見出し画像

恋愛感情が一生続くことはあるのか?~恋愛と家族愛の違い~

会社の同期からランチに誘われた。

2人でランチに行くのは、おそらく数年ぶり。

べつに仲が悪いとか、コロナだったからとかではない。むしろ仲いいし、わたしは彼が好きだ。あ、普通に、ともだちとして。

入社10年以上になると、みんな良い意味で自由になる。ランチは食べたり、食べなかったり。忙しくてお昼に休憩できない時はするっと夕方にひとりでカフェ時間をとったりと、わざわざ周りの人間を自分の時間軸に巻き込まない。

お互いそんな感じで、気がついたらほんとうに久しぶりになった。

「最近、お昼あんまり食べてないよね?」

そう聞かれて、わたしは言った。

「カフェが多いけど、食べる時もあるよ。合わせる。おなかすいてる?」

彼はエスカレーターの手すりに手をかけて、ちょっとななめ右上をみた。右を見る時は、想像力を働かせている時ってほんとかな?

相手にストレスかけないおまかせの程度はむずかしい。

真似して右上をのぞきこんだら、最近食べた丸亀製麺のうどーなつがもくもくとあらわれた。

「そうだ、うどんとかどう?」と言おうとして口を開けた瞬間、彼が言った。

「あ、こことかでもいいかも」

彼の視線の先をみたら、おしゃれなパン屋さんがあった。

グリーンサラダに綺麗なオレンジ色のサーモンがトッピングされたサラダランチの写真。焼き立てのパンが食べ放題だ。おいしそう。

「いいね!」

と、Instagramのハートを推す時みたいに、わたしは言った。


恋愛感情と離婚


大きなボールに入ったサラダが到着し、彼は言った。

「久しぶりに好きな人ができて。実は…韓国人なんだよね」

急な展開。

あ、韓国人なんだ!だからわたしか!とか、好きな人?奥さんは??とか、疑問と納得と伏線回収が一気におしよせ、わたしはちょっと混乱した。

混乱が筒抜けだったようで、彼はすぐに続けた。

「あ、今度離婚することになって。息子がね、18になったんだよね」

「あ、そうなんだ。そうかそうか。…え、あ、そうかそうか」

そうかそうかしか言わないおもちゃのロボットみたいになっているわたし。

こういう時、ほんとうに脳の回転が遅くて困る。

びっくりしたのだ、ほんとに。

「ほら、枝豆さんと言えば、韓国恋愛だし。離婚経験もあるし。」

たしかに。

半径500mぐらいで探してもらったとしても、この相談なら良いアドバイスができる自信がある。

「これは枝豆さん案件だなと思って」

愛の形は変わる。

変わった時に離婚を選ぶ人がいれば、変わってもそのまま婚姻関係を続ける人もいる。

そして、変わったことを自覚しながら、子どもの成長のタイミングを待つ人もいる。

別に正解はない。

恋愛の賞味期限は約4年


人類学者のヘレン・フィッシャー氏によれば、恋愛の賞味期限は約4年。

恋愛感情を作り出すホルモンのドーパミンが減ってしまうのだと言う。

その後、少なくとも4~5人にひとりは「秘密裏の婚外関係」を持つことになるというから驚きだ。

米国を中心とした複数の大規模調査に基づく推定では,男性では約20~40%,女性では約20~25%の個人が,結婚後のいずれかの時点で秘密裏の婚外関係を経験するとされている(Whisman & Snyder, 2007)

引用:親密な異性間関係の維持に関わる認知神経機構:能動的・自動的抑制機構の相互作用的関係性

わたしの両親は仲が良い。

だから、こういう話を聞くたびに、想像がおいつかなくて困る。

つい最近まで、恋愛感情が一生続く可能性もゼロではないと思っていた。

父が夢見がちなせいで、わたしはずいぶん長い間、誤解をしていた。

人間の父と天使な母の行く末


高校生ぐらいのころ、テレビを見ていたわたしに父が言った。

「〇〇(お母さん)ってさ、天使みたいだよね」

多少お酒が入っていたとはいえ、親ばかならぬ、妻ばかの父をみて、わたしは正直あきれた。

男ってバカだなぁと思った。

ちょっとお金にだらしない母は、このころわたしによく「お金を貸して」と言ってきていた。

母が大学進学のために貯めていたお金を根こそぎ奪って返してくれないので、父に注意してほしいとお願いしたのだが、埒が明かない。

「…まぁ、しょうがないじゃない。〇〇(お母さん)だもん」

と、まったく頼りにならない言葉しか返ってこないのだ。

父は惚れた女の言いなりだ。

恋愛の賞味期限が4年なんてウソばっかり。この人たちは永遠に恋愛し続けるんだろう。

それならそれで。

わたしはどんなにせがまれても、母にお金を貸すのは辞めようと思った。

***

父は80歳を超えたころ、何度か入院した。

脱腸がクセになってしまったのだ。

体が丈夫だったから入院なんてしたことなくて、ちょっと不安だったのかもしれない。わたしと2人きりの病室で、父は言った。

「お母さんは歳をとってから一緒にいたい人じゃないよなぁ」

びっくりした。

わがまま放題の母のことを40年も100%受け入れてきた人の言葉とは思えない。さすがにタイミングがおかしくないだろうか。

「お母さん、若い時は楽しかったけどさ、優しくないよな」

…なんと、天使だったんじゃなかったのか。

父はそんなことを言いながら笑顔だったので、なんだか、つられて笑ってしまった。

おじいちゃんになった父は、今やっと天使なんていないことに気がついたようだった。

父ってばバカだなぁ。

***

恋愛感情は永遠ではない。

愛のかたちは変わっていく。

恋愛が愛のすべてだと思ってしまうと、人生詰むのでおすすめしない。

相当に例外パターンにみえる、うちの父の場合でも40年が限界なのだ。

わたしも父に似て相当にバカなので、愛の変化を受け入れるのがヘタ過ぎて困る。永遠だと思ってしまったり、豪速で諦めてしまったり。

これからは、愛の変化を受け入れたい。

***

「でさ、韓国人ってかなり1日の連絡が多くない?」

そうだ、そうだった。

「たしかに。遠距離の時、毎日23時が門限だったかも。チャットしなきゃだったからさ」

愛は変化する。

連絡が多いのは恋愛だからで、韓国人だからではない。たぶん。




↓↓↓ この note の人気記事はこちら ↓↓↓

↓↓↓ お金に関する他の記事はこちら ↓↓↓

↓↓↓ この記事に関するマガジンはこちら ↓↓↓




この記事が参加している募集

だれかの明日の行動を変えたり、不安が減ったり、元気になるエッセイが書けるよう、日々精進しております。いただいたサポートは、活動費に使わせていただきます<(_ _)>