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食が充実すると休日が長くなる

ご飯の感動体験と体感時間

休日に財布と定期券だけ持って手ぶらでふらっと入った炭火焼きの店。油の乗った魚の旨味に感動してしまった。

炭火焼の効用だろうか。「魚が甘い」という感覚は初めてだ。味噌汁やお茶の温度感も熱々で私の好みにドンピシャだ。

飯田橋の駅近で生き残っているだけのことはある(家賃も高いだろうに)。お店に入ったのは午後3時過ぎだったのに客がそれなりに入っていた。ファンの根強さが窺われる。

外食のお店で和食というのは手間がかかるので多店舗展開しづらい。それでもあえて選んだということは、よほどのこだわりあってのことだろう。

世界に冠たるグルメ地域である東京の中でも、競合となるお店は思いつかない。とても満たされた気持ちで店を出て、飯田橋〜神楽坂の道を歩いた。

で、翌朝起きて気づいた。「あれ、まだ日曜日だ」。

土曜日の夕方からの活動だったのに、なんだか2日分の休日を満喫したような気分になっていた。

「楽しい時間は短く感じ、嫌な時間は長く感じる」と人は言うが、このフレーズは半分あってて半分間違ってると思う。

人間が時間を体感するのは、今と過去の差分からである。この差分を意識する瞬間がどれぐらいの頻度あるかで人は時間の長い・短いを感じる。

嫌なことをやっている間は「早く終わらないかな」と思って時計を何度も見る。これによって時計の針が少しずつ進む差分を脳裏に刻みつけているから、長く感じる。

一方で、仲間と他愛もないことをダラダラ喋ったり、ひたすらゲームに没入していると、気がついたら時計の針が進んでいる。セーブデータは確かに自分が時間を費やしたことの足跡を示しているが、それだけでは印象に残らない。時間は記憶と結びついている。

楽しい時間でも、その中に感動がみっちりと詰まっていて、自分の思考の変化を強烈に刻みつけられれば、時間を長く感じることができるのだ。

この感動をさらに膨らませるにはどうするか・・・そうだ、グルメ関連の本を読もう。

どちらも面白すぎて貪るように読んでしまった。特にホリエモンの本、引用したい箇所は山ほどあるが、「飲食は不動産ビジネスだ」は至言である。

うなぎとサステナビリティ

調子に乗ってもう一件開拓することに。

ネット上だとかなり評判が良い。開店と同時に入るが、いただいたのは3000円するうな重(並)。噂に違わぬ、ホクホクでとろけるような味わい。

すき家で売られているうなぎとは次元が違う。明らかにこちらの方が温度が高く、寒さで冷えた体に染み渡る。温度感が料理の生命線なんだなと改めて思った。

『天才シェフの絶対温度』でも書かれているが、こだわる人間はドアノブの温度すらも調整したいと考える。「ドアを開ける瞬間からが顧客の料理体験だ」という意識は、保険会社も見習うべきだと思った。

さて、食べている間にも電話で次から次へと注文が入る。うな重(上)が3700円、うな重(並)は3000円するのに、ガンガン売れる。

どうやら常連さんも多いようで、固有名詞で呼び合ったりしている。ただし、人手が足りていないらしく、不慣れな奥さんが手伝いに入って、額に汗しながら必死に切り盛りしていた。

今のうちに通っておかないと、ここの鰻重もそのうち食べられなくなりそうだ。

職人の中でも寿司はグローバルに展開できて市場規模も大きいが、うなぎは若い人が好んでやってくるイメージがない(そもそも単価が高いから若いうちは食べられない)。

同じ職人の世界なのに、どうしてこんなにも差がついてしまったのだろうか。回転寿司によって大衆化が進んだことも関係ありそうである。

生命保険会社にとっても対岸の火事ではない。自身の立場確保のために情報を閉ざしていては、早晩途絶える技術がたくさん出てくるはずだ。

充実した食事体験により活力を補充し、また明日から思索の旅が始まる。

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