2代目繫盛のルールその22「インサイドアウトのコンセプトはあるか?」【創業組が嫉妬する2代目マネジメント術㉜】
ルールその22 インサイドアウトのコンセプトはあるか?
インサイドアウトの視点
他社ホームページなどで経営理念を目にする機会がよくありますが、経営理念と言うより何を自社がしたいのかと言う宣言的なものが多い気がします。
「私たちはこう言う事で世の中に貢献します!」
と言うやつです。
大手、大企業であれば広告費もそれなりに予算があり、知名度もあるので、こういう垂れ流し的な感じの大雑把なものでも良いかと思いますが、スモールビジネスではもっと細やかな理念の設定が必要かと思います。
マーケティングの基本、ターゲットを絞るのです。
誰のために、どういう目的で、どういった貢献をするのか?
社内外つまり、スタッフ、お客様に共有して効果があり、何よりも経営者がその理念を行動の原理とする具体的なコンセプト。
そのためには、経営者が何をしたいか?よりも経営者がスタッフ、お客様、地域にどう貢献するのか?そのために自分たちはどう成長して何を成すのかと言う視点、インサイドアウトの視点を持ったコンセプトが必要となります。
2代目エルベランの出発点
僕が、事業承継をする前、代替わりが決まり、店舗をどうするのか、どういった運営をしていくのかを考えていたときの事です。
その時、一番初めに考えたのはこの店をどう終わらせるのがハッピーエンドなのだろう?と言うことです。自分の代が終わりを迎えた時にこの店にどうなっていて欲しいのか、理想の終わり方について考えたのです。
そこで出した結論が「高い価値で企業に売却できる店で終わる」という事でした。たとえ売却せずに誰かが受け継ぐにしても、それならば苦労かけずに譲り渡せる。そこまでエルベランのブランド価値を引き上げるのが自分の仕事だと定めました。
そして、次に考えたのが自身の強みとは何かです。
自分の強み
・夙川生まれ夙川育ち
・大卒でこの業界に入り、洋菓子業界の常識よりも社会一般の常識を優先して考えていたので、この業界の現在の成功モデルを信じていない。(むしろ失敗だと思ってる)
・勉強が好き
このころは、マネジメントの勉強どころかそういう物すら知らなかったので全くの思いつきで始めたことでしたが、今思えば、それが僕のマネジメント、マーケティングへの第一歩でした。
よし、それじゃあ思いついたことを文章にしてやれ!と、勢いでノートを作りエルベランのコンセプトとしてまとめました。2011年3月の事です。
その中の一つが
「建物は街のもの、店はお客様のもの、厨房はスタッフのもの」と言うコンセプトでした。
建物は街のもの
いくら目立つ建物を建てても、地域の方に喜ばれないものでは意味がない。こんな建物がここにあったら良いなと思っていた、建ててくれてありがとうと地域住民から感謝されるようなものを建てなければならない。夙川生まれ夙川育ちの自分が夙川の事は一番わかっている。その役目はじぶんの仕事だと考えました。
店はお客様のもの
店はお客様のリビング。自分たちの使い勝手を優先したり、自分たちの作業場にするのではなく、あくまでお客様がこんな雑貨があったら良いな、こんなお菓子の飾り方素敵だな、このお菓子にはこんなお皿が合うんだな、と言うことが想像できて楽しくなるようなお客様へのライフスタイルプレゼンテーションスペースがお店であると僕たちは考えています。
厨房はスタッフのもの
厨房はオーナーシェフが威張ったり、自分の気が晴れるためにあるものではなく、あくまでパティスリーの仕事に従事するスタッフが快適に働くための場だと僕は考えます。以前とあるシェフが、お店を移転改装した際にシェフルームを作り、監視カメラでスタッフの作業を監視して、何かあれば呼びつける体制を作ったと言うお話を聞いたことがありました。従来型の洋菓子店経営でしたらそれもありでしょう。しかし、僕はその従来型と言うやつを全く信用していません。そういう働き方が常態化すると、やがてスタッフは考えて働くことを辞めてしまします。たまたまよくできる子が入社してとしても教育出来るスタッフがいなくなるので悪循環に陥るのは目に見えています。僕の洋菓子店経営のスタートは過去の人たちの成功をトレースするのではなく、そこから生じる歪みの是正だったので、厨房はスタッフにとって快適に働ける場所である。それが僕の行きついた考えです。
自社が何をしたいかではなく、誰のために、どういう目的で何をするのか。
そのためには、まず自分発信ではなく、相手が何を望み自分がそのためには変わる事も良しとするインサイドアウトの視点が重要です。
「インサイドアウトのコンセプトはあるか?」
そこから始まるあなたのビジネスこそあなたの大切な人が輝ける場所になるはずです。
創業組が嫉妬するような2代目マネジメント術で豊かで幸せな人生を送りましょう!
エルベラン2代目オーナーシェフ 柿田衛二
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?