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センスがいい人

私は比較的外食をする方だと思う。
単純に、おいしいものが好きだからと、めんどくさがりだからだ。
残念ながら高給取りではないので、普段の食事は 1,000 円前後でおさまるところだ。

旅行中ならあまり糸目をつけずに多少の贅沢はするようにしているが、逆に近所ならば居酒屋に行って 3,000 ~ 5,000 円払うということもない。

近所の飲食店……。店舗はたくさんあるのだが、どうもそこまでクオリティが高くないような気がしていた。
気のせいではなく、正直隣の駅の方が断然おいしい店も多い。

しかし最近行くようになったお店が、実はめちゃくちゃおいしい店だと判明したのだ。開店したときから気になってはいたのだけれど、実に 6 年間もスルーしてしまった。

ここがおいしいと判明してからは多いと週 3 で行ってしまう。
とにかくメニューが豊富だし、「これでいいのか?」 と思うくらい、価格が安い。
うどんがメインの飲み屋さんという感じなのだけれど、会計は丸〇製麺とほぼ変らないくらいの価格なのだ。信じ難い。

店主はちょっと 「会社勤めとか嫌いです!」 みたいな感じ (勝手なイメージ) なのだけれど、一体全体この人は何者なのだろう (どこ出身かも分らないくらい、レパートリーや材料の調達先にバリエーションがある) というくらい、何を頼んでもおいしい。


うどんは四国の麺を取り寄せているらしく、とても強いコシで凄くおいしい。わざわざ香川県に行かなくてもこんなにコシの強いうどんが数百円で食べれるなんて、本当に信じ難い。
そして天ぷらはおいしいし、しょうがはチューブではない。

香川県のうどんは大好きなのだけれど、おいしいお店であればあるほど、ちょっとシステムが玄人向けというか 「あれこれ悩んで注文する」 にはふさわしくない気がする。

過去に、ひやあつ、あつひやはセルフでやってねみたいな感じの店で、「えーと麺が熱くてつゆは冷たいのはどっちだっけ……」 と、遠巻きにレジ上のメニューを眺めていたら 「早くこっち来て注文してください!」 的な雰囲気を出されてしまい、気圧されてよく分らないままたどたどしく注文したら自分の頼みたかったものとは違うものを頼んでしまっていた…… ということもあったので、玄人向け (?) のお店はちょっと緊張するのだ (^^;)


だから近所の飲み屋も兼ねたうどん屋さんだとあれこれ悩めるし、一品料理のメニューも多い上に 「おすすめ」 が行くたびにガラッと異なるので、ついつい足繁く通ってしまうのである。

たまにだけれど、「何頼んでもおいしい」 というお店に遭遇することがある。年に 1 回あるかないかという感じで、そういうお店が閉店してしまったりすると本当に悲しいし理由が分らない。

Google Maps や食べログの口コミでも高評価を得ていることが多いので、経営不振というよりはおそらく別の理由なのだろう。


「何食べてもおいしい」 とはつまり、「塩加減が絶妙」 ということなのではないか、と思っている。塩加減のセンスがいいのだ。

センスがいい、という言葉はファッションや言葉の選び方、車の運転などを例に色んな分野に遣われるが、概して 「その人の中に '絶対的価値観' が備わっている」 ことに起因するのではないかと思う。

「良い/悪い」 という判断基準が自分の中にあって、誰にも左右されずにそれを自信を持って選び取れること。これが 「センスがいい」 の要素を作っているのではないかな、と思う。
そしてその判断が大多数に 「評価される」 ということ。

ラジオのチューナーを合わせるのに似ているだろうか。

「多少のノイズは入るけれど問題なく聴き取れる」 というのがおそらく一般的なレベルだけれど、センスがいい人はチューナーをどっちにどのくらい回せばいいのか、また 「これ以上はクリアに聴こえない」 という場所を見極められるのだろうと思う。

「塩梅」 というのが梅干し関連から派生した言葉というのは聞いていたが、物事の調和を塩加減で例えるのは言い得て妙だなぁと思う。

↑ を見て食酢よりも梅酢が先にあったことにも驚いたが、梅干よりも梅酢が先にあったことにも驚いた。


先日京都に旅行したとき、とてもおいしい小料理屋さんに再訪した。
ここは本当にだしが効いた上品な味で、ぜひまた訪れたいと思っていたのだ。

京都駅の八条口近くに 「京もん」 というお店があり、前々回はここに 3 泊のうち 2 回行ってしまった (^^;) それくらいおいしかったのだ。
前回は予約が取れなくて断念したのだけれど、滅多に食べられない創作料理などもあり、意外性がありつつさらにどれもおいしかったのだ。

この 2 つのお店で食事をした後、考えたことがある。

「京都 (および関西) は薄味」 は、果たして正しいのか?

と。


私はしょっぱめの味が好きで、いちばん好きな調味料は塩である。
パンにもサラダにも塩 (とオリーブ オイル)、トマトやキュウリにも塩。天ぷらも塩、ラーメンも塩。
焼き鳥やステーキなんかも塩で食べるのが好きだ。
しょっぱいお店は得意ではないが、塩気がないよりマシかなと思っている。

そんな私でも、特に 「京都は薄味」 とは感じなかった。


正確に言うと、感じたことはあったのだ。
パートナーと別行動をして、適当なお店で 2,000 円程度のランチを食べようと思ってよく調べずに適当なお店に入った。

見た目的にも美しく、チョイ食べできる 「女性に人気」 的なお店で期待は高まっていたのだが、ここがまさに 「薄味」 だった。

こんな有名な街で 2,000 円ぽっちしか出さなかったからこんなことになったのかな……。
そういえば豆腐が有名なエリアでも豆腐料理屋で比較的安めのお店に入ったら、それほど感動なくて 「こんなもんか」 と思ったっけ……。
やっぱりランチでも 3,000 ~ 5,000 円くらいは出さないと、京都ではおいしいお店にありつけないのだろうか……。

などと勘違いしていた。
しかし、先日再訪した小料理屋さんは信じられないくらい丁寧な料理と圧倒的な品数なのに、2,000 円しかしないのだ。
2,000 円でもおいしい料理はちゃんとある。

そこで調べたのだ。
「京都 薄味じゃない」 と。

行き当たったのが下記のページだ。


要約すると、「だしをしっかり取っておくと、塩加減が '絶妙' と言える範囲が広くなる」 ということだった。

またラジオの話で例えるなら、「これ以上はクリアに聴こえない」 という範囲が広くなるのだ。だから塩加減が多少アバウトでも塩分が少なくても、おいしいものが作れるのだそうだ。

そうか、結局だしなのか。
確かに近所のうどん屋さんも、だしが凄くしっかり効いている。
おでんのつゆは昔から大好物であるが、本当にここのおでんもつゆもおいしい。
私の好きなはんぺんがよく売り切れていて残念に思っているが、大根は残っているのでなんとかセーフだ。

関西ではほとんどはんぺんを食べないと、神戸出身のパートナーが言っていた。
また、以前住んでいたところの近所のスーパーで売っていたはんぺんがとてもおいしかったのだけれど、引っ越してから同じスーパーでも見かけなくて残念に思っていたが、なんと 140 年以上も続いた老舗だったのに、はんぺんの製造・販売をやめてしまっていたことを最近知った。

あぁ、こうやって素晴しい遺産がなくなっていってしまうのだなぁ。


先日自分でおでんを作ったが、近所のうどん屋さんのおでんの方が明らかにおいしかった。残念なような気もするし、おいしいものがラクに食べられてラッキーな気もする。


最近気付いたのだが、私はもしかしたら人より海藻が好きな方かもしれない。
ふるさと納税で九州産の海苔をもらったり、旅行先で買ってきたりして向こう 3 年くらいはある気がする。
ふのり、あおさも切らさずにいるし、たまにとろろ昆布も味噌汁に入れることがある。

韓国海苔も大好きなので、75 袋? 箱買いしたこともある。

ちなみに石川県の 「しら井」 は大好きなお店のうちのひとつだ。

うわー、と思ったらしら井も閉店!? 悲しすぎる!!😭😭
金沢店が閉店してから七尾店に 1 回行ったのみだ。大変残念だ。


北海道に行けば各地で昆布を買ってきてしまうし (全然使い切らない)、だしを取った後の昆布はもったいなくて捨てられない。

そんな中、数年前にたまたま利尻島に行ったので、憧れの利尻昆布を買って帰った。

昆布なんて、何が違うんだろうと思っていたのだけれど、利尻昆布はだいぶ違った。ネバネバがハンパない。
ヌルヌルヌルヌルして包丁で細切りにするのも大変だった。かなり粘り気がある。
だし自体は雑味のないかなり上品な風味だったので、このギャップに驚いた。

私はあと羅臼と日高しか持っていないので、ほかはちょっと分らない。

ちなみに昆布の消費量 1 位の件は富山だと聞いている。
しら井が富山にあったら閉店せずに済んだのだろうか。

ああぁもう色々閉店で悲しいなぁ。
近所の京料理屋さんもおいしかったのだけれど、板前さんが変ってそうではなくなってしまった……。


「努力」 は 「持って生まれたセンス」 に勝てないのか、という話があるが、「センスのいい人」 が努力をしないのなら、勝てる可能性はあるだろう。
しかしセンスのいい人も努力してしまうのであれば、勝つことは難しい気がする。

ウサギとカメの話も、ウサギが怠けていたからカメは勝ったのであって、ウサギが最初から最後まで全力投球していたらカメは勝てるはずはなかった。


話は全然変るが私はくせっ毛だ。
「坊主にすると直毛になる」 という噂話を聞いたことがある人もいるだろう。
一体どんな原理で直毛になるのか謎だったので、担当の美容師さんに訊いてみた。

曰く、

「くせっ毛の人は毛穴や毛根がキレイな円形ではなく、イビツな形になっている。毛は形成される時点ではまっすぐ生えてこようとしている。ただし毛はうねりながら生えてくるため、毛穴や毛根がキレイな形状でない限りキレイな円柱状にならない。これがくせ毛の原因」

昔から髪の毛に関してコンプレックスがあるのだが、この説明を聞いて一縷の望みは潰えたのだ。
無駄に坊主にしなくて済んだので、美容師さんには感謝だ。


とまぁ前置きが長くなったけれど、センスのいい人はキレイな毛根 & 直毛だ。私のように毛根だか毛穴だかがおかしくなっていると、生えてこよう生えてこようとしてもまっすぐな髪は生えてこないのである。

したがって、資質のいいものが努力すると勝てない、というのは私にはあてはまっているかなぁと思う。

その証拠がうどん屋さんのおでんと私のおでんだ。

色々と悲しい閉店ニュースが個人的に続いているが、実はこのうどん屋さんもちょっと怪しいので何とか続けて欲しいと切実に思っている。
値上げしてもいいから、潰れるよりは続いてください🙏

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