みたいな人形をドームの中にセットしてガラス蓋をぴったり被せると、ドームの中で自分の夢をかなえてくれるような世界が構築されていく。セットで売られていた「チヂミントガム」を噛むと、このドームの中に入って夢の世界を体験できる、という趣向。幸運のお客さまはこれまで出てきたお客様同様そそっかしく、あまりきちんと注意書きを認識しないまま商品を用い、痛い目に遭ってしまったけれど、もし本当に本当に幸運のお客様だったら、逆にドリームドームに自分の人生を吸われてしまっていたかも?

かつてたたりめ堂の「餓鬼ニッキ」というあめを、バレーボール部の部員たちに食べさせたら、部員がみんな勝負至上主義になって人間関係がぼろぼろになってしまった部長のゆずかが、銭天堂にたどり着き、解決策となる商品を2つ(銭天堂のを1つ、たたりめ堂のを1つ)提案され迷うが、いや、これ以上の副作用をもたらす商品に頼ってはいけない、と自分の意思で決断し、餓鬼ニッキの毒消しが出来ないか、紅子に相談した最終章が実に爽快。そして、紅子もその決断を支持し、気分良くなった、と語る。「まさか、この『銭天堂』にたどりつきながら、お菓子をえらばぬお客さまがいるとは。ああ、ほんとに、人間とはおもしろいものでござんすねぇ。これだから、駄菓子屋はやめられないんでござんすよ」と語る紅子、あんた、人間じゃないの…ないのか...やはりといえばやはり。

その他のエピソードでも、銭天堂の商品を選んだ人は緊急的な局面でよい判断をしてハッピーエンドになり、たたりめ堂の商品を選んだ人は痛い目に遭ってる。うーん、最初の方の巻では、銭天堂の商品でも、本人の心持ちによって、結構ひどい目に遭っちゃっていた人もいたけどねぇ。

巻末に、よどみの思い出話。街中で、自分のお菓子に引っかかりそうな人間を探していたら、見向きもしてくれない若者がいて、それは、銭天堂のお菓子を口にした直後だったから、という理由がわかり、紅子への怒りというか逆恨みが燃え上がった、というエピソード。
鳥かごから釈放されたらよどみはどんな反撃に出るか? 次巻に続く...。

過去の感想:1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻

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