・エコツミ・

日本神話を歌うアーティスト。シンガーソングライター、パフォーマー、小説家。 ヨーロッパ…

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日本神話を歌うアーティスト。シンガーソングライター、パフォーマー、小説家。 ヨーロッパと東京を中心に、国内外で活動しています。初めての短編パフォーマンス映像がベルリン「WomenCinemakers Biennial」に選出されたのが自慢。古事記研究家。神社検定1級。

マガジン

  • 音楽アート制作ノート

    声と言葉、踊り、日本神話、女性性、わたしを構成する様々な要素を使った作品を作っています。伝えきれないことが多いため、制作ノートを作成しました。もっと深く作品をわかちあえますように。

  • NFTアート作品 「Maternity Eternity」

    妊娠10ヶ月で撮影した写真「Maternity Eternity」シリーズ解説。妊娠の幸福さではなく、不安やとまどい、決意などを表現したマタニティフォト作品。

  • ほぼ月刊・エコ事記便り

    ・エコツミ・メルマガより。その時々の制作状況を抜粋しています。 直接メルマガとして届いてほしい!という方はこちらからお申し込みください。メルマガは日本語、英語です。 https://www.ekotumi.jp/contact

  • エコツミ作品集『歌詞を読む』シリーズ

    日本神話の価値観を軸に、様々な作品を発信するマルチアーティスト・エコツミ・。20年以上に渡って書き溜めたオリジナル歌詞を、少しずつ発表していきます。古代から今まで、連綿と受け継がれてきた私たちの命の物語。無名の人々の忘れられた物語、忘れられた想いを掬い上げ、様々な角度からの人間味あふれる感情表現にのせて伝えています。読めば読むほど本質が見えてくる言葉の連なり、独特の世界観を味わってください。

  • ・エコツミ・海外ツアー奮闘記

    フランス、イギリス、ベルギー、イタリア、スイス、UAE、モンゴル。海外ツアーのあれこれ旅行記。ツアー後の不定期更新となります。観光地だけじゃない、リアルなところを知りたい方向け

最近の記事

映像作品「瞼の裏で見る夢」のこと

私は東京で生まれ、東京で育ち、東京に住んでいる。もっと正確に言うと港区で生まれ育った。こういうと、ものすごく都会だと、キラキラしたところだと思われることがしばしばある。でもそうじゃない。「港区女子」という言葉があるように、たしかに港区にはそういう側面がある。けれど、私が生まれ育った高輪はそうじゃない。寺町と言われているくらいだから、少し歩くだけでとにかくお寺がたくさんあるし、どちらかといえば昭和的な、郷愁を感じさせてくれるエリアだ。東京タワーも虎ノ門ヒルズも遠くない。だけど、

    • Maternity Eternity 15

      ついに、生まれる。 予定日より数週間早くうまれた友人が多くて、私は予定日の2週間前からいつ来てもいいように覚悟しつつ、最後の追い込みとばかりにやっぱり仕事をしていた。陣痛の傾向はまるでなかった。ある朝、ほんのわずかな違和感があった。水が、流れた気がする。話にきいていた破水とは違った。「間違いようがないからわかるわよ。歩くたびにじゃばじゃばって水が流れるから」そう助産師さんは言っていたのだ。念のため、私はタクシーに乗って病院に行った。検査してもわからなくて、いろんな医師がきて

      • Maternity Eternity 14

        安定期黄金期 胎動は結局臨月まで続いた。心音が聞ける機械を返却した。トレーニングも順調で、私はヒールのあるショートブーツでがんがん歩き回るようになった。生まれたらなにもできなくなるってみんな言うから、今のうちになんでもやっておこう。とはいえ、私のやりたいこと「なんでも」は、仕事だった。レコーディング、撮影、ラジオ、打ち合わせ、ロケも行った。ビジネス交流会にも参加して、新しい人と出会い、新しいプロジェクトの話をする。おなかが目立たない服を着て、でもおなかの子と一緒に仕事してい

        • Maternity Eternity 13

          マタニティトレーニング 安定期も2ヶ月目に突入し、お医者さんには何回も運動していいのか確認した。全然問題ないですよと言われても、信用ならなかった。自分が、信用ならなかった。けれど、身体の中で命が育ってゆくという感覚を作品にしたいという欲求は日に日に高まっていった。私はついにトレーニングを再開することに決めた。一人の意見を信じるというのは怖かった。もしもの時、その人のせいじゃないのにその人のせいにしそうだったから。結局、2人のピラティストレーナーさんと、ストレッチのトレーナー

        映像作品「瞼の裏で見る夢」のこと

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        • NFTアート作品 「Maternity Eternity」
          15本
        • 音楽アート制作ノート
          26本
        • ほぼ月刊・エコ事記便り
          4本
        • エコツミ作品集『歌詞を読む』シリーズ
          105本
        • ・エコツミ・海外ツアー奮闘記
          11本
        • エコツミ「底深き喜び」(2008)
          5本

        記事

          Maternity Eternity 12

          絶対に産めますハンコ 安定期に入った。でも、私は全然安心しなかった。神さま、絶対に大丈夫というハンコがあるなら押してください。 早産の場合、いつからなら助かる確率があがるのか、ひたすら調べた。どうやら26週、7ヶ月後半なら大丈夫そうだ。いや、でも安心できない。家族に言うのは28週、8ヶ月になってからがいい。 初めて妊娠した時は、妊娠22週までなら海外保険に入れるからツアーにもいけるな!と計算していたというのに。あの時はただ「数字」の話だった。22週ならツアーにいける。23週

          Maternity Eternity 12

          Maternity Eternity 11

          流産を繰り返した女は、流産しそうにない服を着るのか否か。 流産を繰り返したなら、ぜーったいに「流産しそうにない服装」になるような気がする。でも違った。私はこれまでと同じ服装を着るのを好んだ。もちろん、おなかは締め付けないようにマタニティパンツ。体を冷やさないようにヒートテックやらなにやらほかほかグッズ。(ユニクロ最高。日本にうまれてよかった。)だけど、ぱっと見はこれまでのような、黒っぽくて、シュッと細身にみえるコーディネートだ。靴はヒールのあるショートブーツ。 ひとつには、

          Maternity Eternity 11

          Maternity Eternity 10

          ついに胎動が始まる。 病院でベビーの心音が聞こえても、次の診察まで毎日が不安だ。自宅で心音が聞ける機械をレンタルして、毎朝確認した。でもこの機械、胎児の負担にならないように使用時間が1,2分に限られている。そして、日によって心音がどこからきこえてくるかわからない。探している間にタイムリミットが訪れることも多かった。そんな日は、一日中そっと行動した。そんなことをしてもたいして意味がない。わかっていてもそうした。そうこうしているうちに、胎動が感じられるようになった。おなかをかる

          Maternity Eternity 10

          Maternity Eternity 09

          大人と社会人はまったくの別物。 おなかが目立たない段階でのつわりは、ピンクの妊娠マークに頼るしかない。電車の優先席が空いていない時は、苛立ちと悲しさに襲われた。マナー知らずの学生のようにドアの前に座り込みたい。優先席でパソコン開いて仕事しているサラリーマンとか、スマホゲームしている人たちをみては、内心舌打ちをした。「席かわって」と言えばいいのかもしれないけれど、そんな力も残っていない。立っているだけで、使える力をふりしぼっているのだから。 一度、立っている人が、9ヶ月妊婦(

          Maternity Eternity 09

          Maternity Eternity 08

          つわりには種類がある つくづく、つわりが安定期の後に来てくれればいいのにと思った。つわりで辛いと言いたい。でも、安定期前に妊娠のことを誰かに話すなんて!と私は必死に耐えていた。ドラマやマンガの漠然としたイメージで「つわり」は「おぇぇぇ」っとなることなのだと思っていたけれど、それは単につわりの一種でしかなかった。いわゆる「吐きづわり」だ。ほかにも食べないと気持ち悪い「食べづわり」、匂いで吐き気をもよおす「匂いつわり」そして、私がなった「眠りつわり」。数回しか吐くことはなかった

          Maternity Eternity 08

          Maternity Eternity 07

          海外ツアーの延期・キャンセルを申し入れる。 半ば決死の覚悟で、商談中のプロモーターさんたちに伝える。 妊娠したこと。けれど、私は不育症で今回もどうなるかわからないこと。迷惑はかけたくないこと。だけどとても出演したいと思っていること。 あぁ、すでに何回も仕事をしたことがある人たちだったなら。中には一度しか会っていない人もいた。一度も会わずzoomでしか話していない人もいた。私は泣きそうな顔をしていたと思う。 そして、本当に泣きそうになった。 だって、みんないやな顔ひとつする

          Maternity Eternity 07

          Maternity Eternity 06

          フリーランスが妊娠すると、仕事を続けるのが困難になる。 また新しく命が宿ってくれた。とはいえ、度重なる流産を経た不育症の私には、嬉しさと、喜んだらまた悲しくなるかもしれないという不安でいっぱいだった。 これからどうなるかわからない。でも、今話している仕事は半年一年先のツアーのこと。安定期なんて待っていられない。家族にも言っていないけれど、先に伝えなくてはいけなかった。 もしかしたら否定的なことを言われるかもしれない。祝福してくれても今後一緒に仕事をする機会はなくなるかもし

          Maternity Eternity 06

          Maternity Eternity 05

          不育症の検査のこと 不育症検査のため診察室に入ると、最新と思われる機械たちが並んでいた。リアルタイムで子宮内の血流をみながら、検査できる時代に生まれて良かったと思った。昔はエコー検査もなかった。病院もなかった。医学もなかった。建物もなかった。消毒液もなかった。どうやって子供ができるかは知っていても、なぜそうなのか知らなかった。そんな時もあった。 そんな時代だったら、私みたいな不育症の人たちは、流産しても「子供できたんじゃない?って言われたけど、なんか勘違いだったのね」で終

          Maternity Eternity 05

          Maternity Eternity 04

          悲しみだけが生きた証だった。 先生に勧められて行った不育症のクリニックは、春の木漏れ日のように静かだった。別室で説明を受け、結果が出るまで時間がかかること、流産を繰り返す原因がすべてわかるわけではないことを聞いた。私は不育症というものを知らなかったことを話した。流産を繰り返す人だけじゃなく、最近は結婚前の若い人も来るんですよと教えてもらう。将来のために自分のリスクを知っておきたいと来院するそうだ。 もし、私もあらかじめ検査していたら、こんな悲しみを経験しなくてすんだのだろ

          Maternity Eternity 04

          Maternity Eternity 03

          稽留流産のこと。 妊娠のこと、出産のこと少しずつ書かせていただきます。 よかったらお付き合いくださいな。 *現在はすでに、無事出産しております。 不育症だった私は、妊娠して、心臓が動いた段階ですべての子に名前をつけていた。 その方が悲しみは深くなるとわかっていたけれど、それくらいしかその子にできることはなかったから。 それは、私からの最初で最後の贈りものだったから。 はじめて稽留流産、つまり胎児がおなかの中でもう亡くなってしまった時、 子宮の「中身」を出すだめの手術を受け

          Maternity Eternity 03

          Maternity Eternity 02

          不育症のこと。 不育症って、知っていましたか? 私は全然知らなかった。不妊症じゃなくて、不育症。子供はできるのに育たない症。 正確に言うと2回以上の流死産があること。 そもそも妊娠しても約10-15%は流産するそうなので、最初の流産の時は悲しみながらも「単に流産」だと思っていたのでした。 でも、それが続いた。 検査を受けた方がいいと言われて、初めて「不育症」という言葉を知った。なにそれ、って思った。 不妊症となるカップルは約10%だそう。不育症は、1-2%だって。そりゃ知ら

          Maternity Eternity 02

          NFTアート作品・臨月マタニティフォト

          やっと準備が整いました!新作アート作品公開のお知らせ、です。 変わりゆく身体と感情をどう表現すればいいのかと、臨月でマタニティフォトを撮影することにしました。 この度、NFTにて公開いたします! 一生に一度の作品。 制作意図も含めてご覧いただけると幸いです。 「 Maternity Eternity 」 日本では、マタニティフォトは「幸福の象徴」として撮影される。 たしかに、妊娠・出産は命のことであり、奇跡であり、幸福だ。 だけど、けっして「幸福」一色ではない。

          NFTアート作品・臨月マタニティフォト