三木麻郁 / Porque ART主宰

現代芸術家。PorqueART主宰(2015-)、保育園(2017-)・こども園(20…

三木麻郁 / Porque ART主宰

現代芸術家。PorqueART主宰(2015-)、保育園(2017-)・こども園(2018-)のアトリエリスタ。アトリエを近隣のこどもたちに開いたのが、こどもとアートに興味を持った始まり。バックグラウンドの違う保育士さんたちと働くようになって言語化の必要を感じnoteをスタート。

最近の記事

vol.16 ねんどの話をしよう(3)遊びを広げる道具とは

「ねんど」の道具滑り出しから小言になるのですが、こどもたちの粘土用道具に使われている素材について、思っていることを少々…。 造形師や彫刻家の大人の制作現場では、木製やステンレスの道具が主に使われるのに対して、学童用品ではプラスチック製ばかりが目立つのが、気になっています。ステンレスはまだしも、選択肢として、木製のものがなかなか見かけることがないのは、なぜでしょう?長持ちもしますよ。 環境的にも、こどもに与える素材としても、画材道具も自然素材のものがあり、その価値にもっと注目し

    • vol.15 ねんどの話をしよう(2)ねんどの種類、何が違うの?

      画材屋さんを訪れると、それぞれの素材で作られた「〇〇粘土」が棚に並び、いまや無数に種類があるのではないかと思われる粘土ですが、基本構造は全て同じです。 粘土とは…基本の構成物これが粘土の基本構成物です。 つまり、これさえ踏まえていれば、粘土は自分でも作れるんです! 細かい粒子と水がバランスよく混ぜ合わされることで、自然界においても粘土は生まれています。土を掘ったら粘土質のものに出会ったことはありませんか? この構造を応用してつくられたのが、ありとあらゆる名前のついた粘土

      • vol.14 ねんどの話をしよう(1)ねんどが私に教えてくれること

        手が考える、「ねんど」ある美術家さんが、摩訶不思議な形をしたセラミック(陶芸)の作品を美術館でたくさん並べて展示されていて 「頭ではない、手が考えた形なんです。手が考えるんです。」 というような説明書を添えていたのが、とても印象に残っています。 10年ほど前の出会いです。それはもう大きく心の中で首を振り、力強く、静かに、深々と頷きました。 20代後半から、拙作でもセラミックを扱うようになりました。 土の気持ちよさに驚いたのは、学生時代の友人の陶芸教室をお手伝いする名目で、初

        • vol.13 こどもの「芸術」は、ヒトに何をもたらすのか?

          「これからは、アートの時代」 「芸術教育に力を入れたい」 「創造力を育もう」  この手の話題が、教育の界隈でよく聞かれるようになった。もしくは随分と前から、注目はされていたのかもしれない。  何はともあれ、美術教育の変革が戦後から恐ろしいほどゆっくりしていることを思えば、こうして自分の専門領域に注目していただけていることを、ひとまず素直に喜ぼう。  …と、私は自分に言い聞かせる。こどもを集団で育てるような現場にいると「いやいや、言葉ばかり、重要性ばかりが一人歩きしていないか

        vol.16 ねんどの話をしよう(3)遊びを広げる道具とは

          vol.12 声かけ・態度 〜造形活動中のこどもたちに寄り添う大人の”最適解”〜

          「声かけ」というお題については、本当にいろんな方々からリクエストをいただきます。 巷でもこのテーマの本がたくさん出ていますよね。表題を見てみますと、「〇〇な子に育つ言葉」「言い換え」「〇〇個の魔法の言葉」というようなワードの組み合わせをよく見かけます。いくつか拝読させていただきましたが、なるほど、と参考になることは多いように感じました。造形活動中という状況はまず想定されてはいませんが、考え方のヒントは得られるのではないでしょうか。タイトルに惹かれたものから読んでみるのも良い

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          vol.12 声かけ・態度 〜造形活動中のこどもたちに寄り添…

          vol.11 学校でも教室でもない、Porqueのスタジオのつくり方

          「この場所は一体何なのか」問題2015年から自分の持つアトリエを開放して、小さな人たちのためのアトリエを開いています。 そのアトリエをなんと紹介するべきなのかに、長らく頭を悩ませていました。ついつい人に説明するときに「いわゆる、造形教室」とか「アートクラス」という言葉を使ってしまうのですが、必ず「教室っぽくはしたくないんですけど〜」とも、付け加えていました。 なんとも、すっきりしない言い方です。「いわゆる」ってなんだよ。もっとシンプルに説明できないものか。 実は、数年前に「

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          vol.11 学校でも教室でもない、Porqueのスタジオのつくり…

          保育×アート「root art lab」 始動します

          私のnoteをきっかけに、私の活動を知っていただいた皆様に、お知らせがあります。 vol.8の記事ではたくさんの反響をいただき、素直に驚きました。 まさかこのノウハウが200人近くから支持されるとは思いもしませんでしたが、画材について多くの人が不安を持っていたり、誤解をしたまま恐れていたのかも、ということが私にも伝わりました。 少しはお役に立てていたら嬉しく思います。 表題のroot art lab(ルートアートラボ)は、実はこのnoteから始まりました。 広島で保育施設

          保育×アート「root art lab」 始動します

          vol.10 0歳にも渡せる、安心の絵具の選び方〈3〉ー幼保アトリエリスタによる本音レビュー

           vol10、最後の記事です。本記事で、いよいよ、現場で使っている絵の具を具体的にご紹介します。アトリエリスタのマジの本音を書いています。(笑)ゆるく、参考程度に見ていただけると幸いですが、きっとお役に立てる自信があります。  学校や保育園など、教育専門企業だけが購入できる教材カタログというものがありまして。これは個人では購入できないんですね。できたとしても割高です。個人事業で「子どもの造形遊び」研究を始めた私としては、喉から手が出るほど欲しい特権でした。しかし結局、そうい

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          vol.10 0歳にも渡せる、安心の絵具の選び方〈3〉ー幼保ア…

          vol.9 0歳にも渡せる、安心の絵具の選び方〈2〉ー絵具選びには、道がある。

           続編だというのに、前回の記事から随分と時間が経ってしまいました。文章を書くのは好きなほうなのですが、コンスタントに書くお仕事の人って、やはりすごいことをしてるんですね…。改めて尊敬します。  「0歳にも渡せる、安心の絵具の選び方<1>ー知って欲しい、画材の安全」と題した1回目の記事が大変な反響をいただいて驚いたと同時に、今回のnoteは言葉選びにも慎重になり、身の引き締まる思いです。(とか言って、公開後、何回も書き直しをしています。すみません。。。) 絵具を選ぶ、道の探

          vol.9 0歳にも渡せる、安心の絵具の選び方〈2〉ー絵具選びには、道がある。

          vol.8 0歳にも渡せる、安心の絵具の選び方〈1〉ー知って欲しい、画材の安全

           世の中に数多ある、絵具商品。水彩絵の具、固形水彩絵具、ポスターカラー、ガッシュ.... 学童用だけでも、多種多様な絵具が売られています。  保育園でアトリエスタをはじめて、3年。翌年オープンしたこども園でも同じ職に就いて、そろそろ2年。保育士さん達との連携が、徐々に、徐々に取れて来たかなと思えることも増えました。  働き始めて間もなかった頃は、自分の経験ベースで保育士さん達にアプローチしてしまって、現場のニーズに合っていない提案をしていたこともあったように思います。  そ

          vol.8 0歳にも渡せる、安心の絵具の選び方〈1〉ー知って欲しい、画材の安全

          vol.7 「見える」と「見えなくなる」の、間に立ち会う。

          線一本が、電車になる。 それが、子どもの見ている世界です。 いつから現代人は「具体的に、カメラで撮影したように描く」ことに、憧れてしまったのでしょうね。 (そもそも一点透視図法的な写実的な絵画表現だって、西洋絵画から来ているものなのに。) 想像の世界の住人と、認知する世界の住人シンプルな形が何かに見えてくる時期は、ちいさな人の特権です。もう私が見たくても、寂しいかな、どうしたってその世界は見えない。 大人たちはつい、具体的なものが描ける小さな子どもたちの能力に驚き、つい笑

          vol.7 「見える」と「見えなくなる」の、間に立ち会う。

          vol.6 【コロナ禍】文化・芸術・教育に触れる機会を、どう確保していく?

          アートは決して特別なことではなく おうちでもできることは、たくさんあるはず。 そんなメッセージを掲げて、このnoteをはじめました。 長くなったおうち時間で、ハンドメイドやお料理を楽しむ方は増えているように思いますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか? こうして引きこもる時間を過ごしていると、アウトプットの時間は格段に増えたと思います。実際私も、かなりいろんな料理を調べて挑戦したり、ずっとメンテナンスを後回しにしていた作品に手を加えたり、構想していたことへのリサーチと計算

          vol.6 【コロナ禍】文化・芸術・教育に触れる機会を、どう確保していく?

          vol.5 0歳さんからの鑑賞は可能か?

          日本の美術教育では、長きにわたって 「美術教育は最低でも3歳からが研究対象。0歳はさすがに早すぎるよ。」 が、スタンダードでした。 「教育」と考えると、そうかもしれません。 0歳〜2歳くらいは、全てが刺激的です。 美術の他にも遊べるものがいっぱいあります。 だけど美術で出来ることを、ステージを下げて細かく見ていくと、乳児さんにとってはこれもまたひとつの刺激的な「体験」になれるのではないか。 保育園に勤務するようになって、そう感じ始めました。 なぜなら0歳さんは、本当にいろ

          vol.5 0歳さんからの鑑賞は可能か?

          vol.4 アトリエスタとは? 「遊び」に「学び」を重ねて観るサイクル

          「アトリエスタを、やってみませんか?」そんなメールをいただいたのは、確か2018年の春ごろでした。 学生の時に「驚くべき学びの世界―レッジョ・エミリアの幼児教育」という本とはすでに出会い、その社会運動に共感を覚えていたので、アトリエスタが 「(保育士に対しての )芸術士」であることはすぐに理解しました。 とはいえ、私が保有する資格は、2013年に取得した教育職免許の中学高校美術です。保育士の資格はもちろんないし、独身の私は乳幼児についての知識もありません。子どもの発達と年

          vol.4 アトリエスタとは? 「遊び」に「学び」を重ねて観るサイクル

          vol.3 「造形遊び」って、何だろう?

          造形/遊び。単語としては、2つに分けることのできるこの言葉。近年の小学校学習指導要領で初めて正式に取り入れ、その時は現場に少々混乱も起きたというような報告を読んだことがあります。 「造形」+「遊び」 皆さんは、この2つの単語の間にどんな助詞を入れると、しっくりくるでしょうか? 「造形  の 遊び」 「造形 による 遊び」 「造形 と 遊び」 私は保育の現場に携わるようになってからこの言葉を使うようになりました。専門的な単語ではあるだろうと思いますが、特に保育士さんたち

          vol.3 「造形遊び」って、何だろう?

          vol.2 子どもの「作る・遊ぶ」活動に寄り添うための、6つのヒント

          「親はついつい口出ししそうだから...」と言って、お家での造形遊びに不安を抱える人にお伝えしたい、いくつかのことがあります。 前回の記事にも書いたように、相性の良いアートクラスを利用することも1つの方法です。しかし、親子でゆっくり造形遊びの時間をお家で過ごすメリットは、たくさんあります。費用面はさることながら、見知らぬ場所に出かけずともすぐに始められるし、何より子どもの成長を近くで知ることができるのは、親としては大きな喜びではないでしょうか。 今回は、制作中から完成後の

          vol.2 子どもの「作る・遊ぶ」活動に寄り添うための、6つのヒント