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2073年(創業120周年)までに赤ちゃんが食べられるタオルを創る。IKEUCHI ORGANIC 株式会社 代表取締役 阿部 哲也さん

最大限の安全と最小限の環境負荷、誰も犠牲にしないものづくり」を根源に、世界最高水準の安全テストをクリアし、風力発電100%の最小限の環境負荷で作られる愛媛今治が生んだ世界のタオルブランド、IKEUCHI ORGANIC 株式会社 代表取締役 阿部 哲也さんにお話を伺いました。
「ただ、シンプルにみんなで考えることは、この地球がどうやったら持続可能にしていけるのか。未来を面白くしていきたい。」阿部さんの心の在り方に触れました。

プロフィール
出身地:新潟県
活動地域:東京都・愛媛県今治市
現在の職業及び活動:製造業(タオル)
座右の銘:「足るを識る」

「最大限の安全と最小限の環境負荷。誰も犠牲にしないものづくり。」は、IKEUCHI ORGANICの根源。

人生においてもこの根源が、共通であるように感じましたが、ご自身は、どのような心の在り方や認識の変化が、今の活動につながっているのでしょうか?

阿部さん(以下、阿部)
 実は必要なことは、小学校の時に飼っていた犬から学びました。

食べられるために、生まれる命ってなんだろう?って思ったことがあったんです。

小さい頃に行った牧場、そこのお兄さんから言われた「焼き肉食べる?」に違和感がありましたね。

「これ、あそこにいた牛さんだよね???」と、親に聞いても答えない。

牧場のお兄さんが、「牛さん、かわいいね」って言っていたのに、焼き肉になっちゃうんだって。

記者 それは、どんな感情だったのでしょうか?

阿部 インパクトですね。
かわいいでしょ?といったお兄さんが食べよう!という。

牧場のお兄さんがどうだ、ということではなくて、そこで “矛盾” を感じた。今も僕のなかで消化できない牧場の記憶。

記者 考えてみると確かに違和感ありますね。

阿部 結婚してから、プレーリードッグを飼ったんですが、その子は草しか食べないのに、体がふかふかしているんですね。

その頃は、べジタリアンやマクロビが流行っていました。じゃあ、実験でベジタリアンの生活を、やってみようと思ったんです。

最初はゆるくはじめました。
その定義は、自分で捕まえて絞められること。

イメージしてみました。
牛は、無理だな…、豚も、無理だな…。
鶏やエビは、大丈夫っ!という具合に。

それでやってみたんです。
そしたら、意外と生活できることがわかったんですね。

そういう生活の中で、動物の肉を食べることがどれだけ環境に悪いのか、ということを始め、結局何に繋がっているから良くないのか?が理解できるようになりました。

自由意志ではなくて、工業製品のように生産される命が存在する気持ち悪さ。

スーパーに置いてある肉は綺麗な状態です。精肉にされる工程を何も見せず、無機質な物として置いてある。だから簡単に摂取もできますよね。

それだったら、野に放たれた動物たちをいただきます。と言って食べるのが、健全だなと思ったんです。

そこがスタート地点だった。

だけど、ストイックにやっていったら、肌がカサカサになっていったんですね。自分の健康に不具合がでてきました。だから続けたいけど、続けられなくもなったんです。

そこで何を学んだかというと、バランスなんです。

いろんなものから栄養をとっていかないと、生命が維持できない。

そのバランスって、生きている人がどこまでを許容するのかの話でもあって、どっちが良いとか悪いとのかっていうよりは、自身のカラダに聞いてみて、続くことを選択するということで、結局はその時代のベストな空気を読むしかないことと同じではないかと思っています。


持続するには、バランスが大事と気づかれた阿部さんから観る、これからAIが活躍する時代に求められているニーズとは、一体何だと思いますか?

阿部 自分が考える力ですね。

作業や過去の経験則の予想は、全部AIがやってくれます。

AIが予想して導き出した未来は、自分が志向しているものと同じであれば自信を持てばいいし、自分が志向しているものと違っていたら、違うものを目指すべきだしとは思います。

だから、やっぱり考えること。

AIが言うことが全てではないし、自分が言う未来が絶対に来るわけでもない。

その先のものって、自分の意志がつくるでしょ。意志を決めるには、自分の軸足をどこに置くかを自分で決めること

考えないとそれは決まらないんですよ。周りから言われても決まらないわけですしね。

僕の原体験の牧場体験もそうです。「割り切って、普通に牛の肉を食べていればいいんだよ。」と言われて「はい、わかりました。美味しいです!」

どこか気持ち悪いものがあるんです。その気持ち悪いものを、なるべく引きずりたくない。

心から楽しめないから、心から美味しいって言えないですし。

だから、そこの違和感の正体を突き詰めていく、自分が嫌なことって何なんだろうって考えることなんです。

そこに紐づいた自分の限界、原体験って絶対あったりします。

それが何かっていうのを、突き詰めて考えていくこと。それをすると、自分がやっちゃいけないこと、そうするとやるべきことが見えてくる気がします。

問題を認識し解決されようと日々行動しているわけですね。では、阿部さんが考えるこれからの美しい時代とはどういったものですか?

阿部 事実は事実として伝える社会ですね。

事実をどう解釈するかっていうのは、受け取り側の方々のそれぞれの考えだと思っています。

今は、事実を公表することさえ、ダメというか、意図的に曲げられているようにも思う。

じゃあ、何が事実なの?って言った時に、たぶん主観をなくした情報だと思うんですよ。

例えば、Aさんは髪が短いです。これが事実だとすると、ニュースってそれを伝えることだと思います。すごく感情がないんです。だから感じが良くなったとか、切る前の方がよかったとか、そういうものは全て「解釈」で、今は誰がどういう解釈をしたのか?の方が重要になっている気がします。

今は、事実だけを公表することは難しいですよね?

さらには、大多数の方は自分の解釈に自信がない。だから例えばコメンテーターを必要とするわけですよ。でもね、それだと自分の判断が曇りますよね。

だから解釈をいれない、感情を抜いた事実を伝えるメディアは、必要かなと思います。

そもそも、誰に共感するのかというのは自分の考えです。それが時代を創っていくわけです。まずはそこに戻ること。

だからあるべき世界っていうのは、あの人は自分の意見と同調しないからダメだとか。そういうことではない価値観だと思います。

頓着しない人も、そこに執着してそれで幸せと思う人もいてもいい。その人はその道をいけばいいんです。

ただ、みんなで考えることは、この地球がどうやったら持続可能にしていけるのか。

ということを考えていきましょうよっていう。コンセンサスさえ取れていれば、自ずからの行動って変わってくると思います。

そこに至る方法論は、いくらあってもよくて、それは多様性ということにもなるでしょうし、なんか息苦しいという感じも、なくなっていくるだろうと思います。

あの人そうなんだ。という事実をまず受け入れる。別に批判もせず。

なるほど、そんな生き方なんだ!というので終わりでしょ。
あれは違うよ!っていう話ではなくなる。

そういう未来がいいです。

記者 時代が何かに気づきはじめてきているようですね。その動きは加速しそうですか。

阿部 緩やかにしか変わらないと思いますね。確実に変わるんだけど、そのスピードって早ければ早いほど副作用、つまり対立を生んでしまいます。

人ってなかなか変わらないでしょ。ただこのようなことを考えている人が20%を超えた時に、時代がドーンと変わっていくと思いますよ。

コミュニティーの広がりというよりは、コミュニティーの深まりを重視していったら、ドーンと変わるっていう気がします。

ファンベースマーケティングというのもそうだと思います。つながり感をきちんとケアしていくものです。

経営視点だと、新規の広がりだったりその早さだったり、そっちの方を重視しがちなんですけど、それをやっちゃっていると本質は薄まってしまいます。

対立を生まないで共感で巻き込んじゃったほうがいいから。だって対立は何も生まないじゃないですか。もともと同じことを考えているのに。もったいない。

許容しあって同じ未来を共感できるところで、一緒に目指していったらと思います。こんなこといっているとスピードはゆるいんですよ。でも、そっちのほうが結局は早いと思います。

ありがとうございました。最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。

阿部 なんか面白いことやろう!っていう。以上ですね。

記者 今までのお話があったからこその、シンプルなお答えですね。

阿部 だって、面白いことしか続かないでしょ、たぶん。苦痛なことは続かないですもん。

ただ、面白いというのは、楽で気持ちいいことでもなくてね。だって楽しいだけだと、飽きてしまうじゃないですか。

それに、面白いことがあるから、辛いことも耐えられますしね。

記者 阿部さんのお話は興味深く、そしてとても面白かったです。人生を通して対極で物事を観る力と考える力、そしてバランス感覚に気がつき、未来の環境をよりよく変化させていきたいという意志に触れました。本日は誠にありがとうございました。

今治タオルのイケウチオーガニック|IKEUCHI ORGANIC 株式会社
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編集後記
今回のインタビューを担当した三笠です。
IKEUCHI ORGANIC主催のイベントなどでお会いした際の素敵な印象がどこからくるのか。今回、インタビューをさせていただき、その考え方やあり方に触れることができ、私個人的には、阿部さんの魅力をさらに深めることができたと感じ嬉しく思っています。ご自身とつながった率直な生き方には、そうでないことに対する問題意識を肌で感じ、そして考え、行動に移している美しさがありました。貴重なお時間をいただき、お忙しい中でのやり取りも丁寧に対応くださったこと心より感謝いたします。ありがとうございました。

インタビュー担当 三笠 惠美、黒田 麻衣子、園田 誠一郎
Interviewer Emi Mikasa, Maiko Kuroda
Editor Emi Mikasa, Seiichiro Sonoda
Photo by Seiichiro Sonoda

この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。


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