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『ふしぎ駄菓子屋銭天堂13』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(410))

廣嶋玲子・jyajya『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』、12巻から現れた新キャラ六条教授が、銭天堂にとってどんな敵となるのか、気になって、続けて13巻を読む。表紙の紅子はちょっとおすましさん、だけど逆光でちょっと妖しい翳が。
六条教授は、紅子やよどみのような超常的存在ではない。だから自分自身が銭天堂に辿り着けたこともないし、研究所のスタッフたちも銭天堂に行けていない。しかし、人海戦術で、大量の小銭を用意して、それを知り合いとかアルバイトスタッフとかに配り、それを用いて銭天堂の幸運のお客さまアンテナに引っかからせようとしていて、一定の効果を上げている。どの位のタイムスパンで、どのくらいのエリアに捜査網を張りめぐらせているのだろう。この本で取り上げられているお客さまはほんの一部で、毎日、日本のどこかで神出鬼没に銭天堂は営業しているのか? (どこに登場したかという地理的分布の分析は、少なくともこの巻まででは取り上げられていない)

しかし、銭天堂に行ける手がかりとなる小銭を、みんな同じ布袋に入れて配布していて、既に紅子に怪しまれている。詰めが甘い。
そして、銭天堂に行った人に、買ってきたものをサンプルとして半分分けてほしい、と言っても、相変わらず幸運のお客さまたちは、どこか幸運なんだい、と呆れる位人の話を聞いてなくて、無我夢中でお菓子をすっかり食べてしまうし(それだけ魔力が強いってことだろうね)、説明の書いてある包み紙もたいがい読みもせず捨ててしまったりする。
そして、唯一見本を持ち帰ってくれたバイトは、二粒あった「ぴったりピーナツ」の一粒を回収されてしまったら、結局、お菓子の効果は半分しか効かず、欲求不満に。
「熱帯焼き」を頭からでなく尻尾から食べてしまったせいで、庭を熱帯のようにしてトロピカルフルーツを育てる夢はかなえられたが、家の中も一年中熱帯夜にしてしまった5歳児。「ヒップホップコーン」を一気食いしてしまったら、ヒップホップだけは上手に踊れるようになったが、それ以外のダンスは全然うまく踊れない小学生。「先取りメガネ」で続きのきになる漫画をずっと未来まで読んでしまい、でもちゃんとその後も単行本を買うように、というルールを守らなかったらひどいめにあった少年。「スクープクレープ」を食べて、学級新聞のネタ集めに夢中になっていたら、自分がスクープものの事件の被害者になりそうになってしまった少年。今回もほろ苦い結末が多い。
そして、六条教授の元で研究をしている研究員の娘が銭天堂に辿り着き、買ってきた「見定メーター」で、自分の前にいる人が自分にとっていい人かよくない人かを見定めてしまう、というかなり怖い話。少女は最後は幸せになり、消えものでないアイテムをゲットした研究所員たちも大喜び。

巻末で六条教授は言う。「みんな、ひきつづきがんばってくれ。われわれの、よりよい未来、幸せな未来のために!」
あなたのよりよい未来、幸せな未来って何? と疑問ぐるぐるになりつつ13巻終わり。よどみのような嫌がらせをしてくるのとはちょっと違う気持ち悪さ...。

過去の感想:1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻

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